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36.チャドルと生きる THE CIRCLE (2000年イラン)<3.0>
[監督]ジャファル・パナヒ
[出演]フレシテ・ザドル・オルファイ、マルヤム・バルウィン・アルマニ、ナルゲス・マミザデー
[時間]90分
[内容]ある女性が女の赤ちゃんを産んだ。女性の母親は“男の子”でないと離縁されてしまう”と慌てふためく…。刑務所
から脱獄した3人の女性。彼女たちは逃避行の為なら何でもする覚悟だった。その中の1人は故郷を目指すが、身分
証がなく、バスターミナルで切符を買うのもままならない。時を同じくして、妊娠した未婚女性が堕胎の為に刑務所から
実家に逃げ帰るも実の兄弟たちに追い出されてしまい、友人のところへ訪ねるのだが…。町で行く当てもなくさまよう
母娘がいた。母親は生活苦のために実の娘を捨てようとしていた。娘の幸せを願えばこその決断だった…。
[寸評]チャドル(ベール)に身を包み、決して平等といえない社会の中で様々な困難に遭遇する複数のイラン女性達の厳
しい現実の中で力強く生きていこうとする姿を描いた作品で、イラン国内の女性に対する差別・抑圧を突いた問題作。
イラン国内では上映が禁じられた模様。90分の中で循環的(バトンリレー)にオムニバス形式で幾つかのエピソードが
描かれ、最初と最後の場面を見ると確かに循環している。話の内容は厳しい辛いものであるし、少し眠くなったりもし
たが、”女性は逃避行をしても決して逃れられない”というイランの社会情勢を認識させられた。それにしても娘を置き
去りにした母親のあの心情吐露はいかなるものか?
37.アバウト・シュミット ABOUT SCHMIDT (2002年米)<3.5>
[監督]アレクサンダー・ペイン
[出演]ジャック・ニコルソン、キャシー・ベイツ、ホープ・デイヴィス、ダーモット・マローリー
[時間]125分
[内容]アメリカ中西部オマハ。66歳のウォーレン・シュミットは、勤め先の保険会社で定年退職の日を迎える。彼はこれま
で妻ヘレンと今は離れて暮らしている一人娘のジーニーと共に、平凡だが特に不満のない人生を送ってきた。そして
次の日から新たな人生を歩むことになる。しかし、翌朝目覚めてみると、シュミットは会社中心の生活リズムが染みつ
いていたせいか手持ち無沙汰になる自分を痛感する。会社へ訪ねていっても後任は露骨に疎んじるし、引継ぎの書
類も廃却されようとしているのを目にし虚しさを感じる。そんなある日、妻ヘレンが急死する。そして葬儀の準備に追わ
れるシュミットのもとへ、愛娘ジーニーが婚約者ランドールを伴い戻ってくるのだった…。シュミットはランドールの事
が気に入っていなかった。
[寸評]会社の利益に貢献し、仕事を成し遂げ、家族もそれなりに守ってきたという自負を持って定年を迎えた男性が、果
たして自分の人生とは?これまで生きてきた意味は?と模索し続ける話。私も会社をまっとうに勤め続けられるとする
と19〜24年後に定年となる。その頃はどうなっているのか?と考える事がある。(子供達は自立して着実に人生を歩
んでいるのか?我々を多少は大事にしてくれるかな?孫がいるのかな?少しは何か足跡を残せているか?妻とゆっ
くり海外にフリー旅行をしたいな・・・)未だ先とはいえ決して他人事ではないような内容なので興味深く拝見した。「カッ
コーの巣の上で」等、一癖ある役柄の印象が強いジャック・ニコルソンが、どこにでもいそうな平凡な男性を素朴にお
かしく上手く演じている。最後のシーンの涙は、やはり”人としっかりつながっていたい”という思いだが、現実に簡単そ
うで難しいのかもしれない。ジーニーの父親を疎んじる態度と「今になって私に関心を持って説き伏せるわけ!」という
言葉が妙に強烈に印象に残った。人間関係は長年の積み重ねと情の熱さが大事かな。話はあっと驚くような展開が
ある訳ではないが、「人生」についてふと考えさせられる作品だ。
38.ダイヤルMを廻せ! DIAL M FOR MURDER (1954年米)<3.5>
[監督]アルフレッド・ヒッチコック
[出演]レイ・ミランド、グレイス・ケリー、ロバート・カミングス、アンソニー・ドーソン、ジョン・ウィリアムズ
[時間]105分
[内容]元テニス選手のトニーは、財産家の妻マーゴが推理作家のマークと恋仲になった事を知り、妻の殺害による遺産
の相続を企む。昔の学校の先輩スワンを巧みに家におびき寄せたトニーは、彼の弱みにつけ込み、自分の留守中に
