愛知県碧南市 昭和20年代の匂い伝える駅舎 名鉄三河線「北新川駅」を訪ねる

新川東部へようこそ!

北新川駅(きたしんかわえき)

「岡島兵作」が身銭を切って設置した停留所が後に北新川駅となっていく

<先見の明、ここにあり。反対案上がるなか、岡島兵作は行動した。予想に反し、大盛況となり「北新川駅」は誕生する。新川の玄関口として計画された新川町駅は無人となり北新川駅が2005年夏までの91年、駅員常駐の駅として存在したことは、なんとも皮肉である> 御鍬神社南の道を北へ向かう。二つ目の信号を越えた辺りからパチンコ屋、スナックと駅前の雑多な雰囲気が漂い始めてくる。 大きな地図看板が見える場所、それが名古屋鉄道三河線「北新川駅」である。新川の玄関である新川町駅のモダンなデザインとは違い、北新川駅は平屋建ての田舎の駅といった風情。 この北新川駅は、三河線計画当初は設置される予定はなかった。新川町長を務めた「岡島兵作」が、この地の鉄道への需要を見出し、改札業務を岡島個人で行う事を条件に停留所設置の許可を貰う。 開業後、予想に反して大盛況となり、停留所から正規の駅「北新川駅」となった。 開業以来、ずっと駅員常駐の駅として頑張ってきたが、平成17年(2005)年夏に無人駅となり、寂しい駅となった。

<北新川駅で転回すべきか?一方通行路を行けば、もう戻れない。「開かずの踏切」にイライラと気持ちが焦る。北新川駅の北東にある踏切は、運転者の度量を計り知るバロメータか> 「待てい、待てい、電車様が通りなさる」と、毒虫のような色をした棒が先を塞ぎ、けたたましく鳴る警報音。 それまで通行を許可していた青信号が、一斉に赤へと変わる。 北新川駅の北東にある踏切は、駅前から来る一方通行路から高浜市・田戸へ抜ける道と新川銀座通りから来る道とが交差する地点。 変則的な曲がりをする道の交差と駅近くの踏切が集まる理由から、この踏切は「開かずの踏切」となる。 実を言えば、踏切は開いているのだが、信号が意地悪で、電車の通行を挟む度に仕切直しという形で青信号となる順番を変える。 特に南へ下り、新川銀座通り方面へ向かう場合などは、かなり待たされる事となるのである。

ヘボト自画像ヘボトの「如是我聞(にょぜがもん)」

「自転車預かり所の立像」

北新川駅の自転車預かり所入口に奇妙な立像がある。まるで門番のように整然とした姿勢で立っている。ツル科の植物に覆われて一見、正体不明だが、よく見ると立像の彫刻である事が分かる。 材質はモルタルか、細部を観察すると女性であることが判明する。「なぜにこの場所に?」と疑念を抱き、辺りを見回す。 自転車預かり所である建物、木枠のガラス窓に目が留まる。長い年月の埃に曇るガラスの向こうに少年の後頭部が見えた。 微動だにしない後頭部は、生身の人間では有り得ない、美しいカーブを持つ。 新川という街は、元来から人々の間に芸術を楽しむ素性がある。面白い発見の出来る街なのである。

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