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1.いつか晴れた日に SENSE AND SENSIBILITY (1995年英・米)<4.0>     
 [監督]アン・リー
  [出演]エマ・トンプソン、アラン・リックマン、ケイト・ウィンスレット、ヒュー・グラント
  [時間]136分
 [内容]19世紀初頭。イングランド南東部のサセックス州にある私園“ノーランド・パーク”を構えるダッシュウッド家の主ヘン
    リーを失った彼の妻と3人の娘。法律の定めるところにより私園を含め財産が先妻の息子ジョンに相続されるのを心配し
    たヘンリーは、死の床でジョンに妻と娘の世話を頼んでいたが、ジョンの妻の反対にもあいその約束は反故にされてしま
    う。彼女達は悲しみにひたる間もなく、早速新しい家を探し始めるが…。
  [寸評]昨年12月にCS1チャンネルで放送されたので録画して拝見。主演女優のエマ・トンプソンが脚本も手掛けており、ア
    カデミーの脚色賞を受賞している。3姉妹(特に上2人)が多難な恋を通して成長する姿を、様々な人物模様を交えて描い
    たラブ・ストーリー。エマ・トンプソン演じる長女は、しっかり者で自分の感情を抑制しがちで、他人にグチをこぼす訳でも
    ない、どちらかと言うと損な役回りだ。そんな彼女が最後の最後に報われるシーンは、”辛抱すれば報われるんだ!”と
    非常に爽快な気持ちにさせられる。最後のシーンは女性の方が観られたら、好感を抱くのでないでしょうか?本作品は
    エマ・トンプソンに、「ダイ・ハード」で悪役を演じたアラン・リックマン、「タイタニック」のケイト・ウィンスレットが魅せてくれ
    るので、ヒュー・グラントがどことなく目立たない感じがしたな。

2.裸足の1500マイル RABBIT-PROOF FENCE (2002年豪州)<2.5>     
 [監督]フィリップ・ノイス
  [出演]エヴァーリン・サンビ、ローラ・モナガン、ティアナ・サンズベリー、ケネス・ブラナー
  [時間]94分
 [内容]1931年、西オーストラリアのジガロング。14歳のアボリジニの少女モリーは、8歳の妹のデイジー、従姉妹で10歳の
    グレーシー達と楽しく平穏な毎日を送っていた。ところがある日、アボリジニ保護局の人間がやって来て、時の政府の政
    策により、彼女達を拘束し、母親から引き離して施設に強制収容した。粗末な環境下で、白人社会へ適応するための厳
    しい教育が始まる。ある時、たまりかねたモリー達は厳重な監視をかいくぐって脱走する。そして、延々続くウサギよけフ
    ェンスの先にある母の待つ故郷へ向けて1500マイルの遥かなる旅路を歩き始めるのだった…。
  [寸評]昨年劇場公開(ミニシアター系)された作品で公開時にも関心があったのでレンタルで拝見。本作品は実話に基づく
    内容で、オーストラリアで白人がアボリジニに対して、強制収容するような政策が行われていた事実を認識できたのが
    収穫。モリー達の逃亡・果てしない距離の走破も、事実という事だが、肝心の走破の過程や彼女達の心理状況の描写
    がイマヒトツという感じがする。本当に食事・体力からしてあれだけの距離を幼い子供が走破する事が可能なのだろう
    か?それにしても、ある人種が自分達が優れていると思いこみ、従属させるために、隔離して教育しよう、というのは非
    常に愚かな事だ。最後に字幕で表記された”白人がアボリジニに対してとった、この政策の期間を喪失の世代と呼ば
    れる”という言葉が作品内容よりも印象深い。

3.ふたりの男とひとりの女 ME, MYSELF & IRENE (2000年米)<3.5>     
 [監督]ボビー・ファレリー、ピーター・ファレリー
  [出演]ジム・キャリー、レニー・ゼルウィガー、クリス・クーパー、ロバート・フォスター
  [時間]117分
 [内容]チャーリーは、いつもニコニコと周囲に愛想を振りまく陽気な警察官である。しかし周囲との対立を避け、何でも丸く収
    めようとする彼の性格は単なる「お人好しのうすらバカ」として町の人からも軽くみられている。妻は黒人の運転手と駆け
    落ちし、誰が見ても運転手の子供だとわかる子供を3人もチャーリーのもとに置き去りにしてしまう。でもチャーリーは怒ら
    ない。怒りを全て胸に秘めてしまうのだ。ところがそんなチャーリーの怒りは、いつしか彼の心の中にハンクという別人格
    を作り上げる。温厚なチャーリーとは反対に、ハンクは乱暴者なのだ。そんな“ふたり”の前に、悪党に命を狙われている
    若い女性のアイリーンが保護を求めてくる。
  [寸評]「メリーに首ったけ」の監督のボビー&ピーター・ファレリー兄弟が、「マスク」のジム・キャリー主演で描いたラブ・コメ
    ディ。ジム・キャリーの二重人格の2人を使い分ける演技、2人が格闘(葛藤)する演技が非常に見応えがある。1/2の深
    夜に放送されていたものを録画して拝見したが、吹替&カット有りなので、レンタルで観た方がよかった感じもする。話の
    内容は途中で???となり気味なのだが、レニー・ゼルウィガーのキャラクターと最後のオチで上手くまとめてしまう。
    レニーと黒人の3人の子供の存在は大きいと思う。本作品では困難な道を避け、丸く収め続けていくのは、人生を歩んで
    いく上で、薄っぺらく周囲からも尊敬されない、という事も描写している。感情的になりすぎるのも問題だし、状況にもよる
    が、感情を抑え続けるのもいかがなものか?この辺は難しいところだよね。

