第15巻:ベートーベン・メンデルスゾーン他歌曲編曲集 お勧め度:C

副題が"Songs without words"、これはメンデルスゾーンの"無言歌"の英訳そのもの。そのメンデルスゾーンも出てきますが、非常にコメントの難しいアルバムです。集中して聴こうとすると、2枚組み62トラックという細切れが気力の持続を妨げます。これは誰の何と言う曲だったっけ、と気になって、逆に神経が音楽から離れてしまいます。が、これをBGMと割り切ると、健やかなメロディとスタインウェイの響きが何とも心地よい。

聞き流すと割り切れば、第6巻の「オペラ編曲集その1」より平均点は上です。ただし、全62トラック、一定水準は保っていても目玉がない。第6巻だと、「ファウスト・ワルツ」「ノルマの回想」といった目玉があって、その目玉を聴こうとしてCDを手にするので、この第15巻の方を聞く頻度の方が少なくなってしまいます・・・というお勧め度C。

1枚目がまずベートーベンの21曲、op.46の3曲、op.48の6曲、op.98の6曲、ゲーテの詩による歌曲6曲です。ベートーベンが結構沢山歌曲を残していたことを初めて認識しました。次にメンデルスゾーンの7曲。ベートーベンから移るところは、おやっと思います。1枚目の最後はデッサウの3曲。2枚目がフランツの13曲(14トラック)、アントン・ルビンシュタインの2曲、ロベルト・シューマンの7曲、クララ・シューマンの3曲、残り再びロベルト・シューマンの4曲というべきか5曲と言うべきか、2個1があります。全部水準以下ではないけれど突出もせず、なのでしょう。リストの世界ではありませんが、第13巻のように100%バッハ、というわけでもないので、こだわりなく聞き流せます。これ以上の個別コメントはちょっと書けません。

 

第16巻: Bunte Reihe お勧め度:D

第1巻のワルツ集が最初からSに決まっていたのと同じく、このCDが最低ランクになることも決まっていました。後は最低ランクをDにするかEまで作るかだけの問題でした。いままで3回このCDを聴きとおそうとして3回とも挫折したのを、今この駄文を書きながら聞き流すことでようやく最後まで行けそうです。聞き流すと決めてかかると、たまには楽しげな音が後ろから聞こえてこないわけでもない、というところでしょうか。第15巻と比べても音楽が数段落ちます。リストのいい所は、、、うーん、ところどころ現れているとは思いますが、何も退屈に耐えて捜し求めずとも、もっといい曲が他にいくらでもあります。

Ferdinand David はメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲の初演者として(のみ)名が残っている人です。その人の作品 "Bunte Reihe" は、バイオリンとピアノのための24の全調性のためのキャラクターピース(曲順はバッハの平均率集と同じ)で、スケルツォ、マズルカ、マ−チ、ボレロ・・・といったタイトルが付いています。ピアノ屋には気が付きにくい所ですが、バイオリンで24の調性をやるというのは非常識極まりないことだそうで、この原曲もまずその技術的困難もあって、バイオリニストから見捨てられたようです。それをリストがピアノ一台用に編曲したのですが、原曲が元々技術的困難だけでなく実にどうでもいいような曲だったようです。ピアノだけにしたところでやはり全くどうでもいい曲が延々70分以上続きます。

この全集が半ば近くまで発売されたころに同じく全巻収集中だった知人に会った際も、どちらから切り出すともなく、その時点でのワーストCDとしてこの「ぶんて、らいへ」の名前が挙がった、という大変なシロモノです。しかしハワードさん最後までまじめに弾いているのですね。ピアノという楽器の特性上、調性に関する問題が無い代わりに、バイオリンでは容易な同音連打がピアノでは大変になったりする、と説明しているそのハワード自身の解説からも、このアルバムだけは仕方がないというあきらめが何となく伝わってきます。

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