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11.ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
THE LORD OF THE RING; THE TWO TOWERS (2002年米・ニュージーランド)<5.0>
[監督]ピーター・ジャクソン
[出演]イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、リブ・タイラー、ヴィゴ・モーテンセン、ショーン・アスティン
[時間]179分
[内容]前作の第1部では指輪を滅びの山の亀裂に捨てるため、9人の仲間が結成されて旅に出たが、途中で魔法使い
のガンダルフが地底に落ち、後半にはボロビアが命を落とし、メリーとピピンはオークにさらわれてしまった。今回の
第2部は旅の仲間は3つに分かれた状態で旅を続ける。フロドとサムは指輪を狙って後を付けてきたゴラム(指輪の元
所有者)を道案内させるように仕向け、モルハードを目指す。メリーとピピンは何とかオークの手から逃れたが、木の妖
精達の世界へ迷い込む。メリー達を救出すべく追走していたアラゴルン、レゴラス、ギムリは白の魔法使いとして蘇っ
たガンダルフと再会し、サルマンの呪いに苦しめられているローハン国へ向かう・・・
[寸評]待望の第2部。当日(2/15)公開の「戦場のピアニスト」を観に行くか本作品の先行上映を観るか迷ったが、娯楽要
素が高くて間違いなく楽しめる本作品を少しでも早く観たいという気持ちが勝り、先行上映で鑑賞(席も良い位置が確
保できた)した。言うまでもないが、壮大な美しい光景・最先端技術を駆使した映像・冒頭から最後まで釘付けになる
話の展開は凄い。この3部作は3作品で一つの物語なのだが、時間にして合計約9時間の内、第2部までで6時間を占
める。本当に6時間の間、テンションを少しも落とさず突っ走る展開は圧巻で、よくも面白さをこれだけ持続できるもの
だと感銘する。宣伝コピーの「第1部は序章でしかなかった」というのは、正にその通りである。第2部では旅の仲間の
個性が結構上手く浮き彫りにされてくる。第1部では只の同行者(やっかい者?)にすぎなかったメリーとピピンもたくま
しさを見せ、最後には大きな役割を果たすし、フロドと同行するサムがまた非常に人間味があって良い男なんだな。
アラゴルン、レゴラス、ギムリは実は目茶苦茶強い。アラゴルンは相変わらず格好良く、彼等のエピソードが本作品の
主流であるので完全に主役のフロドを食ってしまっている。後半1時間の戦闘シーンは見せてくれる。SWエピソード2の
クローン兵等が登場する大戦闘シーンに比べて断然リアリティがある。唯一残念だったのが、第1部を観てお気に入り
女優の一人となったリブ・テイラーの出番が少なかった事かな。余談だがゴラムの顔つきは失礼ながら「少林サッカ
ー」の最年長の兄弟子を思い出してしまい、笑ってしまった。ゴラムの最後の長いつぶやきが今後のキーポイントか?
ともかく早く来年の第3部が観たいし、本作品のDVDの発売も待ち遠しい。また2種類に分けて発売されるのかな。そう
したら結局、特典満載版の方を購入してしまいそうだ。あと本作品もアカデミー賞の作品賞を含め6部門にノミネートさ
れたが、いきなり第2部で最優秀作品賞を獲得する事は厳しいだろうな。
12.戦場のピアニスト THE PIANIST (2002年英・仏・独・ポーランド・オランダ)<4.5>
[監督]ロマン・ポランスキー
[出演]エイドリアン・ブロディ、トーマス・クレッチマン、フランク・フィンレイ、エミリア・フォックス
[時間]148分
[内容]1939年。ナチスがポーランドに侵攻した時、シュピルマンはワルシャワの放送局で演奏するピアニストだった。ワル
