喪家の狗(そうかのいぬ) |
意味:やせ衰えて元気のない人のたとえ。喪中の家の飼い犬が、悲しみや葬式の忙しさのために、えさをもらえず、やせ衰えてしまったようすから、見る影もなくやつれているさま。 |
孔子(こうし)が鄭におもむいたとき、弟子たちとはぐれてしまった。孔子は一人で城郭の東門にたたずんでいた。すると、鄭の国のある人が子貢(しこう)に言った。
「東の門にいた人は、額が堯(ぎょう)に似ており、うなじは皋陶(こうよう)のようで、肩は子産(しさん)のようであるが、腰から下は禹(う)よりも三寸短かった。疲れ切ったさまは喪中の家の犬のようだった」
子貢はありのままを孔子に話した。孔子は大笑いして言った。
「容貌などは、とるに足らぬことだが、喪家の犬に似ているとは、全くそのとおり、そのとおり」
【史記・孔子世家】
※子貢・・・孔子の弟子。
※堯・・・伝説上の聖天子。五帝の一人。後世、舜(しゅん)とともに理想の天子とされた。
※皋陶・・・伝説上の聖天子舜の時代の司法長官。伝説上の公正無私の司法官。
※子産・・・春秋時代の鄭の名宰相。
※禹・・・夏王朝の始祖。治水に成功した。