安易なバスイコライザによる20Hz再生挑戦
「あっと驚く安易なバスイコライザ作成計画」が私の予想以上に素晴らしい成果を収めたのですが、そうなると「スーパースワン」が据えてある、メインリスニングルームのつもりだった2階寝室をどうにかせねば、となります。「スーパースワン」は長岡鉄男氏の生涯の傑作で、勿論いいところもあります。何年かぶりで繋いだLPプレーヤで1950年代のジャズを鳴らすと、なにせその何年か前というのが安物システムコンポでの音ですから、その記憶と比べると雲泥の差で良いのです。しかし、私のコレクションの中心であるクラシックでは、ピアノはまだしも、声楽と弦楽器ではバスイコライザ付き「長男」に全面的に負けているように思えます。「長男」をもう1セットでもいいくらいなのですが、どうせならもう一回り大きいスピーカーを、最初からバスイコライザ前提で設計して、20Hz再生に挑戦しよう!という模様を同時進行でお伝えするページです。
1.ユニット選定(03.02.09)
ウーファは、「長男」よりは大きくて、Qts 、Fs とも低いもの、という基準で探してみました。
フォステクスの FW168N 、FW208N というところが
Qts の低さで際立っていますが、どうも疑わしいのでパス。FW208N
の振動板質量=40g というのは異常に大きな値で、その割には
Fs = 29Hz はそう低くもなく、その組み合わせで Qes
= 0.21 とするにはBL積が驚異的に高くないといけないのですが、そこまでの磁気回路とも見えず、晩年の長岡先生がフォステクス発表値よりQが高いのではないかと感じておられたこともあり、つまり私にはうさんくさいのです。FW168N
の Qes = 0.17 も同様です。公表されているインピーダンスカーブの目盛りがあいまいで、検算しようにも読み取りができないというのも、うさんくささを拡大します。
#こういうところがマニア心を冷えさせるということが分かってないのかなぁ、もう。
「長男」で使われている SEAS には、17cm 以上でもそこそこ低 Qts のものがありますが、14cmほど低 Qts ではないし、全体に Fs があまり低くないので、一から作る場合の選択としては今ひとつ、です。
Scan-Speak では、私の師匠筋の近年の一番人気は 15W/8530 (15cmユニット)、もう1サイズ上なら 18W/8545 という感じですが、もう一つ 18W/8546-00 という超低 Qts 、低 Fs のユニットがあります。8545 より少し軽い振動板、にもかかわらず低い Fs 、その結果として低い Qts と大きな Vas 、というのは全部つじつまが合っています。勿論インピーダンスカーブも容易に読み取ることが出来、発表されている特性値で検算しても(大体)ちゃんと合います。黄色い振動板はケブラー入り、周波数特性を見る限り、8545 より気持ち低い周波数から高域の暴れが始まっているようですが、その分低い周波数で切ればよさそうです。本当にピストンモーションと言えるのは 600Hz くらいまでで、それ以上の帯域では「素材の音」が乗るのでしょうが、2kHz 以下ならまずまずいけそうです。「長男」のがポリプロピレンなので、もっと硬い素材のものを使ってみたい、でも SEAS の金属コーンの高域共振を処理するのは大変そうだし、さほど低 Qts のユニットがないし、という思いからも、ケブラー入りのコーンの低 Qts ユニット、いかにも良さそうではないですか。で、音を聞かずにこれに決まり。万一余程気に入らないとしても、600Hz から上を受け持たせるミッド(どんなミッドだ?)を導入すればいいだけのこと、と自分に言い聞かせます。
トゥイータは、フェイ師匠の「無難」とのお勧めに従って、ソフトドームの Scan-Speak: D2905-9700-00 です。「長男」のトゥイータも十分素晴らしいと思ったのですが、諸先輩のサイトを拝見するとそれより1クラス上での定番らしいです。磁性流体無しで機械制動は不足気味ですが、しかし Fs が低いのが少しでもクロスを下げたい 18W/8546 との組み合わせでは重要になります。この辺は後から分かってきたことではありますが。
・・・定評あるユニットの組み合わせですから、「聴いてみてのお楽しみ」。
2.ネットワーク検討(03.02.09)
バスイコライザを勉強する中で、ユニットのインピーダンスや、振動と駆動電圧との位相回転が、スピーカーの諸元から求められることを理解したので、これをネットワークに応用すればより精度の高い検討が出来るはず、と考えて検討を着手しました。それで色々やってみて、結果の検算ができないかというわけで、Katsuraのスピーカー設計の「2wayスピーカー シミュレータ」を使ってみました。随分前から存在は知っていたものの、これまではEXCEL 上で複素数を駆使した巨大な表計算に圧倒されるだけだったのが、今回自分で色々やったものですから、私がこれまで考えてきたこと、これから考えるであろうことがこのシミュレータでとっくに実現されていることが徐々に分かってきました。位相回転やら何やらを我流ででも計算したことのある人でないと容易には使いこなせないだろうと思いますが、機能面では強くお勧めです。