シャワ陥落後、ユダヤ人はゲットーと呼ばれる居住区に移され、家族と一緒に移ったシュピルマンはゲットー内のカフェ
でピアノ弾きの仕事を得る。しかし、飢えや無差別殺人・虐待に脅える日々を強いられる。やがて何十万人ものユダヤ
人が(二度と生きて帰れない)収容所へ移送され出すが、シュピルマンは移送列車に乗る直前、知人によって引き離さ
れ(助けられ)、収容所行きを免れる。家族の中で唯一助かった彼は更に種々の試練を切り抜け、ついにゲットーを脱
出するが・・・
[寸評]ユダヤ人迫害・虐殺を取り上げた作品で印象深いのは映画では「シンドラーのリスト」、漫画では「アドルフに告ぐ」
だった。この2作品も10年ぐらいご無沙汰しているので、本作品を観て久しぶりに”ユダヤ人迫害・虐殺の壮絶な歴史的
事実”を強烈に再認識させられた。それだけでも本作品を鑑賞する価値は十分ある。本当に「あっ!(そんな事するか)」
と小声を発するシーンが多い。虐待側の人間に対して「あんたら、将来ロクな事ないよ」と思いたくなる。何しろ本作品の
主人公は実在の人物だし、監督も自身の実体験を反映させている(種々の解説を読むと監督自身の人生も凄まじい)。
それゆえ本作品のあらゆる描写は、かなり真実味があるといえる。荒廃した建物・戦禍の光景は胸にしみいる。話の内
容はお涙頂戴もの、という感じでない。主人公のシュピルマンが一芸に秀でいる事が幸運となり、支援してくれる人々
のおかげもあって、粛々と生き延びていく姿を描いている。この生き延び方は「芸は身を助ける」、人柄、運という要因だ
けでは、とても片付けられない。”神のご加護”があるとしかいいようがない感じだ。ただシュピルマンが、家族が死の強
制収容所に送り込まれた時に、家族を思って嘆き悲しむ姿を見せなかったり、救ってくれたドイツ将校の行方を探す事に
冷めた態度をしていたのは不満だな。あれだけ強烈で驚愕な日々を送り続けば感覚が麻痺するのも分からないではな
いが・・・。本作品はアカデミー賞の作品賞を始めとする7部門にノミネートされている。テーマ的にはアカデミー好みとい
う感じもするが、ロード・オブ・ザ・リング以外の作品は未見ゆえ、最優秀作品賞を獲得できるかは何ともいえないな。
作品の中で演奏されたショパンのピアノ曲がしんみりと心に響いた。家に帰ったら早速、ショパンのバラードのCDを聴い
てしまったぞ。
13.泥棒成金 TO CATCH A THIEF (1954年米)<3.0>
[監督]アルフレッド・ヒッチコック
[出演]ケーリー・グラント、グレース・ケリー、ジェシー・ロイス・ランディス、ブリジッド・オーベール、シャルル・ヴァネル
[時間]106分
[内容]舞台は南フランス;リビエラの高級リゾート地。身軽に屋根を飛び歩く事から“猫”と異名をとっていたかつての宝石
泥棒のジョン・ロビーは、今は悠々自適に堅気の生活を送っていた。しかし、自分の手口そっくりの「怪盗」の登場で警察
から疑われ始め、誰が真似ているのか探すはめになる。昔の仲間を訪ねる内に、富豪の美貌な娘と知り合い、やがて
愛し合うようになるが・・・
[寸評]本作品を観る契機は何といっても「裏窓」に出演していた美しいグレース・ケリーがお目当て。相変わらずの美しさで
視覚的には満足できた。但し、内容的には、もう少し偽者=真犯人とロビーとの駆け引きを上手く描写するなどして、ひと
ひねりしてほしかったな。冒頭から2/3辺りまでが、どうも単調で軽い感じがした。私は本作品の真犯人を最後まで思い
違いしていた。時間が終わりに近づいてくるにつれ、あの人が真犯人なのだろうが、どう締めるのかな?と思っていたら
何だそういう事か?という感じでヒッチコック監督にしてやられました。(というより単純に私の先入観による誤り?)
