一覧へ  前頁へ 次頁ヘ
56.HERO 英雄 (2002年中)<3.5>
 [監督]チャン・イーモウ
  [出演]ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイー、ドニー・イェン、チェン・ダオミン
  [時間]99分
 [内容]紀元前200年、戦乱のさなかにある中国。ある日、後に始皇帝と呼ばれることになる秦王のもとに、”無名”と名
    乗る一人の男が拝謁する。男は、最強と恐れられていた趙国の3人の刺客を全て殺したという。その証拠に各々
    の名が刻まれた一本の槍と二本の剣を携えていた。”無名”は、十歩の距離まで近づけば如何なる相手も一撃で仕
    留める剣術を極め、3人の刺客を討ち倒したという。暗殺者達から身を守るため百歩以内に誰も近づけようとしない
    秦王だったが、無名の功績を認め、特別に十歩の距離まで近づくことを許し、早速3人の刺客を討ち取った経緯を語
    るように促すのだった…。
  [寸評]「初恋のきた道」「活きる」等の人間ドラマ系のチャン・イーモウ監督がアクション作品を撮った。これも「グリー
    ン・デスティニー」という成功作があるからこそだろう。本作品は3人の刺客との人間模様・戦いのシーンを「”無名”
    の説明」「秦王の推理」「”無名”が告白する真相」という3パターンの回想シーンで描かれ、パターン別に登場人物の
    衣装の色が使い分けられている。アクション・シーン、秦の軍隊は迫力があるし、景色も広大でかつ非常に美しい。
    但し、「グリーン・デスティニー」で受けた印象が余りに強いのか、どことなく”二番煎じ”という感じもする。”剣”と”書”
    の究めは相通じるものがあるとか、最後のオチとか所々に結構奥の深い内容がかいまみれるが、チャン・イーモウ
    監督ゆえに「人間ドラマ」の部分を過大に期待しすぎていたかもしれない。楽しめることは間違いないのですが・・・

57.名もなきアフリカの地で NIRGENDWO IN AFRIKA (2001年独)<4.0>
 [監督]カロリーヌ・リンク
  [出演]ユリアーネ・ケーラー、メラーヌ・ニニッゼ、レア・クルカ、カロリーネ・エケルツ、シデーデ・オンユーロ
  [時間]141分
 [内容]1938年4月、少女レギーナと母イエッテルはナチスの迫害を逃れるため、故郷のドイツを後にし、先にケニアに渡っ
    ていた父ヴァルターのいるロンガイの農場へとやってきた。ドイツでは弁護士をしていたヴァルターもここでは農場で働
    く一介の労働者にすぎない。想像を絶する過酷な生活に、お嬢様育ちのイエッテルは耐えられず弱音を吐いてドイツに
    帰りたがる。一方ヴァルターは、欧州情勢の悪化に、残してきた父や妹の安否が不安でならない。そんな2人を尻目に、
    レギーナは料理人のオウアやケニアの子ども達とすぐに仲良くなり、アフリカの大地でたくましく成長していく…。
  [寸評]先般のアカデミー賞で最優秀外国語映画賞を受賞した作品。愛知県では名古屋の今池でしか上映されないため、
    金曜日の仕事終了後に今池まで鑑賞しに行った。確かに足を運ぶだけの価値はある作品であった。ナチスのユダヤ人
    迫害からアフリカに逃れた家族の葛藤・触れあい・望郷感を描いた内容。映像がもう少し美しければ良かったのと、場面
    場面の切り替わりがブチブチしているのが気になったが、さりげなくアフリカを体感させてくれる作品だ。レギーナとオウ
    ワの存在が非常に微笑ましくて和ませてくれる。見ているだけで、ホっとさせられる。但し、話の主軸は母イエッテルと
    父ヴァルターの葛藤。2人共、環境・情勢の変化によって考え方がコロコロと変化していく。気持ちは分からないでもない
    が・・・。特にイエッテルの変貌ぶりには、ある面、ついていけない感じがした。DVDプレーヤー的に言うと、彼女の感情
    がスキップ(早送り)、スキップしていく感じだ。変化する細かな繋ぎがあるとスッキリするのだが、上映時間が非常に長
    くなってしまうか・・・。含蓄のあるセリフも多々あるし、感動を押し付けようとしていないし、良い作品ではあるが、イエッ
    テルの変貌ぶりが私自身が本作品を”絶賛”と評するのをはばかっているかな?