で、元々は自前のワークシートで検討していた訳ですが、ここではより多くの要素が考慮されているkatsuraさんのシミュレータでのシミュレーション結果=こちらの方がさらに情け容赦ない結果になる=を用いて、ユニットのインピーダンスを単純Rと見るだけではどの程度にうまくいかないのか、私の検討の経緯の中で説明します。
最初は、9700 の公称インピーダンスが 6Ωで、しかも
8546 より能率がやや高いので、1) 9700に直列に 2Ωを入れて、見かけ
8Ωにすると同時に軽く減衰させて能率をあわせる、2)その上で、2kHz
クロスの 12dB/oct、ハイパスもローパスも 4.7μF と
1.2mH で作り逆相接続とすれば、奇麗につながる・・と考えたのです。ユニットのインピーダンスを単純Rと見る私のネットワーク検討では逆相でマッ平らな合成特性になる、という計算結果が出ます。2kHz
ならトゥイータもウーファもインピーダンスがあまり上昇しておらず、周波数特性上も大体フラットなので、単純Rと前提のシミュレーション結果でフラットになるものならうまくいくのだろう、と考えていました。ところが、これが全然うまく行かないのです。
・ | ウーファの 1kHz 以下でのでこぼこは、ユニットの元々の特性をシミュレータに覚えこませたのが現れているだけですから問題ではなく、その先 2kHz 以下までは狙い通りなのですが、4kHz のものすごいピークが論外です。 |
・ | トゥイータは、10kHzと1kHzの2段折れになっていて、クロスを予定していた 2kHz でウーファのレベルより 4dB も下がりすぎになっています。 |
・ | この図では現れませんが、クロスを予定していた2kHz前後でウーファとトゥイータの位相は殆ど揃っています。しかしこのウーファのピークとトゥイータのレベルの下がりすぎでは、位相を議論するどころではありません。 |
トゥイータの減衰が変になるのは、500Hz にある Fs の影響で位相回転が既に始まっており、高域で妙にコンデンサがよく効いてしまうこと等によります。ウーファの4kHzは、元々振動板共振のピークになっているのですが、折悪しくそこにウーファのボイスコイルのインダクタンスとネットワークのコンデンサとが一種の共振を起こして出来た山が重なった結果、とんでもないピークになってしまいました。対策としては、トゥイータには並列の抵抗を入れるのが必須で、さらにコンデンサは大きめ、コイルは小さめ、ウーファにはインピーダンス補正が必須と考えました。
そこで次に考えたのが、トゥイータが 1Ωと 10Ωのアッテネ-タに
10μF と 1mH 、ウーファのインピーダンス補正が 8Ωと
10μF に 1.5mH と 6.8μF、という組み合わせです。
実はこれで行こうと考えていたこともあるのですが、
・ | ウーファに入れたインピーダンス補正が効いて、4kHzのピークは消えましたが、実はその一方で位相はさらに回転しており、クロスではトゥイータとの位相差が45度程度出来ています。 |
・ | トゥイータは、まだ少し2段折れです。 |
見れば見るほど、クロスが薄い割にトゥイータの低域カットもウーファの高域カットも不十分のような気がしてきました。
この段階までは、クロスでの両ユニットの位相を揃えての-6dB落ちのクロスを考えていたのですが、クロスで位相が揃わなくてもいい、と割り切りました。トゥイータが1Ωと10ΩのATTに15μFと0.5mH、ウーファのインピーダンス補正が4.7Ωと15μFで、
1mHと15μF、ユニットを単純Rと考えるシミュレーションでは、各々クロス付近が大きく盛り上がるはずの組み合わせですが、
なかなかのものです。
・ | クロスでの両ユニットの位相差は 90度近くあります。従って正相でも大体繋がるのですが、正相だと低域から高域にかけて 360度位相回転してしまうので、180度で済む逆相の方がまだまし、という判断です(上図も逆相)。 |
・ | 推奨クロスオーバー 2kHz のトゥイータを使っている割にはクロスが低いですが、振幅制限に対する厳しさでは、上記3ケース間では殆ど違いません。何れも大抵の 6dB/oct よりましなはずです。大体ウーファにはバスブーストで 20Hz を再生してもらおうというのですから、トゥイータにも応分の無茶はしてもらわないと釣り合いません。 |
・ | ウーファに対しては、指向性が悪化し始める 2kHz より手前の 1kHz から急降下で、3〜4kHz の高域共振のピークは殆ど押さえ込んでいるのですから、2way としては非常に恵まれた使われ方です。その分低い方でこき使いますが。 |
コイルの 0.5mH と 1mH は、フォステクス2wayを作る際に買って、今は余っています。合計6つ必要な 15μF ですが、フォステクス2wayに UΣと CM を2つずつ使っています・・・中途半端に太くて背の低いブックシェルフで使いにくく、新居に越しても開梱すら出来ない出番無しのフォステクス2way君です、ここは死して皮を残していただくことにしました。師匠達には評判のあまりよくないフォステクスのネットワーク部品ですが、これは徐々に考えていきます。
・・・ いかにも「らしく」頭でっかちに検討しましたが、「鳴らしてのお楽しみ」。
3.箱の設計(03.02.09)
