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21.陽はまた昇る (2002年日)<3.5>
[監督]佐々部清
[出演]西田敏行、緒形直人、真野響子、渡辺謙、石橋蓮司、仲代達也
[時間]108分
[内容]家電メーカー:日本ビクターの本社開発部門に勤める開発技師の加賀谷静男。あと数年で定年を迎える彼に、横
浜工場ビデオ事業部への異動命令が下りる。そこは赤字続きの非採算部門で加賀谷に課せられた指令は大規模な
リストラだった。しかし、加賀谷は全従業員の能力を把握し、一人たりとも削減しないように決意する。更に夢であった
家庭用VTRの開発を本社に隠れて推進する。企画・総務次長の大久保は加賀谷の行動に反対する。本社がリストラ
対象としている赤字部門にそんな活動を認めるはずがないからだ。ましてや、この時、家電メーカーの雄・ソニーが
VTR(ベータ)の商品化にあと一歩の所まで漕ぎ着けていたのであった・・・。
[寸評]リストラ部門を1人も削減せずにVHSを開発し世界標準規格にまでした日本ビクターの高野氏と事業部メンバー
の苦難の道のりは「プロジェクト];リーダーたちの言葉」という書籍を読んだり、NHKで放送された「プロジェクト]」の
ビデオを観て認識していた。「プロジェクト]」の内容は結構感動的だった記憶がある。この実話をモチーフに映画化さ
れたのが本作品だ。「決してあきらめない。ダメならやり直せばよい」「人を尊重する」等、幾つかの教訓がこめられて
おり、それなりに感動する所はあるが、欲をいうともっと実話を忠実に再現する形にしても良かった気がする。途中で
松下電器に転職した江口の存在は、どことなく中途半端だし、加賀谷がまだ小学校ぐらいの子供がいながら定年を前
に身を引くのも現実的でない。ベータへの遠慮もあるのだろうが、VHSが普及していく様をもう少し描いても良かったの
では。世の発展に何も貢献できない私に比べ、VHSの開発に携わった人達は本当に凄いと思う。しかし、世の中は常
に最先端の技術に置き換わる。彼等が必死に開発したVHSも長きに渡って愛好されているが、DVDに徐々に置き換わ
ろうとしている。VHS開発者達は、どんな思いでDVDを見つめているのだろうか?
22.海辺の家 LIFE AS A HOUSE (2001年米)<3.5>
[監督]アーウィン・ウィンクラー
[出演]ケビン・クライン、ヘイデン・クリステンセン、クリスティン・スコット=トーマス、ジェナ・マーロン
[時間]126分
[内容]建築事務所に勤めるジョージ・モンローは42歳の建築デザイナーである。父親との確執が原因で、自分の息子とも
うまくコミュニケーションがとれなかった。10年前に妻と離婚し、上司との摩擦から会社からも解雇される。更には医者
から余命3ヵ月との宣告を受けてしまう。一方、別れた妻は再婚して幸せに暮らしていた。しかし、16歳になる息子は
妻の再婚相手の家で暮らしていて、実の父親を憎み続け、正に反抗期真っ盛りであった。ジョージは初めて自分の人
生に疑問を感じた。そして、昔からの夢だった自分の家を建て直すことを決意する。夏休みの期間、ジョージは反発す
る息子を無理やり手伝わせ、手造りの家を建て始めたのだが…。
[寸評]「スターウォーズ・エピソード2」でラジー賞の最悪助演男優賞という不名誉なレッテルを貼られたヘイデン・クリス
テンセン。確かに色気と妬み感(妙な目付き)が前面に出て、恋愛シーンもダサかったから仕様がないか・・・。但し、
本作品の彼の演技は決して悪くない。ただやはり、本作品はケビン・クラインの上手さが大きいでしょう。離れていた
父と子が家を建てる行為を通じて、触れあい、気持ちが近づいていく、という内容。何か死ぬ前に痕跡を・・・という主人
公の思いは分かるな。自分が子供達に将来、何を痕跡に残したか語れるのか?と思う事がよくある。(仕事の実績は
大した事ないし、家も二世帯住宅で父の基盤あっての事だしなあ・・・)本作品は夫と元妻、元妻と再婚相手、子と隣人
の彼女等、様々な相関関係が描かれ、反抗期の一環として薬に溺れる息子の様など要素が色々詰め込まれている
が、純粋に父と子の触れあいに焦点を絞っても良かった気がする。ラスト・シーンは心温まるので良いのだが、父と子
が抱き合うとか涙ながら和解するような場面を期待していたが無かったなあ。元妻がジョージの所に毎日出入りするの
で再婚相手には非常に同情してしまったし、「BKT3」でクララ役を演じたメアリー・スティーンバージェンが娘の彼氏に
手を出す様など余分だし見たくなかったな・・・。
23.キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン CATCH ME IF YOU CAN (2002年米)<4.0>
[監督]スティーブン・スピルバーグ
[出演]レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス、クリストファー・ウォーケン、マーティン・シーン
[時間]141分
[内容]高校生のフランク・W・アバグネイルは尊敬する父が母と離婚すると聞き、ショックで衝動的に家を飛び出してしま
う。そして、生活のため偽造小切手の詐欺を始めるようになる。最初は銀行から換金してもらえなかったが、大手航空