妻を絞殺する事を依頼する。ところが襲われたマーゴが咄嗟にハサミでスワンを刺し殺してしまった。アリバイを固め、
完全犯罪は間違いないと思っていたトニーは、このアクシデントに計画を変更する。マーゴの行為を正当防衛でなく動
機ある殺人へと作り替え、彼女を窮地に追い込むのであった・・・
[寸評]ブロードウェイで大ヒットしたという”フレテリック・ノット(暗くなるまで待って)”の舞台劇の原作をヒッチコックが映画
化したもので、「裏窓」「ロープ」を思わせる得意の密室劇で「電話」「ハサミ」「鍵」の小道具の使い方が上手い。犯人
は最初から分かっており、それがアクシデントが重なる事によって、どのように追い詰められてかわしていくか、という
見せ方をしている。一つ一つのセリフが重要であるし(時折巻き戻して見直した)、話しのキーとなるのは「鍵」なので
「鍵」の行方をしっかり見ていないと分からなくなるだろう。グレイス・ケリーは本作品がヒッチコック映画の初出演との
事。どの作品を観ても相変わらず美しいねえ。今回は彼女の困窮する姿が印象的だ。しかし、いつの時代も不倫ネタ
の作品があるものだ。
39.ゴスフォード・パーク GOSFORD PARK (2001年米)<2.5>
[監督]ロバート・アルトマン
[出演]レマギー・スミス、マイケル・ガンボン、クリスティン・スコット=トーマス、ボブ・バラバン
[時間]137分
[内容]1932年11月、イギリスの郊外。ウィリアム・マッコードル卿とシルヴィア夫人が主の”ゴスフォード・パーク”というカ
ントリー・ハウスでパーティが催された。貴賓が優雅に来場する“上の階”とは対照的に、メイドや従者たちは大忙し。
そんな“下の階”では虚飾に溢れたご主人達のゴシップが乱れ飛ぶ。2日目の晩餐の席、客の一人であるアメリカ人
映画プロデューサーが、この“鼻持ちならない”貴賓達を題材にした最新作の構想を披露する。それはカントリー・ハ
ウスを舞台にした殺人事件。そしてその夜、実際にウィリアム卿が邸内で殺される事件が発生するのだった・・・
[寸評]イギリスの貴族社会を従者側の視点から風刺したミステリー仕掛けの作品。あのような階級社会は本当に嫌だ
し、貴族は、お高くとまっていて鼻持ちならない感じがする。まあ、どの時代でも権力を傘にして傲慢たる人は幾らでも
いるのだが・・・。この作品は真犯人を探し出す事に力を入れていない。あくまで貴族社会の生態を描く事が主である。
ウィリアム卿は誰から殺されても仕方がないぐらい、傲慢で恨みを買っており、犯人は断定できないまま、物語は終わ
ってしまう。犯人解明を期待して観ていると肩すかしをくらう。この作品は登場人物が非常に多い。事前に人物の相関
図でも見て把握しておかないと話についていけないのでは?(実際についていけなかったなあ・・)もう一度観ると味わ
いが出てくるのかもしれないが、不完全燃焼の感じは否めない。
40.OUT (2002年日)<3.0>
[監督]平山秀幸
[出演]原田美枝子、倍賞美津子、室井滋、西田尚美、香川照之、間寛平、吉田日出子
[時間]119分
[内容]夫が半年前に会社をリストラになり、一人息子も親と口をきかなくなってしまうという家庭不和で悩む香取雅子は
家計を支えるため、夜勤で弁当工場で働いていた。元銀行員である雅子はしっかり者でパート仲間から頼られる存
在であった。ある日、工場で働く山本弥生から電話がかかってくる。妊娠中の弥生はギャンブルにのめり込んだ夫の
暴力に日頃悩まされていた。朝帰りの夫に暴力を振るわれた事に怒りを感じ、衝動的に夫を殺してしまったというの
だ。助けを請う弥生に対し、雅子は・・・
[寸評]「柔らかな頬」で直木賞を受賞した桐野夏生の同名小説の映画化。私は小説も読んだし、TVドラマ(香取雅子役
は田中美佐子。渡辺えり子、段田安則等が出演)も見た。本作品のようにえげつないのが好きな訳では決してなく、
原田美枝子、倍賞美津子、室井滋という個性が強い女優が演じるとどうなるのか関心があった。内容が内容だけど
彼女達の演技はやはり結構上手い。家庭不和、介護、カード地獄、夫の暴力という現代にみられる悩みを抱えた女
性達が思わぬ事から一連托生の道にはまり込む。宮部みゆき原作の「模倣犯」にしてもそうだが、身近にいる知人
達の影響は、場合によっては一歩間違えれば怖いものだと思う。あまり弱み、つけこまれる所は持たないほうがよい
だろうし、傲慢になってもいけない。作者は残虐シーン云々より、人間関係、人間の弱さ、「夢」を持つ事の大切さを
訴えたいのだろう。
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