あっと驚く・・・の末尾に書きましたように、18W/8546-00
で -3dB:20Hz を狙うなら単純計算で48Lの箱、ということになります。吸音材を入れることにより見かけの容積が大きく出来るので、さらに余裕があることになります。
全体のプロポーションは好き好きでしょうが、幾つか作った経験でいうと、音の良し悪し以前に
と思っています。 両サイドの板以外は全部220mm幅です。50mm幅の板による内部補強はもっとランダムに配置するつもりです。これで4×8の板から2台とってほとんど丁度、その余りからトゥイータバッフルを作ります。材料は評判のいいフィンランドバーチで、カットはこれも評判のいい木工室さんにお願いしました。当初21mm厚のつもりでしたが、原産国で製造中止とのこと、24mm厚では私が扱うには重くなり過ぎると思ったので(4×8で50kgになるらしい)18mm厚にしました。これで外寸体積70L、補強を無視した内容積51L、補強が3Lほどで、実内容積は丁度48Lくらいのはずです。まあこのくらい大きければ、1L2Lの差は誤差ですね。 ・・・ 質のいい合板ということですがどの程度カンカン響くのでしょう、「叩いてみてのお楽しみ」。 |
4.材料発注完了(03.02.15)
ユニット代はイーディオさんに、合板カット代は木工室さんに、それぞれ2月13日に振り込みました。
板取はこの通り。フィンランドバーチ合板は木目が短辺方向ということを一応意識しました。図面で一番下の幅120mmがトゥイータバッフルのつもりです。 合板+カット代は参考になるかもしれませんから公表してしまいますと、税・送料込みで t=24 なら \52,800、t=18 で \44,400、という見積もりをいただいており、後者でお願いしました。 ・・・「防磁長男」作成当時の、t=15 ラワン合板 3×6 半枚+直線カットのみ(徒歩でお持ち帰り)で \2,420 とは桁が違いますが、「仕上がりを見てのお楽しみ」 |
5.組み立て(03.04.26)
・ウーファ固定方法 いかにも剛性の高そうなフォステクスのダイカストフレームのユニットと比べると、18W/8546 はフレームの幅が狭く、しかもネジ穴がわずかφ3.5 しかないのです。フォステクスやSEASで使っていた木ネジは全く通りません。 まず近所のホームセンターに行ってみました。φ3.5に通るサイズの「木ネジ」だと、全部頭が皿で、フラットな18W/8546 のネジ穴には本当は合いません。タッピンネジというのは金属かプラスチックにねじ込むのが本来だったはずで、木ネジと比べると凹凸が少ないのと、首下長さが7mmしかなく、非常に不安です。さりとて、ボルト・ナットで止めようにも、爪付きナットも鬼目ナットもM4以上でしか置いておらず、M3では普通の六角ナットと、板ナットというごく薄いものしかありません。どれも安いものですから、木ネジとタッピンネジと六角ナット/十字穴ボルト(正しくは小ねじ、です)と、を買い込みました。 戦利品をズラリ並べて最初に考えたのは、正面からネジ穴位置にφ3くらいの穴をあけ、裏からボルトを立てると共にエポキシで固定し、植え込みボルト(スタッドボルト)にしてしまおう、という案でしたが、万一ミスった時にリカバリするのが大変と思って思いとどまりました。 結局実行に移したのはナットの固定です。まずネジ穴位置にあわせて穴を開けました。たまたま手持ちの工具にφ3が有ったのでこれで開けて、ボルトを通してゴシゴシこすって穴拡大とかやっていたのですが、結構あっけなく曲がってしまいます。もっといいものはないか、と東急ハンズにも行きましたが、やはり爪付きナット/鬼目ナットは有りません。ボルトで一番丈夫なのはキャップスクリューですが、これは首下が全ネジではないので精度が悪いと最後の最後でネジが通らなくなるのが怖くて避けて、ステンレスボルト(これも正しくは小ネジ?)のセットにしました。非磁性であることを評価したのではなく、ステンレスを転造加工すれば、ある程度以上の強度は必ず出るはずだからです。 ユニットを付けたままでナットを嵌めてみます。そこでナットの2面幅に合わせて合板を彫り込みます。これがムクの木材なら私の腕で溝を彫れる筈が無いのですが、合板ですから木目方向ならカッタ一つで彫っていけます。溝だけでも大体ナットが拘束できるようになってから、ユニットをボルトナットで固定した状態のままでナットの周りにエポキシを流しました。ボルトにエポキシが付いてしまったら再起不能になるかもしれない、と心配したのですが、そこで石鹸を塗ることを思いつきました。これが離型材となり、実際多少は垂れたのですが硬化後全く問題なく外すことが出来ました。 |
・ユニット裏の2枚重ねを接着
これを先にしたのはちょっとした失敗。接着は全部重石頼りです。 この工程も含め、組み立てから塗装の間、ナットにボルトは挿したままにしています。 写真がはっきりしませんが、接着前に2枚ともユニット穴の裏側は鋸と鑢を使って軽くRをつけています。これが結構大変でした。目の詰まったかなりしっかりした合板でした。(ここで3月30日頃と思われます) |
・天地表裏に補強桟が全部つきました。