会社のパイロットに成りすますと誰もがもののみごとに騙された。これに味をしめたフランクは小切手の偽造を繰り返し
巨額のお金を自在に手に入れるのだった。一方、エスカレートする犯行にFBI捜査官カール・ハンラティは、犯人逮捕
に燃える。フランクはアメリカ大陸の東から西へ、ついにはヨーロッパへ逃げていくのだが・・・
[寸評]実在の人物の話をスピルバーグ監督、レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクスの豪華な組み合わせで描いた作
品。まずオープニングの映像が異色で良い。ディズニー作品のようなノリだ。話はルパン三世と銭形警部を思わせる
詐欺師(レオ演)とFBI捜査官(トム演)のテンポの良い追いかけっこ劇が中心であるが、詐欺師の家族への思いもしっ
かり描かれている。「E.T」「未知との遭遇」では母子家庭を描いていて、母を想い、父を軽んじる傾向があったが、本
作品では父親を非常にたてている(父の親友と再婚してしまった母親に対して哀しみ・恨めしさを感じているぐらい)の
が印象的。しかし、実話であるというから驚くが、よく10代でパイロットや医師になりすまし、皆に信じさせる事が出来
るものだ。もっと笑うのは今やFBIで金融犯罪分析の権威となっているところだ。ルパン三世が銭形警部に困難な盗
難事件を見破る方法を分析して助言するようなものだ・・・。司法試験の繰り抜け方の答えにあるように、彼の頭の良
さは超天才的なのでしょう。SF・戦争・アクションではないコミカルなスピルバーグ作品も良いものです。
24.イン・ザ・ベッドルーム IN THE BEDROOM (2001年米)<3.0>
[監督]トッド・フィールド
[出演]トム・ウィルキンソン、シシー・スペイセク、ニック・スタール、マリサ・トメイ、ワイリアム・メイポーザー
[時間]131分
[内容]小さな町カムデンで開業医をしているマット・ファウラーと妻ルースのもとに夏休みを利用して一人息子フランクが
帰省している。彼はバイトに励む傍ら、近所に住む年上の女性ナタリーと恋に落ちていた。彼女は二児の母で暴力夫
のリチャードとは現在別居中。しかし、リチャードは離婚に応じず、ナタリーの家に時折やって来ては暴力を振るって
いた。ある日、フランクはナタリーの家で興奮したリチャードと遭遇し、言い争いの末、リチャードに拳銃で撃たれ命を落
としてしまう。突然の悲劇に見舞われたマットとルースは絶望感に打ちひしがれる。
[寸評]概要を大体分かっていながら観てしまったのだが、ひたすら悲しく重い内容の作品だ。但し、夫婦のあり方・家族
の幸福のあり方について考えさせてくれるので価値はあると思う。一見、幸福そうに見えて、実は気になる事がある。
そこを敢えて「なるようになるさ!ノープロブレム!」と考え、芽をあえて摘み取ろうとしなかったばかりに、とんでもな
い事になってしまった・・・。ましてや息子は大学生で子供でもないし・・・。息子の悲劇後、夫婦は過去の行動を含め、
双方でぶつかり合う。これは実際、非常に難しい問題だなあ。夫婦・親子で何でも本音で話し合える環境にしておくの
が一番だが恋路だけはどうにもならん場合もあるだろうし・・・。マットの最後にとった行動は、予想はしながらもビック
リしたが、自分でも絶対ああしたくなるかと思う。しかし、マットもルースも今後、更に重い荷物を抱えて人生を送らねば
ならない・・・。ああ、重たい内容だ・・・。教訓としてはナタリーのような不可解な女性には男性は気をつけないといけな
い!という事か。
25.金融破滅ニッポン 桃源郷の人々 (2002年日)<2.5>
[監督]三池崇史
[出演]哀川翔、佐野史郎、徳井優、キムラ緑子、室井滋
[時間]105分
[内容]中小企業の梅本印刷は、大手スーパー上底屋のチラシ印刷で生計を立てていた。しかし、ある朝、上底屋が倒
倒したという知らせを聞いて梅本印刷は大慌て。月末に支払われるはずの一千万円の手形が不渡りになれば、連鎖
倒産は免れない。社長の梅本省介は上底屋会長に”先代からのよしみ”と手形の決済を頼み込むがつれなく断られ
てしまう。一方、妻の房江は借金の連帯保証人である弟夫婦から責め立てられていた。絶望の淵に立たされた省介
は自殺を試みるが、そのタイミングでホームレスの人を助けるはめになり、鍬田という無職の男と、村長と呼ばれる
ホームレスのリーダーに出会う。
[寸評]あの屈指の傑作漫画「ナニワ金融道」の作者;青木雄二の原作で、連鎖倒産に見舞われる一家を救うために一肌
脱ぐ謎の男たちの活躍を描いたドラマである。青木雄二氏もちゃっかり出演している。話は色々な面で出来すぎ・作
りすぎという感じで決して面白いとは言い難いが、青木節がそれなりににじみでている。彼の金融等に関するエッセイ
をよく読むのだが、彼はマルクス信望者で、「桃源郷」は彼にとっての理想の環境なのかもしれない。最近読んだ
ビートたけし氏の著作に「欲張りにならず、地べたを這ってでも生き抜く気概でいけばいいじゃないか」という印象的な
記述があったが、本作品を観ながら、その記述内容が何度も頭をかすめた。
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