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26.バーバー THE MAN WHO WASN'T THERE (2001年米)<2.0>
 [監督]ジョエル・コーエン
  [出演]ビリー・ボブ・ソーントン、フランシス・マグドーマンド、ジェームズ・ガンドルフィーニ
  [時間]116分
 [内容]カリフォルニアの片田舎であるサンタローザの床屋で働いている無口な男エド・クレインは平凡な毎日を送ってい
    たが、妻ドリスと彼女の上司デイブの浮気を疑い始める。そんなある日、店に来た客の一人から"ドライクリーニングの
    商売を始めるために資金を出してくれる人を探している”と聞かされたエドは、この話にすっかり乗り気になり、必要な
    資金を得るために、ドリスとの不倫をネタにデイブを恐喝することを思いつく。恐喝の行動を起こし始めたが、やがて事
    態は予想もしない方向へと転がり始めた…。
  [寸評]「ファーゴ」のコーエン兄弟による、ふとした事から歯車の狂い始めた男がたどる悲劇を描いた作品。人間の運命は
    思わぬ事から変転していくものなのか、人生の哀愁を感じさせてくれる。導入部は結構良いかと思うが、話が変転して
    いくに伴い、何だか訳が分からなくなっていく感じがした。特に女子高生の車での行動は驚くというか笑ってしまった。
    これもコーエン兄弟ならではの演出なのか?ベートヴェンのピアノ・ソナタは妙にマッチしていたし、ビリー・ボブ・ソーン
    トンの哀愁を漂わせる演技は良かっただけに、話の内容がもう少し明快であると良かったかな。訳の分からなさが本作
    品の特徴なのかもしれないが何とも今一つしっくりこなかった。

27.I am Sam アイ・アム・サム I AM SAM (2001年米)<3.5>
 [監督]ジェシー・ネルソン
  [出演]ショーン・ペン、ミシェル・ファイアー、ダコタ・ファニング、ダイアン・ウィースト、ローラ・ダーン
  [時間]133分
 [内容]知的障害のために7歳の知能しか持たない父親サムは、スターバックスで働きながら一人で愛娘ルーシーを育てて
    いた。ルーシーの母親はホームレスであったが、ルーシーを産むとすぐに姿を消してしまった。それでもサムとルー
    シーは理解ある人々に囲まれ幸せに暮らしていた。しかし、ルーシーが7歳になる頃にはその知能は父親を超えよう
    としていた。そんなある日、サムは家庭訪問に来たソーシャルワーカーによって養育能力なしと判断され、ルーシー
    を奪われてしまい、ルーシーは施設へ入れられてしまう。どうしてもルーシーを取り戻したいサムは、敏腕で知られる
    女性弁護士リタのもとを訪ねるが、サムにリタを雇うお金などあるわけもなく、あっさり断られてしまうのだが…。
  [寸評]周囲でも”泣けた”とよく聞いた本作品をようやく拝見。知的障害の父親と娘の心温まる強く熱い絆を描いている。ル
    ーシーが非常に可愛いらしく、全般的にサムとの間の純粋なホノボノとした愛情を上手く表現している。親は子に愛情を
    懸命にかけていれば子は分かってくれるものなのかな。但し、乳児を育てる実際の母親の大変さを考えると、サムが育
    てた過程等、設定に幾つか無理を感じる所もある。そこが泣くまで至らなかった要因かもしれない。ショーン・ペンの演
    技は確かに良かったし、ミシェル・ファイアーやロ−ラ・ダーンが上手く締めてくれている。ミシェル演じるリタの「私は負
    け知らずの人間・・・」という言葉が印象的だ。誰しも挫折なしに突き進む事なんてできない。身近にいる家族と愛情を
    交し合える事が根本的には大事なんだ!という事をとことん主張した作品であった。

28.シカゴ CHICAGO (2002年米)<4.5>
 [監督]ロブ・マーシャル
  [出演]レニー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、リチャード・ギア、クイーン・ラティファ
  [時間]113分
 [内容]1920年代のシカゴ。スターを夢見るロキシーは、キャバレーの専属歌手ヴェルマのステージを羨望の眼差しで見つ
   めていた。そんなロキシーはある日、ショーに売り込むとの約束を守らなかった不倫相手と争いを起こし、ついに彼を撃ち
   殺してしまう。逮捕されて留置所に送られたロキシーは、驚くことにあのヴェルマと出会った。彼女は不倫した夫と妹を殺
   した罪に問われていた。しかし、マスコミ操作に長けた悪徳かつ辣腕弁護士であるビリーのおかげで、巷では一躍スター
   扱いされている。ロキシーも同じ手段でヴェルマ以上の注目を浴びようとビリーを雇うのだが…。
  [寸評]本年度のアカデミー賞で作品賞を始め最多の6部門を制覇した話題のミュージカル映画。私自身、ミュージカル自
   体が好きな事もあり、ボブ・フォッシーのブロードウェイ・ミュージカルを映画化した本作品を以前より注目していたし、
   1968年の「オリバー」以来の”ミュージカル映画の作品賞獲得”という事もあって非常に期待して鑑賞した。期待通り、正
   にミュージカルを鑑賞した気分にさせてくれ、十分堪能できる作品だ。レニー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーン
   ズ、リチャード・ギアの歌・踊りが非常に素晴らしい。実際に彼等が演じているので感嘆してしまう。レニーとキャサリンの
   どちらが好みかといえば個人的には”レニー派”なのだが、今回は完全にキャサリンの演技・インパクトが圧倒している
   (実際に助演女優賞を獲得)。ミュージカル映画は概して唐突に歌い出す場合があるものだが、今回は歌とストーリーの
   兼ね合わせが上手く演出されていて違和感が全くない。物語自体は単純明快(何と実話との事!)で、ロキシーの夫が
   哀れでならず、ロキシーに好感を持てない面もあるが、本作品は物語より出演者の歌と踊りを視覚的に楽しむもの。
   今年の作品の中では屈指のエンターティメント作品である事は間違いないでしょう。