ここでも固定は鉛インゴットを載せて待つだけです。抜き板も、同梱されていた全部を張っています。板取図では50×220の補強桟を32枚の指定だったのですが、37枚入っていたので、左右にそれぞれ18枚ずつ使うことにしました。 2枚重ねを先にしたせいで、直角が出なくなってしまい、後工程の角R付けの所で誤魔化さざるをえなくなっています。木工室さんの加工精度は非常に良いので、むしろ1枚だけで注意して接着する方が良かったようです。800mm もあるとさすがに反りゼロではありませんが、それより2枚重ねの方が遥かに邪魔になってしまいました。 |
・最初の側板の貼り付け
ちょっと反っていたので、両端だけで支えて(白い梱包材の下の板)丁度良かったのでそうしましたが、このあたりは現物合わせです。 角R付けで誤魔化すためにも、正面バッフルに対し側板が引っ込まない=正面バッフルを削らなくても滑らかにつながるようにする=ことを優先しました。(ここで4月14日前後) |
・手芸綿を入れました
補強桟も側板間の補強もランダムにしているのは見ていただけると思いますが、どうランダムにしたかはこの写真しか記録がありません・・・。 グラスウールは発癌性までは無いとしても、チクチクするだけでも嬉しくないので採用せず、どう考えても安心な手芸綿にしました。300グラムをふんわり入れて下部が一杯になります。側板固定後は出し入れできなくなりましたが、気にしないことにしています。 |
・ただいま塗装中
反対側の側板張り、角R取りのあたりは写真を取らずに進めてしまいました。 700円のミニ鉋でのR付けは大変でした。なかなか歯が真っ直ぐにならないし切れも悪いので、ウン十年ぶりに鉋研ぎに挑戦(包丁なら研いでました)。まあ、研がないよりは良かったのでしょう。腕が無いので一部平面側まで歯が入ってしまって、それをまた塗装工程で誤魔化そうとしていますが、世の中そう甘くは無い。 大量の鉋屑を片付けたのですが、また「との粉」で部屋はグチャグチャになっています。 ユニット取り付け部周りが未塗装なのが分かるでしょうか。これが4月24日頃の状態です。 |
6.ウーファ部木工完成(03.05.17)
もうこれ以上オイルステンと格闘しても仕方ないか、と見切りをつけて、水性ニスを塗り、一度塗りでも中々いい線行くではないの、と悦に入りかけて、ふとネジの回りが気になって8546を見てみたら・・・
ネジ頭ぎりぎりくらいまでしかフレームが無い! これではフレームの回りから白木が見えてしまう!
ニス塗る前なら大した問題ではなかったのですが、ニスを塗った上からのオイルステンはグチャグチャになります(のを過去の経験で知っていました)。部分的にサンドペーパーがけからやり直すにしても・・・。
乾いてからゆっくりやればいいのに、と思いつつ即やってしまいました。
#なによりこの性格が塗装に向いていない。
ペーパーでニスを落としてオイルステンをかけます。オイルステンがニス層の境界まで届いてしまうと、そこで黒く盛り上がります。2台中の1台目は、割と真面目にペーパーがけをして、若干ユニットの周りに黒い縁取りが出来ましたが、まあいいことにしました。
ところが、それで調子に乗ってペーパーをいい加減にかけた2台目は酷いことになりました。出来てしまった黒い固まりをペーパーで落とすとその下はほぼ白木、でそれにオイルステンをかけに行くとその外側でまた黒い固まり、で滅茶苦茶になってしまいました。
ここまでは十分予想される展開ですが、ここからが実は本論。さすがに諦めて、前面一面のやり直しに踏み切りました。なぜか手元に薄め液もあったので布につけてこするとニス層が徐々にですがきれいに取れます。出てきたのは着色完了面よりは白木に近い色でムラのある面です。
うまくオイルステンが載るのかな、と薄め液の臭いも抜けないうちに(この性格が塗装に向かない)、塗り始めてみると・・・最高の下地になっていたようです。非常に良く延びる分いきなり染まってしまうことは無いのですが、その場で重ね塗りが出来て徐々に濃くなります。下地のムラは残りましたが、他よりむしろましなくらいです。以上4月29日の塗装大騒動でした。
(既にトゥイータバッフルが仮で乗ってますが) ウーファ部木工の完成の姿です。 上:全景。左スピーカーが塗装をやり直した方。 右:塗装を中途半端に誤魔化した右スピーカー。
|
7.音出し(03.05.17)
ウーファ部木工が完成した後、十分に塗膜を落ち着かせて、5月10日にフルレンジで音出ししてみました。CDPとアンプは安物シスコン(ソニーのリバティ、上の写真参照)のものです。適当にモーツァルトのピアノ協奏曲を掛けてみたのですが、高音が足りないものの、しっかり鳴っていて、おもわず聴き続けてしまいました。箱はそれなりに振動していますが、仕方ない範囲だと思います。2〜4kHzのピークが音のざらつきになっているようにも思いましたが、メーカー発表のF特を見て想像していた程ではありません。
5月11日にトゥイータバッフルの接着だけ済ませて、5月13日にはネットワークもステレオ分を組み立ててで鳴らせるようになりました。
まだ仮配線で、見た目左右で大分違いますが、どちらも12dB/octで逆相接続の同じ回路です。
トゥイータには
15μF・・・フォステクスのUΣ=白くて大きな筒状コンデンサ
0.5mH・・・フォステクス=小さい方のコイル
アッテネータとして1Ωと10Ω・・・酸化金属皮膜抵抗3W=赤茶色の抵抗(メーカー不詳)ウーファには
