世界遺産級 | 交響曲 | ||||||||||||||||||||||||||||
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商品番号:456 580−2 | フィリップス ステレオ | ||||||||||||||||||||||||||||
解説 | |||||||||||||||||||||||||||||
冒頭、低弦のppの響きによって、この録音の良好な空気感が高く評価できる。序奏部でまず現れるファゴットのソロは、この高品質の録音によって、極めて透明感のある空間の中で明瞭な音像で定位する。 音楽の進行の中で、時折聴こえる指揮者の吐息にドキッとしてしまうが、こうした感覚に陥るのもこの録音のリアリティに拠るものである。 1楽章の主題はオーケストラの力量以上に美しく響き、やがて展開部を迎える。展開部直前の静寂さは、バスクラリネットのppppppによって極められる。このp×6は、譜面上はファゴットで奏することになっているが、音のつながりが悪くなるという理由から、一般的にはバスクラリネットで演奏される。透き通るようなホールの響きの中でクラリネットが最弱音を聴かせる。この極限の音を、この録音はみごとに捉えている。 展開部は、一転してフルオーケストラの大迫力を楽しむことができる。金管の音は決して濁ることはなく、良質なホールトーンの中で、激しく高揚していく。ダイナミックレンジも十分に広く、機械的は抑制はほとんど無いといっていい。しかし、展開部終盤のfffの音像に若干の腰の弱さがあり、低域の重量感に欠けることが惜しまれる。 2楽章の流麗さや3楽章の熱気など、この録音が伝える情報量はとても多い。録音は楽器の音をリアルに捉えるだけではないということを教えてくれる。 1893年、チャイコフスキーの「悲愴」を世界初演したオーケストラが、このマリインスキー劇場管弦楽団であり、その歴史的な事実をかみ締めながら聴くと、なおこの録音と演奏の価値を感じることが出来るだろう。 ライヴセッションではなく、いわゆるスタジオ録音である。「一期一会の入魂の演奏」が売りのライヴだが、テイクをつぎはぎしたライヴなど意味はない。ましてや、客席の気配を削除するために返って生々しさを失ってしまうことになる。歴史的な文化遺産として残したいのであれば、録音の環境としては、やはりスタジオ録音であることが望ましい。 |
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世界遺産級 |