ヒッチコックの作品は有名なものから観ているが、作品数が非常に多い。未見で関心のある作品が幾つかあるので徐々
に観ていく事にしよう。
14.耳に残るは君の歌声 TTE MAN WHO CRIED (2000年英・仏)<3.0>
[監督]サリー・ポッター
[出演]クリスティーナ・リッチ、ジョニー・デップ、ケイト・ブランシェット、ジョン・タートゥーロ
[時間]97分
[内容]1927年のロシア。貧しい村に住むユダヤの少女フィゲレは母を亡くし父と祖母と暮らしていたが、父はゆくゆくは娘を
呼び寄せると胸に誓い、少しでも生活を楽にするため、単身での渡米を決意する。しかし、やがて村を焼き払われ、祖母
を失ったフィゲレは英国へと流れ着き、スージーと名付けられキリスト教の家庭に預けられる。言葉が通じず孤立する
スージーはある日、ジプシーの一団を目にしたとき、その口から美しい歌声を発した。10年後、成長したスージーは父
を探す旅に出る。スージーは旅費を稼ぐためパリのミュージック・ホールでコーラス・ガールとして働くことになるが…。
[寸評]「スリーピー・ホロウ」のクリスティーナ・リッチとジョニー・デップが出演している事から興味を持ち拝見。先般観た
「戦場のピアニスト」のテーマである”ナチによるユダヤ人迫害”が本作品も関係している。無知ゆえに驚いたのはロシア
においてもユダヤ人の迫害が行われていたという事実だ。内容としては、前半の幼少時代の父との別れ→村を焼き払
われ、英国へ漂流→英国での苦難の時代は結構、お涙モードだったが、10年後のクリスティーナ・リッチになってからの
物語が何となくイマヒトツ盛り上がらなかったような感じがする。クリスティーナ・リッチもジョニー・デップも話し言葉はそん
なに多くなく、表情で何か訴えようとしている。ケイト・ブランシェットは話しまくっていただけに、もう少し言葉が多いと話も
分かりやすくなったかもしれない。”父を探そう、父に会いたい”という強い一念が、恋する人が出現したら、意志薄弱にな
ってしまう感じがしたな。娘を持つ父親の立場としては辛いものだが、そんなものかな・・。最終的には父と再会を果たし
たが、「感動も中途半端なり」という感じか。
15.猟奇的な彼女 MY SASSY GIRL (2001年韓)<4.5>
[監督]クァク・ジョヨン
[出演]チョン・ジヒョン、チャ・テヒョン、キム・インムン、ソン・オクスク、ハン・ジンヒ
[時間]122分
[内容]性格の優しい大学生のキョヌは夜の地下鉄ホームで美しい“彼女”と出会う。でもその時“彼女”は泥酔状態でホー
ムに落ちかけるところをキョヌが救った。更に彼女は乗客の頭に嘔吐して車中で倒れてしまう。“彼女の彼氏”と周囲か
ら誤解されたキョヌは仕方なく介抱してホテルへ運ぶ。ところがそこに警官がやってきてキョヌは留置場で一晩を過ご
すという踏んだり蹴ったり状態。翌朝、昨夜の記憶のない“彼女”は怒ってキョヌを電話で呼び出した上、詰問するのだ
った。しかし、これを契機に、そのルックスとは裏腹にワイルドでしかも凶暴な“彼女”にキョヌは振り回されるようにな
る。キョヌにとっては刺激的な日々の始まりだったのだが…。
[寸評]「猟奇的な彼女」とは超キュートなルックスとは裏腹に過激で凶暴、突拍子もない行動で男を振り回し、そのくせ無
謀なまでに正義感が強い”変わっているけどかっこいい女の子”をいう。残虐な殺人犯とかいう意味では決してない。本
作品はここ近年で観た韓国映画の中ではかなり面白いと思う。出会いから交際を始める前半戦、ヒロインの家庭生活
や秘められた過去が見え始め、二人が別れるまでの後半戦、その後を描く延長戦という3部構成になっている。笑える
ところが幾つかあり、その中で時折ホロっとさせてくれ、最後は思わず拍手したくなる終わり方で爽快な気分になる。冒
頭のシーンからしっかりつながっているオチなんだよな。ちょっと話が上手過ぎる感もするが・・・。チョン・ジヒョン演じる
ヒロインが何とも魅力的だ。自分が彼氏だったら怖くてしょうがないが、援交を行っている会社員を居酒屋で罵倒したり、
マナーの悪い子供を叱責したり、正義感が強くて、ここぞという時に頼りになる事!なかなか最近では正義感を振りか
ざす事がかえって逆手になる事が多い風潮の中で、ヒロインのあの”七変化の表情”は良かった。彼氏を演じるチャ・テ
ヒョンが私の中学までの同級生のM君に非常に雰囲気が似ていた事もあり、好感を持って観られた。本当に限りなくイ
イ奴という感じだ。最後に出てきた格言は肝に命じるべきか。「運命は自ら努力する事によって、良い方向に導いてくれ
る」。
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