1mH・・・フォステクス
15μF・・・フォステクスのCM=黒いコンデンサ(左の写真ではスピーカ端子の陰になっている)
インピーダンス補正・・・黄色のフィルムコンデンサ(200V)10μF+4.7μF、及びセメント抵抗4.7Ω/5W
美観上家内が眉をひそめるだけでなく、素子選択で識者が眉をひそめそうですが、ともかくステレオで鳴るようになりました。「長男」とのユニットの実力差からして当然予想できる範囲なのかどうか、となると、経験の無い私には分かりませんが、凄くいいです。D2905/9700の威力でしょう、何を聴いても奇麗です。低音もバスイコライザなしで結構いけます。
手持ちではテストに最適のCD、「密林のポリフォニー イトゥリ森ピグミーの音楽」(JVC VICG-60334)も聴いてみました。鳥や虫の声が「長男」の上を行って奇麗です。声や楽器の音との分離が一段といいです。家内がふらっと寄ってきて、「すごくいいじゃない?」というくらいに良いです。
トラック3冒頭の雷は、イコライザ付き「長男」で家内が実物の雷と思い込んだところですが、補正無しではそこまでは行きません、が素質は十分あります。トラック4の虫の声は、マトリクススピーカで私が本気で部屋の中で虫が鳴いているかと後上方を振り返ったところですが、これもいい。音像の高さが非常によく出ている点では「長男」にも優ります。
8.ネットワークカバー作成(03.06.08)
工作場で塗装の時の台(実はCDを30枚くらい入れる棚)に載ったまま、安物シスコンにつながったまま、本題の「20Hz再生に挑戦!」からは遠ざかりっぱなしでイコライザなしのまま、CDをとっかえひっかえ聞き惚れていて、暫く手が止まっていたのですが、寝室用メインスピーカとするには美観も大切、というわけで、ファルカタ集製材でカバーを作成してトゥイータバッフルと合わせて塗装してみました。
写真写りが良すぎていて(ウーファの黄色が右だけ白飛びしてます)、実際はウーファ箱とは艶が違いすぎて、この時点ではまだまだです。その後塗装を全部はがしてやり直して大分奇麗になりましたが、画像にすると大差ありませんのでそのままにしています。形は、トゥイータバッフルの角R取りと共に非常にうまくいったと思ってます。下に敷いているのはフェルト、実は書道用の下敷きです。 それに先立ち、トゥイータのアッテネーションをパラ10Ωシリ1Ωから、もう少し下げたのも試そうと思って、まずシリーズの抵抗だけ2.2Ωに変えてみたのですが、どうもうまくいきません。この辺の抵抗は@35円の酸化金属皮膜抵抗を使っていますが、師匠からは「聴感だけで調整するには抵抗の質がもっと良くないと無理」とたしなめられました。使うほどに角が取れてきてハイ上がり感も気にならなくなってきたので、イコライザにけりをつけるまではパラ10Ωシリ1Ωのままで行きます。 |
9.Q値の測定(03.06.22)
なぜ&どうやって、インピーダンスカーブからQ値を求めるかは、長いですがこちらを御覧下さい。 これまではインピーダンスカーブを測るのに、20-20000Hz ログスイープの信号をMDに録音し、一方のchはそのままパソコンに、一方のchはアンプ→(スピーカー+1Ω)に回して、その1Ωの前後抵抗をパソコンに取り込み、FFT計算を波形全体分スキャンさせたものから計算していたのですが、 1)実際にスピーカーに掛かっている電圧を測れるよう、スピーカー+1Ωとパラに分圧回路信号を入れてそこから電圧信号を取るようにした、
これでスキャンすると、この図のような波形が出来ます。前回までこの波形にカーソルを合わせてdB値を読み取り、それから計算していたのですが、今回やってみると、Q値が想定外に高いと出ます。 |
まず、5秒間のスキャンなのがいけないかと思って、50秒間のスキャンもやってみましたが、インピーダンスカーブの計算結果はほぼ完全に重なり、これが原因ではないと分かりました。 次に、スイープ波形のある部分をそのままFFTした波形で、そのピーク周波数のインピーダンスを計算してみると、今度はスキャンから計算したものと微妙にずれが出ます。 スキャンさせた時には全区間での計算結果を平均化して先の図のような結果を出しているようです。ところが部分のFFT結果を見ると、ピークの上にも下にも山が見えます。インピーダンスピーク周波数では、本来の山が低くなるので、スキャンすることにより余分な信号が混ざると影響が大きく、ピークのインピーダンス値を本来よりも小さく読んでしまっていると考えました。 そこで、この図のような各部分のFFT結果でピーク周波数でのdB値を一つ一つ見る=手動ピークホールド?=ことにより再計算してみました。 |
この図では、ユニット単体を裸・縦置きにして測った結果、及び、箱に取り付けてネットワークのコイルを直列に入れて測った結果、を合わせて表示しています。いずれもスピーカーケーブル+1Ω基準抵抗、が直列につながった状態でのインピーダンスです。 裸単体の方は、Re=5.65Ω、fs=28.8Hz、Qms=1.7、Qes=0.35
メーカー発表値は、Re=5.5Ω、fs=22Hz、Qms=1.7、Qes=0.22
