西三河地方では、土人形のことを “ おぼこ ” と呼んでひな祭りに、行商の人から毎年
ひとつ、ふたつと買い足してい、きおひなさまと、その周りに飾っていたそうです。
華やかな十二単のひな人形、白・黒・黄色などのまねき猫、かわいい金太郎、
くまどりが立派な歌舞伎人形、福を呼んでくれる福助やお福さん。
色艶やかで表情豊かな三河土人形です。
 
 
   (Happy ママの感想)
 
この地に移り住んだころから “ おぼこ ” の存在に興味があり長年
想い続けてきたテーマです。古い人形たちはほとんどが個人の持ち物らしく、
なかなかお目にかかれなっかたのですが、今回180点近くの
(古い物は50点くらいでしょうか)の土人形に出会えて大感激。
高山八郎氏にもお会いして来ました。とても魅力的なかたですよ〜。

 
 

昔、愛知県三河地方の農家では農閑期の冬の間に土人形を作って、
三月のひな祭りが近づくと行商の人が売り歩いたそうです。
“ おぼこ ” と呼ばれ、男びな、女びな、歌舞伎人形など、鮮やかな
彩色を施されて、手づくりの暖かみがあり、物の少なかった時代
大変喜ばれていたそうです。

 

安土桃山時代に、京都伏見の深草で作られたのが
始まりで、江戸時代・天保ころに田原藩の農家の内職として
伝わったとそうです。また、江戸時代の末期〜明治の初めころ
大浜村(愛知県碧南市・・・一説では棚尾村)出身の旅役者・
亀島久八氏が、ふるさと大浜に帰って歌舞伎人形を制作したと
伝えられています。この地は有名な三州瓦の生産地で土人形を
作るための良質の粘土が豊富でした。また鬼瓦職人である
“ 鬼板師 ” が原型を作っていたとも言われています。
明治大正年間には最盛期でしたけれど、雛人形が豪華な
段飾りに変わって行き、また子供の遊び道具も
時代とともに高度になり、土人形は徐々に衰退していきました。

 
 
旭土人形(平七土人形)高山市太郎 棚尾土人形 鈴木嘉平 他 


大浜土人形 勧進帳(禰宜田 徹) 大浜土人形(碧南市)


西尾土人形(西尾市) 西尾の犬(銘:西尾の狆(チン)


乙川土人形(半田市) 常滑土人形(常滑市)


豊川張子(小坂井町) 国府土人形(豊橋市) 寅


豊橋土人形(豊橋市) 吉良の赤馬


起土人形(尾西市) 戸部の蛙


竜泉寺の串馬(名古屋市) 洲崎神社の五色鈴


大口土人形(丹羽郡) 犬山土人形(犬山市)


古知野土人形(江南市)  名古屋土人形(名古屋市)


瀬戸土人形(瀬戸市)「軍人」 
 
 
土人形に出会った時に、その素朴さに魅了されました。
彩色は原色で華やかですが、作りは粗く、顔の書き込みも素朴で
とても身近に感じています。雛段に飾るよりも、触れて遊び、
土と彩色の暖かさに癒され、次の世代まで愛されたいと感じます。
豪華な段飾りのお雛様も・・・
検索してみると、現在は制作をしている窯はほとんど現存していませんが
日本各地で、多くの作者が作品を残しているようです。

