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31.至福のとき 幸福時光 (2002年中)<3.5>
[監督]チャン・イーモウ
[出演]チャオ・ベンシャン、ドン・ジエ、フー・ピアオ、リー・シュエチエン、ニウ・ベン
[時間]97分
[内容]中国の大連。工場をリストラされた失業者であるチャオは太めの女性と見合いを行い、女性からある程度のお金の
準備を要求される。中年であり何とか結婚したい彼は見合いを成功させようと大見栄を張ってしまう。但し、その女性は
先般に離婚した男性が(男性の)実子の盲目の少女ウー・インを置き去りにしていったので、女性の息子共々、ウー・イ
ンを冷遇していた。女性は更にウー・インを按摩師として働かせるよう願い出てきた。チャオは継母に冷遇されている彼
女に同情し、廃工場に按摩室を工場の仲間達の協力を得て急造する。彼は仲間に、旅館の客のフリをするなどの芝居
を打ってもらい、ウー・インを稼がせる。そして、彼女も次第に生きる希望を取り戻していき、チャオとも信頼関係が築か
れていくのだが…。
[寸評]チャン・イーモウ監督の最新作。レンタル開始日にすかさず借りて拝見。チャオがお見合いを成立させたいために
盲目の少女ウー・インの世話をする内に、心を通い合わせるようになる話だ。そもそもチャオが何故あんな醜悪女(子供
もソックリなキャスティングをしていて笑う)に媚を売ってまで結婚したいと思うのかが疑問でしようがない。幾ら自分が年
だからといって誰でも良いのか?よく考えろ!だから女性が付け上がるんだ!と思い続けていたので、話の展開にはひ
かれつつも、どことなく腹が立っていた。あんな醜悪女にチャオ以外にアタックする男性がいるのもまた信じられない。
(ただ醜悪女が言った”ウソで固めた人間は嫌だ!”というのも真理だが・・・)そんな立腹感もチャオの顔をウー・インが
なぞる場面、最後のウー・インのテープのセリフで一旦はスカっと一掃されるのだが、それでも救いようのない絶望感が
残ってしまうエンディングだ。タイトルの「至福のとき」がウー・インにとって、これでは余りに悲しいではないか・・・
32.メルシイ!人生 LE PLACARD (2000年仏)<4.0>
[監督]フランシス・ヴェヴェール
[出演]ダニエル・オートゥイユ、ジェラール・ドパルデュー、ティエリー・レルミット、ミシェル・ラロック
[時間]84分
[内容]コンドーム会社に勤める真面目が取り柄の冴えない中年男性のピニョンは妻子にも2年前に見捨てられ、追い討
ちをかけるように、20年勤めた会社からリストラ対象としてクビになることを聞かされる。思い余って身投げをしようとした
ところを隣の部屋の老人に助けられる。事情を聞いた老人はクビにならない方法をピニョンに伝授する。翌日、会社宛
に男と情熱的に抱き合うピニョン氏の写真が送られてくる。これを見た経営陣はコンドーム会社ゆえに”ゲイ差別”という
糾弾を怖れてピニョンのクビを撤回する。ピニョンの思惑は見事に成功したわけだが、当然周囲の見る目はすっかり変
わる…。
[寸評]本作品は先の「至福のとき」を思えば最後がスカッとするコメディ。「真面目だけで魅力・面白味がない」というのは、
いつでもどこでも耳にする言葉だ。実際に今の社会全般、私の会社にしても真面目に一生懸命にやるのは当たり前で、
いかに斬新で多くの付加価値を生み出すかが評価の対象となってきている。でも個人的には”真面目さ”を馬鹿にする
事は嫌だな。幾ら格好良くて口が上手くて幾人かの女性をだませる不真面目な人より、コツコツと地道に頑張る人の方
がいいと思うけどな。主人公のビニョンは自らをゲイと偽る事によって、視点も変わり、自らの殻を破っていく。彼は失う
ものもあったが得るものもあった。「人生は捨てたものじゃないよ!」という事をコメディながら描かれている。邦題の
”メルシイ!(ありがとう)”というのは内容に適していて良いと思う。
33.モンスーン・ウェディング MONSOON WEDDING (2000年印・米・仏・伊)<4.5>
[監督]ミーラー・ナーイル
[出演]ナセールディン・シャー、リレット・デュベイ、ヴァソンダラ・ダス、イシヤーン・ナイール
[時間]114分
[内容]インドのデリー。TV局に勤める女性アディティ・ベルマは父の決めた縁談を急に承諾した。相手はアメリカで仕事を
するエンジニアのインド人の青年ヘマント・ライ。父のラリットは娘の結婚式を伝統に沿って、モンスーンの時期に親戚縁
者を集めて盛大に行なおうと準備に大忙しである。結婚式を数日後に控え、アディティは仕事場に別れの挨拶へと向か
う。実は、彼女は担当する番組のスタッフと不倫関係にあったのだが、結婚直前になっても不倫相手の事が忘れられず
心の整理がつかないのだ。そんな中で世界中からベルマ家の親族たちが続々とやって来る。
[寸評]インドの、ある中流家庭の娘が結婚式を挙げるまでの奮闘の様を、それにまつわる幾人かの人間模様(娘、従姉、
両親、メイドと結婚コーディネーター、叔父等)を交えて描き出す群像劇。インドの結婚式や慣習はかくなるものか!と
認識させてくれる。「ムトゥ!踊るマハラジャ」的に歌って踊ってのノリばかりかと思いきや、前半はしっかりと色々な人
間模様を描いておいて、後半には祝宴での踊りを見せてくれる。娘は不倫相手に未練があり、式の直前まで不倫相手
に会ったりしているので、「不倫相手を忘れるために強引に結婚するのか!この野郎!(先日、火曜サスペンス劇場で
も、”好きな人を忘れるために早々とお見合いで結婚した”なんてのが、やっていた・・・)知らない相手が可哀相だ!」と
怒りの気持ちでいたが、結婚相手に真相まで話をして分かり合ったのでとり合えず許せた。様々な人間模様の描き方
がなかなか上手く出来ている。結婚にまつわる親族・関係者の思いというのは、どこの国も同じなのだと思った。本作品
は格言じみたセリフ(※)も幾つかでてきて共鳴もした。インド映画は絶対あなどれない!
