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41.WATARIDORI LE PEUPLE MIGRATEUR (2001年仏)<4.5>
 [監督]ジャック・クルーゾ、ミッシェル・デバ
  [出演]ナレーション;ジャック・ペラン(総監督・製作)
  [時間]99分
 [内容]渡り鳥達は北半球に春が訪れると、生まれ故郷の北極を目指して飛び立つ。北極は世界中からやって来る鳥達に
    とっての楽園である。彼らの繁殖はなぜかこの地でしか行なわれない。それは自然界の神秘的な法則でもある。雛鳥も
    ここで渡り鳥としての飛び方を習得する。そんな春の北極へ向けてほとんど休まずに飛び続ける鳥もいれば、宿泊地を
    定めながら向かう鳥、親鳥からはぐれて独りで見知らぬルートを羽ばたいて行く幼い鳥もいる。彼らは北半球が新しい
    春を迎えるたびに、苦難を乗り越えながら数千キロにも及ぶ果てしない空の道を辿って“必ず戻ってくる”のだった…。
  [寸評]製作期間3年、製作費20億円、世界40ヶ国以上を訪れ100種類を越える渡り鳥の旅物語を映画化した渾身のドキュ
    メンタリー作品。100分の映像はストーリーはなく、ひたすら鳥達が飛ぶ様を見せてくれる。飛行中を至近距離で撮影し
    ているため、本当に渡り鳥の中に入って旅している感じがする。”よくこんな撮影をしたな!”という程、感嘆させられる光
    景を何回も目にするし、世界各国の美しい景色(万里の長城の上からのアングル等)を堪能できる。音楽も非常に心地
    よいし、渡り鳥達の生き抜く姿、生存競争の厳しさ(途中ではぐれる事もあれば、狩人に撃ち落とされたり、違う動物に
    攻撃されたり、沼に足を取られたりゴールにたどり着くのは至難・・・。他の鳥は仲間を助けない。ひたすら前へ突き進
    むのだ)を実感させてくれる。予想以上に画面に惹きつけられ、感動もした。この映像は皆様にも観てほしいと思う。家
    族にも絶対みせてあげたいので、DVDが発売されたら購入しようと思う。

42.アバウト・ア・ボーイ ABOUT A BOY (2002年米)<3.5>
 [監督]クリス・ワイツ
  [出演]ヒュー・グラント、トニー・コレット、レイチェル・ワイズ、ニコラス・ホルト
  [時間]100分
 [内容]ウィル・フリーマンは38歳で無職の独身である。ノース・ロンドンに住み、亡き父がクリスマス・ソングを一発ヒットさ
    せたその印税にあやかって優雅に暮らしている。ある日、ウィルは12歳の少年マーカスと出会う。マーカスはシングル
    マザーの母親フィオナのひどい鬱病に悩んでいた。そんな矢先、フィオナが自殺を図ってしまう。ウィルが偶然彼女を
    発見して病院へ担ぎこんだことから、マーカスはウィルを慕うようになる。困惑するウィルだったが、やがてシングルマ
    ザーのレイチェルに恋した彼はマーカスをダシにして彼女への接近を試みるのだったが…。
  [寸評]優雅に暮らす無責任な独身男が、12歳の少年と出会うことで自らの人生を見つめ直していく内容。大人になりきれ
    ない男が僅かながらも成長していく様を描いている。「ブリジッド・ジョーンズの日記」のごとく、ウィルとマーカスが一人
    称で心情を語りながら進んでいく。その心情も分かる気もする。世の中にはウィルのように親の遺産で働かずに暮らし
    ている人もいるのだろう。夏目漱石の小説の主人公にも、そういう人がいた気がする。ウィルは、そこそこ女性に相手に
    されるから、尚更、現状の気楽さから抜け難い(いい身分だ!)のであろう。過去に交際した女性達から”中味の無い
    男”と罵倒されようが懲りない。話の中で、よく”人生には支えが必要”という言葉が出てくる。”支え”は生きがいでもあ
    るのだが、ネガティブな見方をすると”重み”にもなる。でも人間は誰しも、アクティブにもがく姿勢は必要でないだろう
    か?面倒くさいとか、どうせモテないから、とかネガティブにいるだけでは決して何も起きない。そんな事を改めて思わ
    せる作品であった。
    
43.北京ヴァイオリン TOGETHER (2002年中)<4.5>
 [監督]チェン・カイコー
  [出演]タン・ユン、リウ・ペイチー、ワン・チーウェン、チェン・ホン、チェイ・カイコー
  [時間]117分
 [内容]中国北部の美しい田舎町に住むチェンは13歳。彼が弾く母の形見のヴァイオリンの美しい調べは、町中の評判だ。
    父リュウの生き甲斐は息子を一流のヴァイオリニストにする事で質の高い教育を受けさせられるように必死に働いてお
    金をためていた。ある日、2人はコンクール出場のため北京へとやって来る。惜しくも5位に終わったチュンだったが、彼
    の才能を確信したリウは、有名な先生の個人授業を受けさせるため北京に移り住むことにする。そして、音楽教師チア
    ンの情熱的な指導の下、チュンも練習に励むのだったが…。
  [寸評]父と子の絆を描く作品には感動しやすい私ゆえに本作品は大いなる期待を持ってのぞんだ。ところがどうした事か
    冒頭の40分、(名古屋で14:40から観始めた)午前中が二太郎の幼稚園の参観日・講演会だったのと朝早く目が覚め
    た事から疲れが出たのか睡魔が襲ってくるではないか!話は思ったより単調だし、父親は無理矢理、息子にヴァイオリ
    ニストになるよう仕向けている感じがするし、息子も13歳で思春期なのか何か冷めた表情をしている。”これのどこが父
    と子の絆を描いた作品なのか”と思い、”いっその事、寝てしまおう!”と開き直った途端、ある事(ネタバレ注意)を契
    機に目がギンギラギンにさえ、最後まで画面に惹きつけられ、後半なんて涙モードになってしまう感動的な作品であっ
    た。隣のオバサン2人もオンオン泣いていた!愛知県でも劇場公開している劇場が2館なんて勿体無いし悲しいね。
    それゆえ、私が色々と 話してしまっても支障がない気がするが封印しておこう。思わぬ展開、父と子の熱い絆、音楽家
    の思い・舞台裏等が見所の絶対オススメの作品。前半に睡魔が襲ってきた所をDVDで再見したら、評価5.0となり得るか
    な?。中国映画も大したものだ。ヴァイオリニストはやはり「チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲」が似合うなあ・・・