 
  ● 中部地方
旭土人形(愛知県碧南市) 碧南土人形(愛知県碧南市)
棚尾土人形(愛知県碧南市) 新川土人形(愛知県碧南市)
大浜土人形(愛知県碧南市) 乙川土人形(愛知県半田市)
西尾土人形(愛知県西尾市) 岩津土人形(愛知県岡崎市)
豊橋土人形(愛知県豊橋市) 名古屋土人形(愛知県名古屋市)
犬山土人形(愛知県犬山市) 起土人形(愛知県一宮市)
大口土人形(愛知県丹羽郡) 扶桑土人形(愛知県丹羽郡)
浅井土人形(愛知県丹羽郡) 久保一色土人形(愛知県丹羽郡)
広見土人形(岐阜県可児市) 姫土人形(岐阜県可児市)
市原(瑞浪)土人形(岐阜県瑞浪市)
  ● 東北地方
堤土人形(宮城県仙台市) 根子町土人形(福島県福島市)
花巻土人形(岩手県花巻市) 気仙高田土人形(岩手県陸前高田市)
八橋土人形(秋田県秋田市) 中山土人形(秋田県横手市)
相良土人形(山形県米沢市) 寺沢土人形(山形県米沢市)
成島土人形(山形県米沢市) 下小菅土人形(山形県米沢市)
鶴岡土人形(山形県鶴岡市) 大宝寺土人形(山形県鶴岡市周辺)
酒田土人形(山形県酒田市) 堤土人形(山形県東根市)
花山土人形(山形県東根市) 猪之沢土人形(山形県東根市)
堤土人形(山形県東根市) 与六土人形(山形県山形市)
  ● 信越・北陸
三条土人形(新潟県三条市) 村上(大浜)土人形(新潟県岩船郡)
今町土人形(新潟県見附市) 栃尾土人形(新潟県栃尾市)
八幡土人形(新潟県佐渡市) 富山土人形(富山県富山市)
金沢土人形(石川県金沢市) 武生土人形(福井県武生市)
  ● 関東
芝原土人形(千葉県長南町)
  ● 近畿地方
伏見人形(京都府東山区) 小幡土人形(滋賀県東近江市)
稲畑土人形(兵庫県氷上郡) 葛畑土人形(兵庫県養父郡)
丹波土人形(兵庫県北部各所)
  ● 中国・四国地方
堀越土人形(鳥取県八頭町) 倉吉泥人形(鳥取県倉吉市)
出雲土人形(島根県出雲市) 出雲今市土人形(島根県出雲市)
長浜土人形(島根県浜田市) 松山天神(愛媛県松山市)
三次(十日市)土人形(広島県三次市)
  ● 九州地方
古型博多土人形(福岡県福岡市) 弓野土人形(佐賀県武雄市)
帖佐土人形(鹿児島県姶良郡)
 
 
 
旭土人形、大浜土人形、棚尾土人形、新川土人形など
産地に昔の愛知県碧海郡の村の名前がついていました。
碧南の土人形の特色として、歌舞伎物や武者物が多いのは、娯楽の少ない中、
大浜村を中心としたこの一帯は、村歌舞伎や村芝居への関心が強い地域で
あったことに起因しています。歌舞伎物や武者物の土人形が大いに好まれた
ことが、土人形作りの興隆に一役買ったことが想像できる。
 
 旭土人形
平七土人形。高山市太郎氏が明治24年、豊橋の杉浦幸治郎氏に師事。
その後、旭村平七に窯を築き現在四男の高山八郎氏が跡を継いでいます。
人形は赤や緑の鮮やかな色彩で明るいものです。







まねき猫 高山市太郎・作
 
 大浜土人形
明治25年ころ、美野部四市により制作。
歌舞伎を題材にしたものが主流で、色彩が明るく華やか。
勧進帳(禰宜田 徹)
 棚尾土人形
土人形の発祥の地。この辺りでは最も早く、江戸時代後期から始まり、
明治元年ころ亀島久八が作りだし、作者を多数輩出しました。
その後明治15年ころから、鈴木市太郎氏が型を使っての制作を
始めました。彫りが深く、色彩も渋くて重厚でした。
 松と娘:鈴木市太郎  牡丹持ち娘:杉浦松太郎
 新川土人形
新川土人形は亀島初太郎が明治中期に生産をはじめかました。
碧南市内の各地で土人形作りが盛んに行われた背景には、瓦作りに
使われる良質な粘土が豊富にあったことと、人形の型を制作できる
優秀な三州瓦の鬼板師が多くいたことだそうです。
 「鬼瓦」と「鬼師」

「鬼瓦」は、単に「鬼」と呼ばれることもあり、瓦葺きの屋根の端などに
設置される装飾性のある
瓦の総称です。
建物の先端に配される飾りとして、古くから社寺、仏閣、民家の屋根先に
取り付けられ、厄災除けと装飾の役割を果たしてきました。
その鬼瓦を作る職人は昔から、「鬼師(おにし)」や「鬼板師(おにいたし)」
と呼ばれ、他の瓦職人とは別格視されてきました。

その文化と技術は白鳳、天平時代に渡来したと言われ、江戸時代に入り、
宮大工集団の彫刻技術と鬼瓦づくりの技法が融合して現在の鬼瓦に繋がる
流派が生まれました。鬼瓦づくりの技術を継承している技術者「鬼師」は、
現在、全国でわずか80人ほどしかおりません。
 
 
 
 
 人形の形をした原型に土を張り付け、乾燥したら二つに割って枠を作る。
 枠の中に土を詰めて、原型と同じかたちの人形をつくる。
 乾燥して、素焼きをする。
 塗料で色をつけて完成。
 
 日本各地の土人形の画像は参考としてネットからお借りしました