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71.白い船 (2001年日)<4.0>
 [監督]錦織良成
  [出演]中村麻美、濱田岳、尾美としのり、竜雷太、大滝秀治、田山涼成、長谷川初範
  [時間]108分
 [内容]島根県平田市にある小さな漁村が舞台。日本海を見下ろす岸壁に建てられた古い木造校舎の塩津小学校は生徒
    数は17名で6年生は1人という小さな学校である。この小学校に赴任してきた静香先生だったが、松江市での仕事で
    すっかり自信をなくして教職の難しさに悩んでいる。それでも5,6年生の合同授業を受け持つ中で、生徒達の溌剌とした
    姿に少しずつ元気を取り戻していく。そんな中、6年生の好平が海上を動く白い船を発見し、生徒達はその美しい白い船
    に魅了される。その船の正体は新潟の直江津と九州の博多を結ぶ定期フェリー「れいんぼうらぶ」だった。先生の提案
    で、生徒達はフェリーの船長に手紙を書くことにする・・・。
  [寸評]島根県の小学校と沖を行くフェリーの交流を実話に基づいて映画化された作品。この作品は小さな村の学校の先
    生と生徒との触れ合い、村人通しの触れ合い、親子3代の触れ合い、定期フェリーの船長や地方新聞記者との触れ合
    い・・・というように全編に渡って人と人との温かい触れ合いが描かれている。現在、特に都会などでは見失われがちな
    ”温かいもの”が感じ取れる。おじいさんと孫との抱擁なんか良いよねえ。愛情が感じられて涙ぐんでしまう。本作品は
    触れ合いだけでなく、夢を実現させる事の大切さも説いている。万人受けする程、密度が濃いという内容ではないかも
    しれないが、私的には結構好きな作品である。
    
72.阿弥陀堂だより (2002年日)<3.5>
 [監督]小泉堯史
  [出演]寺尾聡、樋口可南子、田村高廣、香川京子、井川比佐志、吉岡秀隆、小西真奈美北村谷栄
  [時間]128分
 [内容]上田孝夫と美智子の夫婦は東京に住んでいた。孝夫は10年前は新人賞を獲得したものの、以降は鳴かず飛ばず
    の売れない小説家であり、美智子は大学病院の有能な医師だった。ある日、美智子は流産をきっかけにパニック障害
    という心の病にかかってしまう。都会の生活や仕事にも疲れきっていた2人は、孝夫の故郷である信州へ移住すること
    を決心した。2人は、村の死者がまつられた阿弥陀堂で暮らしているおうめ婆さんを始め、様々な人々と出会った。喋る
    ことが出来ない難病を抱える少女・小百合は、おうめが日々思ったことを書きとめ、村の広報誌に“阿弥陀堂だより”と
    して連載していた・・・。
  [寸評]「雨あがる」の小泉堯史監督が、長野県飯山市を中心とした奥信濃を舞台に、東京での生活に疲れた中年夫婦
    が、美しい自然の中での暮らしを通して、次第に生きる喜びを取り戻していく姿を描いた作品。いわゆる”ほのぼの調の
    癒し系”の内容だ。おうめ婆さんを演じる北村谷栄は1911年生まれで作品公開時では91歳という超ベテラン女優だ。
    「ビルマの竪琴」「大誘拐」を観た時でも”元気に頑張るお婆さんだなあ”と思っていたが相変わらず味があって微笑ま
    しい存在だ。おうめ婆さんの思いが時折、ナレーションで流れるが含蓄のある味わいのある言葉だ。この作品は何とい
    っても北村谷栄と樋口可南子が際立っている。話全体に強いインパクトは感じられないが、自然の中で癒されていく
    夫婦(孝夫と美智子)、末期の病にさらされながら2人で有意義に過ごす夫婦(孝夫の恩師と妻)の姿等を描いて、夫
    婦のあり方をさりげなく示している作品だ。

73.g@me (2003年日)<4.0>
 [監督]井坂聡
  [出演]藤木直人、仲間由紀恵、石橋凌
  [時間]105分
 [内容]広告代理店に勤めるエリート社員の佐久間は、ビール会社の葛城副社長に自分のプロジェクトを粉砕されただけ
   でなく、プライドをひどく傷つけられた。彼はその夜、復讐するため、あてもなく葛城邸に向かった。その時、佐久間は偶然
   に葛城の娘・樹理と出会う。彼女は葛城の愛人の子として生まれ、不遇な生活を強いられていたのだ。葛城に恨みを持
   つ2人はすぐに意気投合した。佐久間が”犯人”、樹理が”人質”を演じる「誘拐というゲーム」を画策する…。
  [寸評]2ヶ月ぶりに劇場で鑑賞した。「白夜行」「秘密」の東野圭吾氏の「ゲームという名の誘拐」という原作の映画化。今
   年のG.Wに「白夜行」というミステリー小説を読んで非常に面白かったから、本作品は原作を読んでいないものの、東野
   氏のミステリー作品という事なので期待をしていた。前半は若干ダレ気味な感じもしたが、後半から予想外の展開とな
   り、二転三転とし、引き込まれる。詳細はここでは語らない(語るのもヤヤコシイ?)。ミステリーだけでなくラブストーリー
   を織り交ぜており、結構良く出来た見応えのある作品かと思う。余力があれば、原作も読んでみたいと思う。東野氏の作
   品は「手紙」「殺人の門」も読んでみたく思っているし、今後も頑張ってほしい作家だ。

