超いい加減なインピーダンス計測例
やってみれば実に簡単でした。これでハンダがもう少しうまければなぁ。しかし自作スピーカーの役に立つのか? さあ・・・。測ること自体を楽しんでしまいましたが、役立てるのには経験が要りそうです。
注意:
正しく行えば何ということはないのですが、誤って接続すればサウンドカードを壊す恐れがあります。もっといえば怪我や火災の恐れが全く無いとはいえません。試される場合はご自分でよく理解された上で自己責任でやってください。安全に関わる所はこの色で書いています。
「通向け」と言われてしまうような話題はこの色で書いています。細かい説明は鬱陶しいと思われる方は、この色を読み飛ばしてください。
要る物
6000円で出来てしまったスピーカー計測で使ったものはマイク以外必要です。
windowsパソコン
MDレコーダ・・・CD−RやDATも可
(プリメイン)アンプ
測定対象のスピーカー
CoolEdit2000・・・F特が測れるソフトウェアなら代用可能、のはず
MDとパソコンの接続ケーブル2本
*注意:バランス出力アンプは使えません。きっとどこかが壊れます。
さらに買出しで追加購入したもの・・・予備を含めてレジに並べたら、購入合計600円ほどになりました。使ったのはその半分以下のはず、大阪日本橋までの交通費の方が余程かかっています。抵抗の精度も気にせずテスターで測りもせず、というところが「超いい加減」たるところです。
セメント抵抗5Wで、1Ω、8Ω、32Ω
ターミナル2個・・・勿論フォステクスの削りだし、ではなくて、@50円
ピンケーブルの相手になるメス側
(本当は何と呼ぶのだろう?以下、仮に「ピンのメス側」と呼びます)
家にあったもの
1.25sqの2線コードの切れ端、約1m・・・メータ100円?
ターミナルをつける板・・・まさしく板切れ、です。
ピン−ピンケーブル、ハンダ、ハンダゴテ
七面倒くさい説明はうんざり、という方は、計測例に飛んでください
考え方
長岡先生の「設計術」には、「アンプとユニットの間に132Ωの抵抗を入れ、定電流駆動に近い形とし、裸のユニットの入力端子に現れる電圧をスペアナで測定する」とあります。全国の長岡派はこのデータを見慣れてきたわけですが、あえて逆らってみました。
「アンプとユニットの間に1Ωの抵抗を入れ、定電圧駆動に近い形とし、1Ωの両端に現れる電圧をスペアナで測定する」のです。
長岡式 アンプのプラス・・・132Ω・・(ここの電圧を見る)・・ユニット・・・アンプのマイナス(電圧の基準)
ここでの方式 アンプのプラス・・・ユニット・・(ここの電圧を見る)・・1Ω・・・アンプのマイナス(電圧の基準)
何故こうしたかというと、スピーカーをより普通に動かしたかったからです。
1Ω挟んだところで、スピーカーからみたら殆ど何も起こりません。うるさくいうとダンピングファクタが下がるわけですが、それを聴き分けられるかどうか、というところです。スイープとホワイトノイズだけでは違いは勿論分かりませんでした。132Ωでは入力が極端に減ります。普段から1W以上スピーカーに食わしている人はそんなに多くないと思いますが、さて、4Ωのスピーカーに1W食わせるには、直列につないだ132Ωに33W食わせる必要がある理屈です。アンプの出力電圧が68Vとなる計算で、そこいらのアンプでは全く無理な相談です。
1Ωをはさんで4Ωのスピーカーに1W食わせる場合なら、電流は0.5A、1Ωの抵抗前後の電圧が0.5V、LINE IN を名乗る端子なら問題なく扱えるはずの電圧です。低能率スピーカー&ハイパワー派は、より小さい抵抗を選択ください。
工作
1)板切れに穴をあけて、ターミナルを2個つけます。
2)コードの一端はアンプのスピーカー出力に入れるだけですので、被覆むきだけで構いませんが、私は棒端子を付けました。
3)コードのもう一端はピンのメス側をつけるのですが、この端子自体が1.25sqなどという太いコードが入るようになっていないので、プラスチックカバーの首元は惜しげも無く切り落とし(!)、コード2本が入るようにします。ハンダ付けも芯線が多すぎますから、適当に切ってショートさせないようハンダ付け、万一ここがショートしても、サウンドカードは壊れません。勿論白線を内側、黒線を外側につなぎます。