裸単体での結果と比べると、fcの上昇に比べて、Qmc、Qec の上昇がさらに大きすぎるのですが、箱の中では複雑なことが起きているのでしょう、結果は素直に受け止めた方がいいような気がしてきました。とするとトータルのQ=Qtc は 0.42 となり、68Hz と 20Hz とに折れ点を持つ低域特性が予想されることになります。68Hz に折れ点をもつシェービングフィルタを用意すればいいことになります。 |
10.完成!?(03.07.13)
当初はクリスキットのプリを使う予定だったのですが、後述の事情でクリスキット・プリのローブースト回路は「長男」のバスイコライズに回すことにしました。
これにより、PMA-390UとPMA-2000U、プリメインアンプ2つが使えることになったので、2つのアンプの間に「長男」で使っていたフィルタ回路(詳しくはこちら)を入れることにしました。 どちらのアンプを前段にするのがいいのか分かりませんが、今はPMA-390Uを前段に使っています・・・多分そのままでしょう。 写真の最下段がPMA-2000U、14型TVの下がPMA-390U、ラックの上にCD、DVD、LPのプレーヤを積み上げています。外側のスーパースワンはPMA-390Uから直接駆動できるようにしていますが、いずれ撤去するかもしれません。 フィルタは「長男」に合わせた、156Hzから持ち上げる設定で、新作に合わせるには持ち上げ周波数を半分弱まで下げるのが本当なのですが、そのまま使っても何故か特に気になりません。コンデンサを 1μF(持ち上げ周波数106Hz)に変えても余り違いが分かりません。今後ウーファが大ストロークで駆動されてエージングが進行し、Fsも下がるだろうと予想して、このまま行くことにしました。一番最初に 18w/8546-00 のカタログ値と箱の内容量で計算したフィルタの適正値でもあります。 |
11.試聴記(03.07.21)
スーパースワンと瞬時切替で聞き比べると、新作のスキャンスピーク 2way の方がハイが出ていると聴こえます。どちらかというとスーパ−スワンの方がハイが落ちているというよりちゃんとした音が出ていないように思えます。中音域ではスーパースワンに洞窟の中のような付帯音が付いて回るのが結構気になります。
イコライザなしのスキャンスピーク 2way では、ブルーノートのマイルスデイヴィスVol1 (LP)で低音不足のためにスーパースワンに負けるという判断だったのですが、イコライザを通して低音をちゃんと出すようにすれば、ハイ上がり感は相変わらずではあっても、高音の伸び、中音の分離、低音の張り、どこをとってもスキャンスピーク2wayの完勝です。比較的有利と思われたジャズですらこれですから、スーパースワンに勝ち目はありません。むしろオルガン曲の方が差は出にくいのですが、とにかく勝てる要素が見当たりません。
40Hz までは大体出ているはずのイコライザ付き「長男」に対して、スキャンスピーク 2way ではさらに1オクターブは下に伸ばしたつもりですが、この2つでは殆どの音楽CDでは低音に違いを感じません。FMfan特別編集「開拓者 長岡鉄男」(共同通信社)の付録CDの自衛隊の大砲発射音では違いが出たと思いますが、要は大抵の音楽CDでは 40Hz がせいぜいで、それ以上をスピーカーで頑張っても元々録音されていなければ差の出しようがない、ということらしいです。オルガンの足鍵盤音だと、息苦しさが出てくる「長男」より余裕があると感じますが、それ以外なら「長男」の低音で大体間に合っています。
ただ、低音を出している際の中音域の変調が「長男」では少し出ているようにも思えます。この辺りまでくると、「せっかく新しく作ったのだから低音側でも勝って欲しい」という願望込みで聴いているから だけ のことかもしれません。スキャンスピーク 2way とスーパースワンとなら聴感上の音量を揃えた状態での瞬時切替で聞き比べが出来ましたが、「長男」とは1Fと2Fにわかれたシステム間の比較になるので、細かい違いは思い込みでマスクされている可能性があります。
それでもなお自信を持って「長男」を明らかに上回ったと思えるのは高域です。声の奇麗さでスーパースワンを上回った「長男」の、そのまた上を行っています。
結論めいたことをまとめますと、低音を伸ばして20Hzに挑戦するというのは、私が音楽CD/DVDを再生して聴く分には過剰性能だったのだけれど、「長男」より優秀なユニットと丈夫な箱を投入したスキャンスピーク 2way は低音再生能力とは別の観点で「長男」より優秀なスピーカーに仕上がった、というところでしょうか。手間・費用・サイズのどれをとっても遥かにお手軽な「長男」の方が、投入資源に対するパフォーマンスという観点では優るでしょう。
12.トラブル発生 − 傾向と対策(04.03.22)
何時からおかしくなったのかは定かではありません。ある日なんとなく低音が十分に出てないような気がして、バランスつまみを左右回してみると・・・右のスピーカーから低音がさっぱり出ていません。
まず疑ったのがネットワーク回路、次がイコライザ回路ですが、どちらも見たところ異常ありません。ネットワークスルーでも低音が出ていないのでネットワークは関係無しでそれ以外の箇所ということになります。それでもスピーカー本体の異常とは夢にも思わなかったのですが、念のためアンプ出力を左右入れ替えたところ、それでも低音の出ないのは右、ということはスピーカー本体がおかしい!