(※)「娘が幸福になってくれるのが何よりだ。そのためならどんな苦難だって受け入れる」<娘の父親>
「臆病者ほど落馬しない(挑戦しないから失敗もない)」<思いの女性に踏み切れない男性に対する某人の助言>
「僕にも苦しい思いをした事があるから、お互いにそれは受け入れて乗り越えよう」<花婿>
34.ボウリング・フォー・コロンバイン BOWLING FOR COLOMBINE (2002年カナダ・米)<4.5>
[監督]マイケル・ムーア
[出演]マイケル・ムーア、チャールトン・ヘストン、マリリン・マンソン、マット・ストーン
[時間]120分
[内容]1999年4月20日、米国・コロラド州の小さな町リトルトン。2人の少年は朝の6時からボウリングに興じていた。いつも
と変わらぬ1日の始まりのはずが、この後2人の少年は銃を手に彼らの通うコロンバイン高校へと向かった。そして、手
にしていた銃を乱射し、12人の生徒と1人の教師を射殺し23人を負傷させた後、自殺した。マイケル・ムーアは問う、
“何故、米国はこんなにも銃犯罪が多いのか”と。その疑問を解消するため、マイケル・ムーアはカメラとマイクを手に
様々なところへアポなしの突撃取材を始めるのだった・・・。
[寸評]アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を獲得し、その受賞式でマイケル・ムーア監督が「ブッシュよ、恥を知れ!」
と大胆なスピーチを行った注目の話題作。マイケル・ムーア監督が大胆(最後はワザとらしいゾ!)で色々な観点から
”米国の銃犯罪の多さの要因→更には米国の歪み・病巣自体”に迫っていく渾身のドキュメンタリーだ。レイトショーで観
たせいか(昼間の疲れ?)、全編ドキュメンタリーゆえに若干単調ゆえ、睡魔が襲いかけてきたが、描写される事実には
驚き、考えさせられる。米国の過去の歴史自体をアニメーションで表現してくれる等、かなり勉強になる。日本も色々な
問題・歪みがあるが、米国も本当にあるものだ。昨年末に公開された「ジョンQ」といい本作品といい米国の陰の事を知
るには格好の教材でしょう。「トラフィック」に描かれていた麻薬問題といい、銃の問題といい、結局はすぐには解決はし
ていかないのだろうが・・・。マイケル・ムーア著作の「アホでマヌケなアメリカ白人」を購入して彼の考えにもう少し触れ
てみようかと思う。本作品は皆様にも是非観てほしい作品です。
35.めぐりあう時間たち THE HOURS (2002年米)<4.0>
[監督]スティーブン・ダルドリー
[出演]ニコール・キッドマン、ジュリアン・ムーア、メリル・ストリープ、エド・ハリス、トニ・コレット
[時間]115分
[内容]誰の人生にもやって来る普通の朝が、また始まろうとしていた・・・。1923年ロンドン郊外、作家のヴァージニア・ウル
フは「ダロウェイ夫人」を執筆している。1951年ロサンゼルス、妊娠している主婦ローラ・ブラウンは夫のために息子とバ
ースディ・ケーキを作り始める。ローラは「ダロウェイ夫人」を愛読している。2001年ニューヨーク、編集者クラリッサ・ヴォ
ーンはエイズにかかっている作家(元恋人)の受賞パーティの準備に奔走している。クラリッサは作家から「ダロウェイ夫
人」と呼ばれている。朝の後は昼になり、そして夜がやって来る。3つの時代の、3人の女たちの一日は、それぞれの終
わりへ向かっていった・・・
[寸評]ピューリッツァー賞とペン/フォークナー賞のW受賞に輝くマイケル・カニングハムの同名ベストセラーを「リトル・ダン
サー」のスティーブン・ダルドリー監督が完全映画化した作品。二コール・キッドマンが本作品でアカデミー賞の最優秀
主演女優賞を獲得。水曜日に有休を取り、妻と午前に鑑賞したが、平日、レディーズ・デイ、本作品が女性向?という事
からか観客は見事に女性ばかりだった(男性は私含めて2名のみ)。ニコール・キッドマン、ジュリアン・ムーア、メリル・
ストリープという3大豪華女優の演技はさすがに見事でエド・ハリスも上手い。ニコールのオスカーは確かに納得いくが、
反面、二コールだけでなくジュリアン・ムーアやメリル・ストリープにも同様に賞を与えないと悪いような感じもした。個人
的には今回はジュリアン・ムーアが演技・役柄において際立っていたと思う。本作品は端的に言うと「高貴で知的で見
応えのある芸術性の高い作品」だ。3つの時代に生きる3人の女性が結びついていくという凝った内容で、結びつき方も
最後に”あっ!”と驚く。「シカゴ」で哀れな夫役を演じたジョン・C・ライリーが今回も哀れなんだよなあ・・・。何か哀れな
役が適してしまっているなあ。男性としては笑えないんだけどね。妻は作品に非常に入り込んで、涙を流しており、
”ここ最近ではベスト作品”と言っている。妻が強調しているのは本作品は特に女性の方は観る人(今、幸福であるか
否か)によって感じ方が違うであろう、との事。
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