4)コードの中ほどで、まず2線共通でかぶっている被覆を取り、白線は切断します。アンプから来ている方の白線をターミナルの赤につなぎました(何故白ではないかというと、赤を買ってしまったからです)。ピンケーブルへいく方の白線と1Ωの一端をターミナルの黒につなぎます。黒線の被覆をむき、1Ωのもう一端をつなぎます。この1Ωがはずれてしまうと、アンプの出力電圧がそのままサウンドカードに加わるので、危ないのはこのケースでしょう。
・・・書いていても面倒になりますね。一応、自作スピーカーギャラリーにデジカメ画像を載せています
接続
「6000円で出来てしまった計測」の応用ですから、余り変わりません。変わっている所をイタリックにしました
1)パソコンのマニュアルでは付属スピーカーをつなぐことになっている、LINE OUTにミニプラグ−ピンプラグのケーブルのミニプラグ側を差込み、ピンプラグ側はMDレコーダの REC IN に、L,R 両chとも普通につなぎます。
2)パソコンの LINE IN にもう1本のケーブルを差し込みますが、MDレコーダのPLAY OUT につなぐのは L ch のみとします。 ケーブルの R ch 側は工作したメス側につなぎます。
注意:LINE IN の代わりに誤ってマイク端子や LINE OUT につなぐと壊す可能性大です。LINE IN につなぐ場合も過大入力には注意してください、とはいいながら私が自分のパソコンの LINE IN の絶対定格を知らないのですが。
3)普通のピンプラグ−ピンプラグのケーブル(アンプでもCDプレーヤでも必ず同梱されているアレです)の片ch分を使って、MDレコーダの PLAY OUT の R chとアンプのライン入力端子(CDでもAUXでも基本的には同じことです)の R ch とをつなぎます。
4)アンプのスピーカー出力の R ch に工作物のアンプ接続側コードをつなぎます。
5)スピーカーケーブルを工作物のターミナルにつなぎます。
音量コントロールの設定
パソコンの入出力選択およびレベル設定をwindows98の音量コントロール画面で
やります。
・再生側はF特計測同様、というより同じMDがそのまま使えます。
・録音側はライン入力のみを選択します。録音レベルとバランスは・・・適当にあわせます。大きすぎず小さすぎずの録音レベルであれば適当でいいのです。私の場合は結果的にレベルは前のまま、バランスはほぼ中央、で収まりました。
計測方法
MDを再生させて、CoolEdit で録音するところは、「6000円で出来てしまったスピーカー計測」と全く同様です。但し後処理が必要。
まず、ターミナルに基準となる8Ωをつけて、ログスイープで測定しました。
当然のように、20〜20kHzまでほぼ等間隔です。水色の基準信号に対し赤の出力信号が16.4dB低い、と読み取りました。8Ω⇔16.4dBの関係から、差のdB値を読み取れば、その周波数での負荷のインピーダンスが分かります、などという自信は無いので、33Ωでもやってみました。わざわざお見せする必要のない、ただの等間隔線で、差は27.8dB、もうこの段階でばっちりです。
一応解説:
8Ωの基準抵抗でスピーカ信号と基準信号の差を約16.4dBと読み取ったのがスタートです。
これは8Ωに検出用抵抗1Ωを加えた9Ωに対する値ですから
16.4 = 20 * log9 + A (Aはその時のボリューム位置、入力レベル等で決まる定数)とおけるので、A=2.7、と決められます。よって、スピーカー信号と基準信号の差を
x (dB) とすると、インピーダンス Z は
Z = 10^(( x + 2.7 ) / 20 ) - 1
8Ωと33Ωの基準抵抗で見直しても殆ど合います。実際には、8Ωと33Ωの両方の顔が立つように2.7を決めました。
なお、アンプのF特やケーブルのロスを考えれば、水色にはMDの出力ではなくアンプの出力電圧、それもスピーカーにぎりぎり近いところの電圧を持ってくるべきですが、そうすると多分 LINE IN には過大電圧となるので分圧回路を組まねばならず、「超いい加減」の看板から離れますのでやめました。
ところで、、、
誰かが「方舟」のインピーダンス計測回路で純抵抗を測った結果を発表しても良さそうなものですが?? 2,4,8,16,32,64Ωくらいを用意して、どのラインに当っていたのか、教えてもらえれば、長岡先生の発表したスペアナ写真からインピーダンスが求められるのですが。それがなんの役に立つかって?? それが趣味というものです!!