29.ディナーラッシュ DINNER RUSH (2001年米)<3.5>
 [監督]ボブ・ジラルディ
  [出演]ダニー・アイエロ、エドアルド・バレニーニ、カーク・アセヴェド、ヴィヴィアン・ウー
  [時間]99分
 [内容]ニューヨークのトライベッカ。イタリアン・レストラン“ジジーノ”のオーナーであるルイスは、長年のビジネスパートナー
   のエンリコがギャングに殺害されたため、気が滅入っていた。また彼の息子ウードはイタリア帰りのチーフ・シェフであり、
   ルイスの反対を押し切り、伝統的な家庭料理(ルイスの妻がシェフをしていたが今は故人)で街の人々に愛されてきた
   この店をグルメ批評家に絶賛されるトレンディ・レストランへと変えてしまっていた。ウードは経営権を譲ってほしいとルイス
   に迫る。ルイスはサブ・チーフのダンカンの料理の腕を買っているが、ダンカンはギャンブル狂で借金を重ねるばかりだっ
   た。やがて日が沈み、今日もまた厨房もフロアも様々な思惑が錯綜する<ディナーラッシュ>の時間がやって来た。しか
   し、ダンカンの借金をネタに店の譲渡を迫るため、ギャングの2人がレストランに現れた・・・。
  [寸評]ニューヨークの人気レストランを舞台に繰り広げられる様々な人間模様を一夜の出来事としてスリリングに描いたサ
   スペンス・ドラマ。監督自身がニューヨークに所有する実在のレストラン“ジジーノ”を使用して撮影を行い、厨房の雰囲気
   をリアルに描いている。「ここは戦場なんだ!」という雄叫びの通り、正に料理の舞台裏の世界は大変で凄まじい事を認
   識させられる。TVの「P.S.愛している」よりインパクトが強いぞ。ルイスとウードの父子、ルイスとダンカン、ダンカンと恋人
   のウエイトレス、ウードとグルメ批評家、ルイスとギャング、ダンカンとギャングという様々な人間関係が短時間の中で描
   かれており、最後は思わぬ展開となる。しかし、グルメ批評家というのは、この作品の登場人物のようにタカビーなのか
   ね。ウードと特別な関係を持って記事の内容を良くしたようだが、現実にもそんな事が行われているのかな?と思ってしま
   った。決して中味が濃いとは言い難いが、結構小気味良い仕掛けが施されており、楽しめる内容でしょう。
   
30.ボイス PHONE (2002年韓)<3.0>
 [監督]アン・ビョンギ
  [出演]ハ・ジウォン、キム・ユミ、チェ・ウジェ、チェ・ジヨン、ウン・ソウ
  [時間]102分
 [内容]女性ジャーナリストのジウォンは以前手掛けた援助交際に関するスクープ記事が発端で、逆恨みした犯人から、
   しつこく掛かってくる脅迫電話に悩まされていた。証券会社のCEOである夫を持つ親友のホジュンが、そんなジウォンの
   身を案じて彼等の別宅を隠れ家に提供してくれた。ホジュンのアドバイスで携帯番号も替えたジウォンだったが、それも
   束の間、ある日未だ誰にも教えていないはずの携帯が鳴り出した。その時ちょうど傍にいたホジュンの幼い娘ヨンジュが
   電話に出てしまう。その途端、彼女は全身を痙攣させ絶叫する。慌てて携帯を奪い取ったジウォンの耳には不気味なノイ
   ズが鳴っていた。ジウォンは過去に同じ番号を所有者の動向を探り始めたが、何と皆・・・・。
  [寸評]妻の方が本作品に関心を持ち、恐る恐る帯同。特に前半の方が現象が不可解でビックリするシーンが多く瞬間瞬
   間では怖がらせてくれる(妻曰く、椅子が3回ぐらい激しく振動していた模様)。後ろの席にいた騒々しい女子高生2人組
   は何と途中で離脱してしまった。子役のウン・ソウの迫真演技は結構見物だし、女子高生のジニ役のチェ・ジヨンのあの
   目付きも結構怖かったかな。本作品は瞬間瞬間では怖がらせてくれるが、後に残るような(家に帰ってトイレに行くのが
   不安等)怖さではない。後半の犯人が判明していく段階からは落ち着いて観れてしまう。犯人は予想外の人物であった。
   結局、よくあるパターンの不倫のもつれによるが、もう一つの奥深い要因は何とも言い難い辛いものである。携帯電話を
   題材にしたホラー物は日本でもドラマが作られたりして最近の流行なのか?前半のタクシー運転手・エレベータで心臓
   発作を起こした女性等の関係は今一つよく分からなかった。最初から電話を海に投げ捨てていたならどうなったのだろう
   か?主演のハ・ジウォンは誰かによく似てると思って観ていたが、あるサイトを観てやはり指摘されていた。女優の中山
   忍だ。(最近どうしているのかは???)。レイトショーで1,000円払って観る分には損しないと思いますが・・・。

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