愛知県碧南市 名刹「貞照院」に棲む静寂の番人 その顔を見た者は驚愕の…

碧南で悟る 空即是色の世界

幾何学猫 (きかがくねこ)

静寂に包まれる貞照院境内 なにものかに見張られている視線に冷や汗

本堂の階段にいる猫

<静寂の境内に不穏な空気をもたらす者は許さず。知られざる「貞照院」の番人。その顔を見たものは、恐れのあまり動けなくなる。何をするでもなくジッとこちらを凝視する視線に耐えられるか> 碧南市の観光案内にも必ず名があがる「貞照院」。応永年間(1394~1428)に造られ、もとは吉良氏の役所門であったという茅葺きの山門を潜れば、外界の喧噪とは無縁の静寂に包まれた境内が広がる。 全くゴミの落ちていない清潔な地面。あるべき所にあるべきものがあり、無駄という言葉は存在しない。美しく静かな世界、足音をたてる事さえ ためらう。この貞照院の秩序を犯すものあれば、裁きを行うべく番人現れる。一匹の白黒猫。だが、その顔を一度見れば、誰しもがたじろぐ。 幾つもの正三角形が折り重なり、左右対称の造形。眼・鼻・口もまた三角形に位置する。人は完璧な存在を恐れる。その猫は何もしない。 ただジッと無生物的な視線でこちらを見てる。その視線に耐えられなくなるのだ。

ヘボト自画像ヘボトの「有相無相(うそうむそう)」

縁の下、小さく見える穴

「縁の下の入口」

貞照院の番人、幾何学猫はどこからやってくるのか? 私は見てしまった。 本堂向かって右手、上がり縁に小さな石造物がある。その奥に視線をやると、縁側の下、暗闇の中に30センチ四方の穴。 木枠でキチンと型どりがしてある。その暗闇の穴から、ヌッと幾何学猫が顔を出していたのだ。 おそらく私が山門を通った時点で、監視を続けていたと思う。 昔、庫裡の縁の下には「ガマ(蛙)」が棲んでいて、客人に菓子が出されると縁の下からドンと突き上げ、机上の菓子を転がしたという。 どうやら今では幾何学猫がその役目を担っているようだ。 葉の落ちる音さえ聞こえるほどの心が澄む貞照院。この美しき世界を守る幾何学猫は必ずどこかにいる。 そしてあなたの行動のみならず、あなたの心の内をじっと見ている。

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