愛知県碧南市 知られざる「藤の花」の咲く場所を紹介 良い香りを独占する贅沢
<いつのまにか生えてきた藤の花 もったいないと藤だなをつくり 見事な花を咲かせているが> 大浜下地区の熊野大神社、西の鳥居近くに藤棚がある。鬱蒼と生い茂り、日光も通さない程、真っ暗。 長く垂れ下がった藤の花は妖艶な香りを放ち、魔法の森にでも迷い込んだような雰囲気をかもし出す。 近所に住む人から聞いた。この藤の花、長い間、松に絡まり自生していたらしく、それでは勿体ないと誰かが藤棚を作ったとの話。 かつて砂浜だったこの地に、どういう経緯で藤の花がやって来たのかは謎。不思議な藤の花なのである。
<新しく出来た公園には藤の回廊とも言うべき長い藤だな まだまだ垂れ下がる藤の花は短いけれど 今後が楽しみ> 蜆川河口近く、かつて畑一面だった場所は、住宅地へと変わり、いくつかの公園が出来た。 そのうちの1つ、岬公園には長さ20メートル程、幅1.5メートル程の藤の回廊とも言うべき藤棚がある。 藤棚の下には、等間隔にベンチが作られており、落ち着いて藤の花を楽しめるようになっている。 眼前はネギ畑になっていて、視界を遮るものは何もない気持ちよさ。まだまだ若く、立派とは言えないが今後楽しみな藤の花である。
碧南市で「藤の花」といえば「広籐園」の名が挙がる。文政3年(1820)頃の時代に「小田廣作」なる人物が藤棚をつくったことに始まる。 1000立方メートルの敷地に咲く藤の花は、「広の長藤(ひろのながふじ)」と称され、その特有のツルの長さが人気を呼んだ。 また甘い香りのする「だるま藤」もあり、訪れる人を喜ばせている。 毎年4月下旬より5月上旬まで「広籐園・藤まつり」が開催され、期間中には夜間において妖しげな紫光で「夜の藤」を楽しむ趣向が試みられている。 特定日には「お茶会」も催され、昔ながらの風雅な愉しみの一つとなっている。 まつり期間中は臨時駐車場も用意される。また「くるくるバス」バス停がすぐ前にあり、アクセスも容易である。 暖かい春の陽気、藤棚の下で過ごすのも贅沢な一日である。
< text • photo by heboto >