さて本番。
まず、以前からのお客様にはF特測定でおなじみの2WAY君↓
違和感あると思いますが、赤色ラインが水色ラインから下に離れるほどインピーダンス大、つまり赤色ラインの谷に見える所がインピーダンスの山に当ります。CoolEdit上でカーソルを走らせれば、ピークやディップを読み取り可能です。長岡先生の表記に従うと、f02=24Hzで49Ω、fd=45Hzで4.8Ω、f01=59Hzで43Ω。長岡先生のBS-68(長岡鉄男のオリジナル・スピーカー設計術2、音楽の友社)より、少しだけ大ぶりなブックシェルフで、f02、fd、f01 の値はBS−68に非常に近くなっています。ただ、「オーディオクラフトマガジン2」の井上良治氏によるとf01側のピークの方がちょっと高いくらいのがいいのだそうで。BS−68はそのようになっています。まあ殆ど同じ高さの山だからいいことにしましょう。それ以外は何の異常も無さそうです。
Excelを使って、読み取りデシベル値からインピーダンスを求めた実際の計算例は、imp_data.xls をダウンロードいただくと御覧いただけます。というほど大した事はしていませんが。
次にまともそうなところから、スーパースワンES↓
20Hz以下は無視して、低い方から4つ山(谷に見える所を山と呼びます!)が見えます。33.5Hz(37Ω)、73Hz(34Ω)、120Hz(48Ω)、166Hz(57Ω)、です。インピーダンスが低いのは48Hz(8.3Ω)、440Hz付近(10Ω)というところ。200〜2000Hzにかけて微妙にデコボコしていますが、それが悪いのか?分かりません。底板にはウレタン敷いていますが、ヘッド内のウレタンは全部取って吸音材なしになっているせいかもしれません。ところで、スーパースワンの製作記事を見ていないので、本家のデータを知らないのですが、こんなものですか? どなたか教えてくださいませんでしょうか。
次にFE88ES×3のマトリックスバックロードホーン(BH)、モノラル接続
ですから公称インピーダンスは12Ωになるはずのものです↓
41Hz(28Ω)、94Hz(40Ω)、149Hz(72Ω)、188Hz(80Ω)、です。この出方はスーパーフラミンゴに似ているように見えます。長岡先生のスペアナ写真からは166Hz(21Ω)に相当する谷があるとも無いとも読み取れません。
このスピーカーのヘッドには吸音材を入れています。440Hz以上が滑らかなのはそのせいかもしれません。ヘッドからスロートの設計は長岡流に忠実ですが、開口はスロートの11.5倍、スーパーレア並まで広げています。
最後に私めの記念すべき自作スピーカー第1号機、
FE168ΣのスロートなしBHに
FT17H+1μFをのせたもの(設計図)、↓
35Hz(42Ω)、83Hz(41Ω)、141Hz(28Ω)、205Hz(14Ω)、293Hz(14Ω)、まだありますね。スーパースワンと比べると、低域でピークが高く、高域に向かって徐々に低くなる、とはいいながら、なかなか滑らかな線に移行しない、といった傾向が読み取れます。440Hz以上ではむしろ滑らか、これも吸音材をあちこち使っている効果でしょうか。それとも、平行面が両側板及びそれにまた平行な音道補強板のみ、なので定在波が出にくいのでしょうか。
空気室のあるBHでは、空気室で決まるf0に相当するところで高い山を作り、それ以上ではスロートによる高音遮断効果で山が出なくなる、とすれば、話は合うように思います。しかし、それだけのためにスロートが必要なのかしら?
このスピーカーは外見はD−1(長岡鉄男のスピーカー工作全図面集1、音楽の友社)風なのですが、設計のスタートはF−62(長岡鉄男のオリジナル・スピーカー設計術2、音楽の友社)です。
オリジナルが2.5mの直管に近い音道なのを、約2mのエクスポネンシャルに近いコニカルホーン連続としたもので、開口は20×40cmまで広げています。インピーダンスの谷が一々ひと桁Ωまで落ちているところはF−62に近いのですが、全体の趣は違っているように思います。
本に載っているスペアナ写真からは、F−62のインピーダンスの山は、最低域を別にして64Hz、125Hz、200Hz、と読めます。鋭いピークです。それに対して、私のスピーカーでは2mの音道ですから、85Hzの整数倍にピークになるかと思って見てみると、確かに83Hzは居ますが、鋭いピークにはなっておらず、すぐ横の77Hz(39Ω)と複合ピークになっているようにも見えます。ピークの周波数が整数倍で並んでもいません。ホーンに近い形状とした結果、開口端があいまいになっているようです。この「あいまいな開口端」は、ホーンの本質の一つではないか、と何となく思っているのですが。
・・・以上から、スロートなしBHがいいとか悪いとか、直管の共鳴管に比べてどうだ、とかいう話が出来るものでしょうか???