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76.フォーン・ブース PHONE BOOTH (2002年米)<3.5>
[監督]ジュエル・シューマカー
[出演]コリン・ファレル、フォレスト・ウィッテカー、ラダ・ミッチェル、ケイティ・ホームズ
[時間]81分
[内容]マンハッタンのタイムズスクエアが舞台。一流のパブリシスト(宣伝屋)と自称しているスチュは、今日もアシスタント
を従え、携帯電話からクライアントや業界に対して口八丁でビジネスをまとめ上げている。そんな彼はアシスタントと別
れた後、1台の電話ボックスに立ち寄り、結婚指輪を外してクライアントの新進女優のパメラに電話を掛けた。スチュは
彼女と交際しており、呼び出そうとしたが、上手くいかずに受話器を置く。電話をかけている際、スチュ宛にピザを届け
るように言われたというピザ屋がやって来るが無下に追い返した。ボックスから出る際、今使っていた公衆電話のベル
が鳴り、スチュは思わず受話器を取ってしまう。すると電話の相手は、“電話を切ったら殺す”と脅迫してきたのだ…。
[寸評]”電話が鳴ったら思わず取ってしまう”という人間の条件反射に着目して、大都会の公衆電話ボックスを舞台に脅
迫されて立ち往生してしまう男の話。「マイノリティ・リポート」にも出演しているコリン・ファレルが良い一人芝居を見せ
てくれる。コリン・ファレルと脅迫してくる犯人(声)とのやり取りが主だが、81分の時間を十分に緊迫して楽しませてくれ
る。最近は相手先の電話番号を表示するディスプレイや非通知の番号を排除する機能がつくようになったとはいえ、
電話はある面、恐ろしいものとなりかねない。人はどこの誰に恨まれ、自分の私生活の情報まで密かにつかまれてい
るのか分からない・・・そんな現代の怖さ・風潮を風刺したような感じがする。話の展開はマズマズで緊迫感があるが、
犯人の正体がアッサリしすぎているような・・・。81分の時間ゆえ仕方ないか、但し、最後に出てきた幻影のような人は
何?実はオチがあったのか?
77.家路 JE RENTRE A LA MAISON (2001年仏・ポルトガル)<1.5>
[監督]マノエル・オリヴェイラ
[出演]ミシェル・ピッコリ、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジョン・マルコヴィッチ、レオノール・ソルヴェイラ
[時間]90分
[内容]マジルベール・ヴァランスは、舞台と映画を中心に活躍しているベテラン俳優。現在もイヨネスコの“瀕死の王”の
舞台に出演している。そんなある日、ヴァランスは妻と娘夫婦が交通事故で亡くなったという悲痛な知らせを受ける。
突然始まった孫セルジュとの2人だけの静かな生活。愛する者を失った悲しみや寂しさはあるものの、可愛い孫との
暮らしと演劇が、ヴァランスにささやかな支えとなっていた。その一方、このゆっくりとした時の流れの中で、彼は自らの
孤独や、年齢と共に変化していく俳優としての現実について、いつしか思いをめぐらせるようになっていく…。
[寸評]2ヶ月程前にNHK衛星放送で放映されて録画したままにしていたので、ようやく拝見。正直言って、私の感受性が
薄いのか?本作品は祖父と孫との温かい触れ合いをそれほど見せてくれる訳でもなかったし、テーマもぼやけた感じ
がして期待外れの内容だった。冒頭や時折現れる舞台の芝居のシーンなど本当に必要なのか?観ている私にとって
は、時間を長くしているだけの蛇足な内容にしか思えない。ヴァランスの苦悩は分かる気がするが、ゼルジュの前途は
厳しいものかと思う。喫茶店を出る際、ヴァランスが座っていた後に、必ずある男性が座ったのだが、どんな意味を持つ