4.東京物語 (1953年日)<4.5>     
 [監督]小津安二郎
  [出演]笠智衆、東山千栄子、原節子、山村聡、杉村春子、香川京子、東野栄治郎
  [時間]136分
 [内容]尾道に住む老夫婦が東京へ出てきたが、長男や長女は、各々の生活に精一杯で良い顔をしない。唯一、戦死した
    次男の未亡人だけが優しい心遣いを示すのだった。老夫婦は尾道に戻るが、老妻は急死してしまう・・・
  [寸評]昨年の12月からNHK衛星放送で小津安二郎監督の特集や小津作品の幾つかを放送している。映画好きと自称しな
    がらも今まで一度も小津監督の作品を観た事はなかった。「東京物語」は以前より日本映画の屈指の傑作と称えられて
    いたので、良い機会と思い、TV放送された時に録画して拝見してみた。内容は淡々としたものだが、家族関係を見事に
    浮き彫りにしており、50年を経た現在にも通じる全然色あせない内容ではないか。色々な態度・言葉に含蓄があり、優
    れた描写をしている。観る年齢層(老人・私のような妻子持ちの30代後半・社会人になって間もない人等)によって感じ
    取り方は違うのではないか?人生は果てしなく長いものだと思える。自分も未だ本当に親孝行であるかと言い切れな
    いし、私と妻が老人になった時に子供達がどうしているか(着実に人生を歩んでいるか、親に心配をかけないでいてくれ
    るか)で、子育ての成果・人生の成否が分かるものだろう。若き杉村春子が演じたシゲには本当に腹立ったなあ!娘っ
    てあんなものかね。一姫よ二太郎よ、頼むな。本作品で見習わなければならないのが、老夫婦の常に”感謝を口にす
    る心”だ。夫婦間で少しは子供達の冷たさを嘆くが、それでも「私達は幸福だ」と思っているのは立派だ。原節子演じる
    未亡人、香川京子演じる次女の良心にも救われる。家族関係を凝縮した非常に良い作品である。
    
5.シービスケット SEABISCUIT (2003年米)<4.5>     
 [監督]ゲイリー・ロス
  [出演]トビー・マグワイア、ジェフ・ブリッジス、クリス・クーパー、エリザベス・バンクス
  [時間]141分
 [内容]1929年10月、アメリカは株の大暴落で大恐慌時代に陥った。それまで自動車ディーラーとして成功を収めていたハ
    ワードは、最愛の息子を事故で亡くし、妻にも去られてしまった。そんな彼は1933年に競馬場で運命的に出会った女性
    マーセラと結婚する。そして、乗馬の愛好家である彼女に影響を受け、競馬の世界に傾倒していく。やがて彼は、馬に
    人一倍愛情を注ぐ元カウボーイのスミスを調教師として雇う。スミスは“シービスケット”と呼ばれる小柄で気性の荒い
    サラブレッドの潜在能力に目を付け、ハワードにその馬を購入するよう進言する。そして、誰もが手を焼くその馬の騎手
    に、気が強くて喧嘩っ早い男レッドを起用するのだった。彼も大恐慌で親に見捨てられた辛い過去を持っていた・・・
  [寸評]ローラ・ヒレンブランド原作のベストセラー・ノンフィクション小説『シービスケット;あるアメリカ競走馬の伝説』の映画
    化で実話に基づいた作品。週刊ポストにも当時の実在の馬・騎手の写真が紹介されていた。最初の40分程は3人の男
    が一頭の馬に出会うまでの経緯を交錯して描いているので、誰がどうなのか、少し分かり辛いのが難点だが、それ以降
    は一気にラストまで存分に魅せてくれ、楽しませてくれる。映像も美しく、騎手の視点で、馬に乗って実際にレースに参
    加しているような体感を味あわせてくれるのが良い。私を良く知っている人なら想像がつくかと思うが、多分、レースで盛
    り上がっている場面では、私も体を無意識に上下に揺らしていたかもしれない。苦い過去を持つ男達が出会い、馬をめ
    ぐって更にまた浮き沈みを繰り返す。(残り時間が大分あるのに、栄光を手にしたかと思えば、そんなに甘くはないの
    だな・・・)正に人生の道程を縮図したような内容だ。私はギャンブルの才能もない(やっても負ける事はミエミエ)ので
    競馬には興味はないが、本作品を観て競馬に携わる人達の色々な生き様が汲み取れたかな。過去に読んだ宮本輝
    原作の「優駿」も良かった(映画は観ていない)が、本作品も良い作品です。アカデミーにノミネートされるのでは?  

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