振動板をそっと押してみると、±10mmはストロークできるはずなのに全然動きません。左はすいすい動きますからユニットの異常であることがはっきりしました。取り外して平置きにして確認すると、手前に出てくる方は自由に動きますが奥に引っ込む側に引っかかりがあります。少し力を入れて押すとグキッという手応えと共に動くようになりましたが、ボイスコイルが側面に触っているのでしょうか、ゴリゴリした感触があります。そのままゴリゴリさせているとその手応えは無くなっていきました。
その昔、今村さんがご自身の掲示板かどこかで、「振動板の支持系の対称性が狂った時には、それまでの取り付け位置から上下反対にして付けると良い」と書かれていたのを思い出して、そのとおりに付け直してみました。どうやら余分な引っかかりはなく動くようになったようです。
しかし、なぜこんなことになったのでしょう。気になったのはユニットを外した際の箱の中の臭気です。木工用ボンドからの遊離酢酸なのか、バーチ材からの「木酢」なのかは区別できませんが、かなり強い酢酸臭です。箱完成から塗装、ユニット取り付けまでにはかなり時間を置いたつもりでしたが、完全な密閉箱にケブラー振動板、ゴムのエッジ(サラウンド)のユニットの組み合わせだと、後から出てきた酢酸分の逃げ道がなかったのでしょう。
これが犯人だったかどうかは分かりませんが、支持系を構成する有機材料にも電気系にも良い筈がありません。酢酸の吸収策を考えました。一番いいのが海苔用の乾燥剤、紙入り生石灰です。これなら生石灰(酸化カルシウム)が消石灰(水酸化カルシウム)になる過程での吸水の他、生石灰でも消石灰でも酢酸と中和して酢酸カルシウムになることで酢酸分を吸収します。
安いもののはずだし、大量に買って入れてやろうと思ったのですが、売っているところが分かりません。Googleで調べても良く分かりません。近所のホームセンターに入っても、塩化カルシウム系の「水取りぞうさん」の類の乾燥剤は各種あるのですが、海苔用はありません。仕方がないので、海苔の缶の乾燥剤一つを供出してもらって、さらに万一酢酸カルシウムが潮解を起こして袋からにじみ出でもすると始末に悪いので吸水専用に塩化カルシウム系の乾燥剤(吸水箱)も突っ込みました。海苔の乾燥剤が一つなのでトラブルを起こした右スピーカーのみの処置です。今後しばらく(1〜2ヶ月)は片チャンネルに海苔の乾燥剤と吸水箱の響きの乗った音を楽しむことになります。(以上04.03.22記) (04.06.06追記)
気のせいか、音は良くなったような気がします。また、塗膜にべたべたした感触がわずかに残っていたのが落ち着いたような気もします。塗膜に閉じ込められて行き場を失っていた水分や酸分が箱の内側に抜けたのでしょうか?。密閉度の強い箱には乾燥剤は必需品かもしれません。 |
13.ウーファー換装(13.08.16)
時々は乾燥剤を交換しつつ、気持ちよく使っていましたが、2013年の春のどこかで、左の18W/8546が断線してしまいました。製造中止になって久しいので、新品でも中古でも入手は容易ではなさそうです。ただ、同じフレームを使っている18W/8545(K)はカタログに残っていて新品の入手も可能です。とはいうものの、本来のユニットではないものに今から定価を出すのも何なので、ヤフオクに出てくるのを待つことにしました。暫くして、ほぼ新品のままデッドストック状態だった8545Kが出品されたので、首尾よく落札、定価からは半額ほどで入手できました。
見た目は随分と地味になりました。ネットワークもバスイコライザ回路もそのまま流用した状態での音は普通に美音です。前の音の記憶など残っているはずも無く、どちらが良いかは分かりません。何となく弦楽四重奏曲しかまだ鳴らしていないので、低音補正の妥当性がどうこうという話にもなりません。その辺りについては、多少のことは気にせずに低音を気持ち程度に増やしておけばそれでいいだろう、くらいにまで、最近は悟ってしまいました。
断線した18W/8546です。外から見える編線のところでは断線は認められません。しかし、振動板を動かすとゴリゴリとした抵抗を手に感じますし、どういう向きに向けてもそれが止まりません。おそらくはボイスコイルの途中で断線して、めくれあがった切れ端がギャップ内で擦れているのでしょう。18W/8546は驚異的な低Fs・低Qtsのユニットでしたが、それを実現した支持系に無理があったのかもしれません。さらに想像をたくましくすれば、その辺りが8545がロングセラーになる一方で8546がディスコンになった理由なのかもしれません。
付.クリスキット・プリアンプのローブースト回路改造(03.06.29)(03.07.13)
この章は、アンプを自作するような詳しい方には「何やっているのだ」でしょうし、回路に詳しくない方には「何のことやら、さっぱり分からない」だと思いますが、私自身が今現在丁度その中間にいるということでご勘弁ください。クリスキットのローブースト回路の自分なりの理解を検証したのがこの章です。