のかも分からなかった。ともかく、つかみどころがなくて、面白味のない観ているのがダルイ作品であった。
78.ファインディング・ニモ FINDING NEMO (2003年米)<4.5>
[監督]アンドリュー・スタントン
[出演](声)アルバート・ブルックス、エレン・デジュネレス、アレクサンダー・グールド <吹替版は木梨憲武、室井滋>
[時間]101分
[内容]オーストラリアのグレートバリアリーフ。広大な海の中でカクレクマノミの400個の卵が孵化しようとしていた。しか
し、無事に生まれたのは母親の命と引き換えに助かった1つのみ。父マーリンは、この子を“ニモ”と名付け、同じ悲劇
を繰り返さないと誓い過保護なまでに大事に育てていく。そして6歳になったニモに、初めて学校へ行く日がやって来
る。しかし、突然の悲劇がニモを襲う。人間のダイバーに捕獲されてしまったのだ。打ちひしがれるマーリンだったが、
陽気なナンヨウハギのドリーの助けを借りてニモを取り戻す旅へと出るのだった・・・。
[寸評]ピクサー社の「モンスターズ・インク」に続く、サンゴ礁の海を舞台に、“人間の世界”へさらわれた我が子を懸命に
探す父親の大冒険を描いたアニメーション作品。私自身がかねてより非常に期待していた事もあり、妻子と先行上映
で鑑賞してきた(それにしても空いていたな・・・)。期待通りの面白さで久々にオススメ・マーク(評価4.5以上)が付けら
れる作品だ。海の中や多種の魚・水鳥等のキャラクターの映像が非常に美しいし、水族館に来たような感じもする。
話の展開もピクサーならではのスリリングなもので、鮫に猛追されたり、クラゲの大群を突き抜けるシーン等は迫力が
ある。話の主題である親子愛、仲間との友情も上手く描かれていて心地良い気持ちにさせてくれる。家族で観るにして
も大人だけで観るにしても間違いなく楽しめるでしょう。私と妻は新婚旅行でシドニーやグレートバリアリーフに行って
いるので懐かったな。グレートバリアリーフでシュノーケリングを行い海の中で魚を写真撮影したので、ダイバーに写真
をとられた魚の立場を描いたシーンには笑えた。妻と子供達は「モンスターズ・インク」より本作品の方が面白いと話し
ていた。私は「モンスターズ・インク」の奇抜な発想が好きなので、「モンスターズ・インク」にやや軍配をあげるかな。
とはいえ本作品は十分面白いです。エンディングに思わぬキャラクターが登場するが、何故か今回は恒例のNG集が
なかったかな。
79.落穂拾い LES GLANEURS ET LA GLANEUSE (2000年仏)<3.0>
[監督]アニエス・ヴァルダ
[出演]ものを拾う幾人かの人たち
[時間]82分
[内容]ある日、パリの市場で、道路に落ちているものを拾う人たちを目にしたヴァルダ監督は、ミレーの名画『落穂拾い』を
連想した。落穂拾い−それは、農民たちが収穫した後の落ちこぼれた麦の穂を拾い集める貧しい人々の行為である。
昔は収穫期には必ず目にする光景だった。ヴァルダ監督は、フランス各地の“現代の落穂拾い”を探し、旅に出た。
市場を始めとした様々な形の“落穂拾い”、監督が興味を抱いた対象を見つめて軽やかな文明批評を行っていく。
[寸評]「シェルブールの雨傘」などで知られる映画監督ジャック・ドゥミ(故人)の妻で、彼女自身も映画監督であるアニエ
ス・ヴァルダによるドキュメンタリー作品。ミレーの「落穂拾い」に着想を得、いわば“現代の落穂拾い”を探す旅を監督
の興味のおもむくままに記録したものだ。落穂というより「ゴミ拾い」「廃棄物拾い」のドキュメンタリーといってよい。
食料・家電など実際は十分使えるのに廃棄物としてたやすく捨ててしまう現代の大量消費社会・・・。その捨てるタイミ
ングに狙いを定めて競合・分割等をして獲得する人達の姿は、”困窮の中、生き延びていく者”、”廃棄物から芸術品を