58.コンフェッション CONFESSIONS OF A DANGEROUS MIND (2002年米)<3.0>
 [監督]ジョージ・クルーニー
  [出演]サム・ロックウェル、ドリュー・バリモア、ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ
  [時間]113分
 [内容]1960年代の米国。早期にTVの可能性に着目し、そこでの成功を夢見るチャックは、色々な番組企画を発案してTV
    局に売り込んだ。しかし、いずれも採用されることはなく、優しい恋人のペニーに慰められる日々が続く。自信満々で
    持ち込んだ視聴者参加型のTVショーの企画も結局は日の目を見ずに終わる。失意のあまり、バーに入り浸るチャック。
    ところがそんな時、彼の前に謎の男ジムが現われる。ジムはチャックに近づくと、「孤独を好み頭が良く、世間に怒りを
    抱いている君にこそ適任だ・・・」と高い報酬と引き換えにある仕事を持ちかける。それはCIA工作員となり合衆国にとっ
    て邪魔な人物を抹殺するというものだった…。
  [寸評]米国のTVプロデューサーという仮面の陰で、実は33人もの人間を葬ってきたというチャック・ハリスの衝撃的自伝
    をジョージ・クルーニーが初監督した作品。ジョージ・クルーニー自身もCIAの一員という渋い役柄で登場している。
    チャック・ハリスを「グリーンマイル」で凶悪犯を怪演したサム・ロックウェルが演じ、ドリュー・バリモア、ジュリア・ロバー
    ツという豪華キャストで彩っている。内容の触りとメンバーに釣られて本作品に関心を持ったと言ってよい。期待を抱きす
    ぎたのか、内容にメリハリがなく、”可でもなく不可でもなし”という印象だ。チャック・ハリスが2つの仕事をかけもつのだ
    が、どうも信憑性に欠ける感じがしてならない。愚劣な番組を幾つか制作した事に自己嫌悪している姿には何となく人
    間味を感じたけどね。先般、フジTVが王監督を侮辱する内容を茶化して放送し、大騒動になった事件があったが、愚劣
    な番組がはびこっているのも確かだ(優れたものもあるが・・・)。今朝の朝刊の読者の声にも愚劣な番組が社会に悪影
    響を及ぼす事を懸念するコメントがあった。活字離れが進む中(これも深刻)、簡単に情報を得られるTVの影響は大き
    い。本作品で良い味を出していたのはドリュー・バリモアだと思う。「E.T」で雄叫びをあげた少女だった彼女も大きくなっ
    たものだなあ・・・。作品の中で印象深いセリフはジュリア・ロバーツの「自己嫌悪する人というのは、自己嫌悪している
    自分を尊敬しているもの・・・」。的を得ているというか、含蓄があるような感じがしてならない。
    
59.ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR (1997年独)<2.0>
 [監督]トーマス・ヤーン
  [出演]ティル・シュヴァイガー、ヤン・ヨーゼス・リーファース、ティエリー・ファン・ヴェルフェーケ
  [時間]90分
 [内容]余命わずかと宣告され、たまたま末期病棟の同室に入院させられたマーチンとルディ。2人は死ぬ前に海を見るた
    め、病棟を抜け出し、ベンツを盗んで最後の旅に出発した。盗んだ車が実はギャングのもので、トランクの中には大金が
    積まれていたのだ…。道中、残り少ない命の2人にとって怖いものなどなく、犯罪を繰り返し、ギャングのみならず、警察
    からも追われる事になるのだが…。
  [寸評]NHK衛星放送で深夜に放映されていたものを録画して拝見。ドイツで大ヒットとなり、周囲の評価も高かったので、
    関心を持って観てみた。死を目前に「海を見に行く」という目標を掲げ、目標を達成する為には、強盗でも何でもやってし
    まおう。但し、盗んだ車はギャングのもので、ギャングからも追われてしまい八方塞がりになるという内容。淡々と進み、
    ある意味で純粋な話ではある。しかし、私には余りインパクトを感じなかったな。ギャングのボスから免れるところや、
    一度、倒れて意識不明になっても、救急車の中であっさり回復するところなど何かわざとらしい。自分が死を目前にした
    時、果たしてどんな事を行いたくなるのだろうか・・・という事を思わせてくれたが・・・。観ながら何度も睡魔が襲ってきて
    その度にビデオを巻き戻して観たという事は私的にはイマイチという事でしょう。 

60.風の舞〜闇を拓く光の詩〜 (2003年日)<4.0>
 [監督]宮崎信恵
  [出演]塔和子、(詩の語り)吉永小百合、(ナレーション)寺田農
  [時間]59分
 [内容]1996年、隔離政策のもとにハンセン病の患者を社会から隔離していた「らい予防法」が廃止となった。瀬戸内海の
    小島にある国立療養所大島青松園で15歳から暮らしている高見順賞受賞の詩人・塔和子さんが問いかけるハンセン病
    強制隔離の悲しみと怒り。塔和子さんの詩をたどりながら、真摯に生きている元患者さん達の姿、慟哭の思いを伝え、
    「歴史と今」を見つけようとするドキュメンタリー。
  [寸評]「あいち国際女性映画祭2003」で上映された、ハンセン病元患者で詩人の塔和子さんの作品を通して、強制隔離の
    問題を訴えるドキュメンタリー作品。題名の「風の舞」は、国立療養所大島青松園で亡くなった入所者の骨を収めた円錐
    形のモニュメントの事をいう。本作品は59分という短い中で、ハンセン病、強制隔離の惨さ、患者の辛さ、”生きる”という
    尊厳について存分に描写し、訴えている。恥ずかしながら、名前は耳にした事はあってもハンセン病がどんな病気か?
    ましてや強制隔離の実態について全く知らなかった。当たり前のように毎日を送っている傍ら、小島に隔離されて何十
    年と療養生活している人達がいる。その人達の生きる姿・辛さには何ともいえない。塔和子さんは、その中で大変、情
    緒的な詩を多々生み出している。イマジネーション、発想力には感銘する。宮崎信恵監督の熱い思いが伝わる刺激的
    な作品だ。

                             一覧へ  前頁へ 次頁ヘ