前回はアンプとアンプの間にフィルタ回路を設けたのに代わって、今回はクリスキットのプリアンプのローブースト回路の改造を目論んでいました。 クリスキットのローブースト回路は図のようになっています。ローブーストSWをonすると、・帰還回路に 0.1μF と 100kΩ をパラにしたものが挿入され、・出力側のコンデンサが 0.1μF に小さくなります。 周波数の高い所では帰還回路の 0.1μF が短絡しているとみなせて、ゲインに変化なしとなります。周波数が下がってくると 0.1μF のインピーダンスが上がってくるので、帰還量が減る分ゲインが増えていきますが、10+100=110kΩ が帰還回路インピーダンスが上限となります。出力側コンデンサを小さくしているので、帰還回路インピーダンスよりむしろこちら側でローブースト量が頭打ちになる、という設計思想と思われます。 この回路では、出力側コンデンサの効果がパワーアンプの入力インピーダンスに全面的に依存してしまうはずなのが気になります。「まずこのプリアンプを作って、手持ちのプリメインアンプかパワーアンプに繋いで欲しい」という謳い文句の割には後段を選ぶプリアンプのように思われます。それはともかく、ペアのパワーアンプの入力インピーダンスは 47kΩ で、0.22μF との組み合わせで決まるカットオフ周波数が、1000/(2π・47・0.22) = 15.4Hz となるのなら、これはこれで妥当でしょう。 帰還回路の持ち上がり始め周波数は、1000/(2π・10・0.1) = 159Hz、持ち上がり終了周波数は、1000/(2π・110・0.1) = 14.5Hz、となりそうな気がします・・・が、帰還回路には他に色々な物がつながっていて一抹の不安が残るので実際に測ってみようというわけです。ローブーストonの際の 47kΩ と 0.1μF との組み合わせで決まるカットオフ周波数は、1000/(2π・47・0.1) = 33.9Hz のはずで、ここから 14.5Hz まではフラット、その先はゲインが落ちていく、はずです。 |
さて、実際どうなるか。将来クリスキット・プリのフィルタ回路を改造したものを繋ぐ相手は、PMA-2000Uを予定していますが、これは2階で現在使っていて、重量は20kgを超えます。デスクトップパソコンを2階に持っていくのも、このアンプを1階に下ろすのも面倒、となると、使えるのはシスコンのアンプになります。しかし、このアンプの入力インピーダンスが分かりません。 とりあえず、MDプレーヤー → クリスキットプリ → シスコンアンプ → インピーダンス測定キット、と繋いだ場合の特性を測り、500Hzでのゲインを0としてプロットすると、図の「ノーマル」の線になります。300Hz から -3dB/oct で落ちる、ちょっと問題外の特性になります。シスコンアンプの入力インピーダンスが 47kΩ より大分小さいようです。そのままでローブーストをonにすると、-3dB/oct で落ちかけてからまた上がる特性になります。33.9Hz で頭打ちになっている、と言われればそう見えなくもない、でしょうか。 これでは訳が分からないので、クリスキット・プリの出力側コンデンサの影響の極力排除を試みました。 |
私のクリスキットのアンプは、「ヘルパー」さんに作ってもらったもので、今回初めて中をのぞいてみました。信号基板は天板及び底板を開けるといじれます。 出力側コンデンサの両足に 6.8μF のフィルムコンデンサ(写真の白い巨大な奴)の両足を接触させ、ブーストの on/off にかかわらず追加コンデンサが効くように、2.2Ω(赤茶色の大ぶりな抵抗)を使って短絡させました。 この状態での特性が、先の図の「ノーマル+C」「ローブースト+C」です。「ノーマル+C」の方はほぼフラットになりましたし、「ローブースト+C」は、予想していたフィルタ特性(図の「計算値」)とほぼ一致しました。20Hz以下で少しずれますが、シスコンアンプが20Hz以下を伸ばしていないのでしょう。 ともかく、クリスキット・プリのローブースト回路は、回路の全貌を理解できないなりに理解できる所だけで予想した通りの動作をすることが分かりました。帰還回路に 0.1μF を入れた状態で、159Hz から持ち上がるのですから、これを新作のスキャンスピーク 2way に合った 68Hz に変えるには、159/68*0.1=0.233μF に変えればいいことになりますから、0.22μFに差し替えるのが一番簡単ということになります。出力側コンデンサでブースト量を抑えたくもないので、こちらも差し替えが必要になります。 ・・・・と一旦は考えていたのですが・・・・ 159Hzなら、密閉「長男」で丁度合っているではないか、と思い始めました。リビング用のアンプにリモコン無しでも構わないよ、と家内の了解も得られたので、結局クリスキットのプリ+メインで「長男」を駆動することにしました。 出力側コンデンサはオリジナルのままでは小さすぎるので改造要ですが、元々ついている2つのコンデンサを短絡させる最小限の改造を施しました。ローブーストSWを押しても押さなくても、出力側コンデンサが0.32μF、抵抗が
235kΩ となります。これだけならオリジナルに戻すのも容易です。勿論ローブーストSWを押していて丁度低域フラットのつもりです。
|