生み出す者”、”研究の材料にする者”・・・というように種々多様だ。「ものは本当に大切に扱わなければならない」
「世の中には厳しい生活をしている人が大勢いる」という事を本作品は認識させてくれる。時間も82分なのでドキュメン
タリーとして味わうには観て損はないでしょう。(必見とまではいえませんが・・・)
80.再見 ツァイチェン また逢う日まで 我的兄弟姐妹 (2001年中)<4.0>
[監督]ユイ・チョン
[出演]ジジ・リョン、シア・ユイ、ジャン・ウー、チェン・シー、デヴィッド・リー、ツイ・ジェン
[時間]95分
[内容]米国で成功を収めた若き女性指揮者のチー・スーティエンが20年ぶりに祖国の地へと降り立った。この帰国には
祖国での凱旋記念コンサートを行う事以外に、彼女にとっては、もうひとつの大事な目的があった。それは、彼女が
7歳の時に生き別れたきり音信不通となってしまった3人の兄・弟・妹を探し出し、彼らとの再会を果たす事だ。20年
前、彼女と兄イクー、弟ティエン、そして妹ミャオの4人は、音楽教師をする父としっかり者の母に見守られ、慎ましく
も楽しく幸せな日々を過ごしていた。しかし、突然の悲劇が一家を襲い、4人の兄弟姉妹はバラバラに各々の里親へ
と引き取られていった…。
[寸評]幼い頃に生き別れてしまった兄弟姉妹が20年の時を経て、再会する道のりを、幼少時代の回想シーンを交錯させ
ながら綴った感動作。父親が失業、母親が病気という逆境の中でも家族が温かく生きている姿は非常に微笑ましい。
それだけに幼少の頃に培った兄弟姉妹の絆は強いものがある。特に長男が弟・妹を里親に預けて別れていくシーン
は非常に辛いものがあり、自然に泣けてくる(周囲の観客も涙、涙・・・)。何といってもチー・スーティエンの幼少時代
が7歳、ティエンの幼少時代が幼稚園の年長であるので、我が家の一姫二太郎と姿をダブらせてしまうので、彼等の
あどけない姿を観ているだけで泣けてしまう。ともかく涙が出る作品ではあるが、最後の兄弟姉妹の再会のシーンは
どうなのだろう?少しわざとらしいような気もするが・・・。それでもラストシーンに回想シーンが写し出されて感極まっ
てしまう。ストーリー自体は、単純でひねっている訳ではないが、涙をあおるような作品だ。幼少の頃の4人に近いよ
うな子を持つ親は必ずどこかで泣けると思います。
81.がんばれ、リアム LIAM (2000年英)<2.5>
[監督]スティーブン・フリアーズ
[出演]イアン・ハート、クレア・ハケット、アン・リード、アンソニー・ボロウズ
[時間]91分
[内容]1930年代の英国、リバプール。7歳のリアムは造船所で働く父と、母、兄、姉の5人で幸せに暮らしていた。しか
し、折りからの不況で造船所は閉鎖。新しい職を探すもののうまくいかない父は、次第にアイルランド人やユダヤ人
に職を奪われたと逆恨みするようになる。そんな中、リアムの初めての聖体拝領の日がやってきた。だが、その最
中、父は教会を非難。ついにファシズム運動へとのめり込んで行く・・・。
[寸評]本年最後の鑑賞(初見)作品は、非常に物悲しい内容であった。7歳のリアムが厳しい環境の中、家族の救いの存
在になる内容かと思いきや、リアムは少年の視点で現実を見つめるしかない訳で、事態はどんどん悪くなっていく。
本当にあの最後のシーンは、「それはないよな・・・」という感じだ。本作品の時代背景はアイルランド、イギリスの民
族・宗教の問題を理解していない私にとっては分かり辛かった。それにしても、やはり父親というのは、しっかり仕事を
して収入を得ないといけないな。全てのバランスが崩れてしまう・・・。本作品で唯一笑える箇所があるが、同時に大
きな疑問が生じた。国・風習の違いなのか、母親とリアムは一緒に風呂に入ってこなかったのだろうか?