74.草ぶきの学校 草房子 (1999年中)<3.5>
 [監督]シュイ・コン
  [出演]ツァオ・タン、ウー・チンチン、トゥ・ユアン、マー・リンイェン
  [時間]107分
 [内容]文化大革命以前の1962年。中国・太湖のほとりの農村でサンサンは多感な少年時代を過ごした。サンサンは草ぶ
    き屋根の小さな学校に通っていた。校長は彼の父親で、家でもサンサンに見せるのは校長の顔であった。サンサンは
    甘えられずにもどかしい感じを持っている。学校では色々な出会いがあった。隣村から来たちょっと陰のある女の子ジー
    ユエ、禿げ頭のルー・ホー、優等生のトゥ・シオカン、担任のジャン先生・・・。彼等や父との間の甘く切ないエピソードの
    数々を大人になった彼が振り返る…。
  [寸評]中国の人気作家ツァオ・ウェンシュアンのベストセラー小説『草房子』が原作。本作品は、7つの物語で構成される
    原作の中から、5つのエピソードを厳選して製作されたものである。大人になった主人公(大人の姿は映し出されず、声
    だけ)が小学校時代を回想する。誰しも小学校時代については楽しく、甘く、ほろ苦く、悔やまれるような幾つかのエピソ
    ードが思い出として残っているかと思う。作品で綴られるエピソードは、ほのぼのと淡々としたところもあるが共感でき
    る。父が校長としてでなく、子を思う姿は結構嬉しい気持ちにさせてくれる。我が家の一姫は現在、小学校1年生、二太
    郎も05年4月には小学校入学となる。子供達はこれからどんなエピソードを作っていくのだろうか?自分の過去を振り返
    るより、子供達の今後を想定しながら全編を観ていた。

75.アイリス IRIS (2001年英・米)<3.0>
 [監督]リチャード・エアー
  [出演]ジュディ・デンチ、ジム・ブロードベント、ケント・ウィンスレット、ヒュー・ボネヴィル
  [時間]91分
 [内容]アイリス・マードックとジョン・ベイリーの2人は1950年代、オックスフォード大学で出会った。あまり目立たない存在
   だった講師のジョンは、豊かな知性と魅力的な容姿を兼ね備えたアイリスに、一目見た時から恋をする。やがて2人は結
   婚し、アイリスは次々と小説を発表して一流の作家になる。そして40年の歳月を経た現在…2人の絆はより深く強固なも
   のとなっていた。ある日、アイリスは同じ言葉を繰り返したり言葉につまることで、脳に異変が起きていることに気付く。精
   密検査の結果、現代の医療では治すことの出来ない病アルツハイマーと診断される…
  [寸評]“イギリスで最も素晴らしい女性”と形容された実在の作家アイリス・マードックの晩年をジュディ・デンチ(007の
    上司「M」)、若い時代をケント・ウィンスレット(タイタニックのヒロイン)が渾身の演技で演じた夫婦愛を綴った話。私は
    夫のジョンは晩年も若い時代も1人の俳優で演じているかと思ったら、アイリス同様、2人の俳優で演じいていた事を
    知って驚いた。妻がアルツハイマー病になってしまってからの夫婦の苦悩、若き日の回想を交互に織り交ぜながら話
    は進んでいく。2人の歴史が凝縮されており、91分という時間の割には内容が濃い感じがした。話の内容自体には特別
    なインパクトはないが、将来、もし妻がアイリスと同じような事になったら、私はどう対応してあげられるのか?なんて感
    じいってしまったな。私が密かに抱く将来の夢は子供達が立派に成長してから、妻とリュックを背負って海外を1〜2ヶ月
    気ままに旅をし、その時に「人生色々あったけど、子供も良い子に育ってくれたし、私達の人生は良い人生を歩めたよ
    ね」と語り合える事だ。実現できるのは幾多の試練を乗り越えねばならないが、年をとってもお互いを大事にしあえるよ
    うにしていきたいね。本作品でインパクトがあったのが、ケント・ウィンスレットの体当たり演技。全裸で川に飛びこみ、
    泳ぐシーンは結構、刺激的だった。
   
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