44.夢 追いかけて (2003年日)<5.0>
 [監督]花堂純次
  [出演]三浦友和、田中好子、勝地涼、船越栄一郎、江藤淳、河合純一
  [時間]109分
 [内容]静岡県浜名郡舞阪町。生まれつき視力が弱く右目の視力しか残されていなかった河合純一は3歳の時、右目の手
    術を受けて視力を取り戻す。しかし、医師は純一の母に視力の回復は一時的と打ち明ける。彼は幼い時から泳ぐこと
    が大好きで、視力障害にもめげず練習に励んできた。やがて中学3年の時、純一はついに右目の視力も失い全盲とな
    ってしまうのだった。彼は絶望の淵に沈みかけたが、森田先生や家族、周囲の仲間に支えられ水泳を続けていった。
    そして、“先生になる”という目標を定めた純一は、親元を離れ、東京の盲学校高等部に進学するのだった。
  [寸評]妻が昔の職場の仲間達と交流会があるという事もあって、私は名古屋へ出て「北京ヴァイオリン」を鑑賞し、ラーメ
    ン店を経由して本作品を鑑賞した。「北京ヴァイオリン」以上に、最初から最後迄、場面場面で涙がこぼれ落ちる作品だ
    った。これまで鑑賞した中で、ここまで涙がこぼれ落ちた作品はないかもしれない。それは私自身が親になっていて子
    を思う親の気持ちが分かるようになっている事もあるのだが・・・。本作品は全盲の中学教師で水泳選手としても活躍す
    る河合純一氏の半生を映画化した感動ドラマだ。幼い頃から抱える視力障害を乗り越えてひたむきに夢を追い、つい
    には水泳選手としてパラリンピックに出場して幾つかのメダルを獲得する。やがて念願の教師となって母校の中学校の
    教壇に立つまでを綴った内容である。冒頭が我が家の二太郎と近い年齢の時期、中学・高校時代を描いて、先生にな
    る時期から河合純一さん自身が実際に登場してくる。河合さんの凄まじい努力・立ち向かう姿は本当に凄い。それを支
    える人達も凄いし、温かい。河合さんの人望も大きいのだろうが、舞阪町の風土か、幼ななじみの友情も微笑ましい。
    映画として特別に凝った作りをしている訳ではないと思うが、本当に色々な事を思い、考えさせられる。本作品を観て感
    じた事を少しでも今後に生かしていかねばならないと思うのだが(毎度の口先だけ?)。本作品ももっと多くの劇場で公
    開されるべきではないか。何故、昨年の「折り梅」といい「北京ヴァイオリン」といい今の時代にこそ見せるべき作品が幅
    広く公開されないのか?私は映画愛好家だが、自分が推奨する作品を他の人がどう感じようが(個人の考えの差異が
    あるので)余り気にはしない。しかし、本作品を観て何も感じないという人がいたら悲しいものがあるな。

45.アルカトラズからの脱出 ESCAPE FROM ALCATRAZ (1979年米)<4.0>
 [監督]ドン・シーゲル
  [出演]クリント・イーストウッド、パトリッド・マクグーハン、ロバーツ・ブロッサム、ジャック・チボー
  [時間]108分
 [内容]脱獄絶対不可能と言われたサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ刑務所に一人の囚人が移送されてきた。彼
    は寡黙な男で移送された早々に冷酷な刑務所長にマークされる。彼は独特の魅力があり、周囲の囚人達とも結託し、
    脱獄を行うための手段を思案する。刑務所長と対立したり、恨みをかった囚人から襲撃される等の幾つかのトラブルが
    ある中、脱獄の決行の日を迎えるのだが・・・
  [寸評]若き日のクリント・イーストウッドが静かに淡々と演じている実話に基づく脱獄モノ。刑務所内を描く作品は「グリー
    ン・マイル」「ショ−・シャンクの空に」「大脱走」等の名作が思い浮かぶ。それらに比べて本作品は派手さ・大きな展開は
    ないが、緊迫感を常に感じ、最後迄飽きずに観られる。クリント・イーストウッド演じる囚人は一体彼が何をやって刑務所
    に入ったのか?何故アルカトラズへ移送されたのか?彼の生い立ちは?という事は一切語られない。他の囚人にしても
    過去については語られない。あくまで「いかに脱獄するか?」がメインなのだ。シンプルでありながら刑務所長との対立、
    他の囚人達との関係もさりげなく描写されており、なかなか良い演出だと思う。看守が脱獄を疑ってイーストウッドの牢
    に行き、”人形?”に手を当て「ヤバイぞ!」かと思いきや、イーストウッドが「何だ?」という場面は可笑しくもあり、印象
    的だね。

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