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三河湾アサリ不漁　潮干狩り中止も　漁獲量全国一の愛知

　【関謙次】全国一のアサリ漁獲量を誇る愛知県で、主な漁場の三河湾内の潮干狩りに異変が起きている。アサリが不漁で、開催中止に追い込まれた漁場も出ている。原因ははっきりせず、関係者は気をもんでいる。

　毎春、潮干狩り客が集まる西尾市の佐久島。島への船乗り場には「潮干狩りは４月１４日に終了しました」との紙が張られている。

　西三河漁協佐久島支所によると、３月１５日に解禁し、６月２３日まで続ける予定だった。しかし、解禁直後から採れる量が少なく、「アサリがいない」と苦情が増え、打ち切った。終了を早めたことはあったが、解禁後１カ月というのは初めてだ。担当者は「原因が分からず、対処しようがない」と戸惑う。

　日間賀島（南知多町）では今年、開催が見送られた。日間賀島漁協によると、解禁前の試し掘りでアサリが少ないことがわかったため。来年以降のアサリを確保するねらいもあり、３月中旬に中止を決めた。

　３月１６日に解禁した伊川津、白谷（いずれも田原市）でも、予定の６月２３日までの開催は難しい見通し。渥美漁協の朽木勇夫組合長は「本当は中止したいが、楽しみにしているお客さんのために開いている。ただ、採り尽くされたらどうしようもない」。

　一方、同じ三河湾でも、小中山（田原市）や竹島（蒲郡市）などは例年通りの量が採れている。また、美浜町観光協会によると、知多半島の伊勢湾側では例年よりもアサリは多いという。

　県水産試験場の蒲原聡主任研究員は「原因は一つではなく特定できない」としつつ、次の理由を挙げる。

　三河湾のアサリ漁場のほとんどは、豊川河口部の六条潟（豊橋市）で約１センチの大きさの稚貝を採取し、各漁場に放流している。その六条潟で２年前の夏、海中の酸素が不足する水域ができる「苦潮（にがしお）」が発生し、稚貝が全滅した。

　稚貝が漁獲できる大きさ（２・５〜３センチ）に育つには２年かかる。この苦潮の発生の前に稚貝を採取できた漁場とそうでない漁場があり、できなかった漁場はその年の放流ができず、今年の不漁につながった。

　また、この冬は風の強い日が多く、強い波で地中から掘り出されたアサリが、再びもぐれずに死んでしまったのではないかと考えられるという。

　六条潟の苦潮は５年に２、３度の頻度。蒲原さんは「厳しい状況の漁場は潮干狩りを中止するなど、適切に資源を管理していけば大きな被害は防げる」と話している。

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　〈愛知県のアサリ漁獲量〉国の統計によると、最近１０年間のアサリ漁獲量は全国的に減少傾向だが、愛知県では安定。２００３年は全国の漁獲量約３万８千トンのうち、愛知は約９千トンで全体の２４％。０４年に全体の３割を超えて全国トップになり、その座を守っている。０８年以降、干潟の減少などにより全国で漁獲量が大きく減ったが、愛知は１万７千トン前後を保ち、昨年の漁獲量は約１万８千トンで、全体の６５％を占めた。

　愛知では、三河湾に六条潟をはじめ一色（西尾市）、福江（田原市）などで天然の干潟が残り、湾口部が狭いことから、海中で生まれたアサリの幼生が外海に流れずに着底できる好条件がある。さらに、関係者が干潟の再生や稚貝の移植に取り組んできた成果も出ている可能性がある。