文化財級 交響曲
作曲家 ペーター・イリイチ・チャイコフスキー
曲名 交響曲第4番ヘ短調 ほか
指揮 エフゲニー・ムラヴィンスキー
演奏 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
録音 1960.9 ロンドン・ウェンブレイ・タウン・ホール
プロデューサー カールハインツ・シュナイダー
エンジニア Harald Baudis
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 8.6
商品番号:00289 477 5911 グラモフォン ステレオ 
解説
1960年に、ヨーロッパツアーの合間を縫って行なわれた後期交響曲集の録音である。4番がロンドンで、5番と6番がムジーク・フェラインザールでセッションが行なわれた。ムラヴィンスキーのメジャーレーベル録音として、もう40年以上語られてきた名盤中の名盤である。
録音は、場所の違いからくる質感や響きの違いは当然感じられるが、エンジニアの方向性にブレは無く、録音評価としてはいずれも同等の内容だと言える。イギリスで録られた4番が幾分華やかで硬質の響きがするが、弦楽器の艶やかな表現は、むしろこのオーケストラの特質を捉えたものだとも言える。金管楽器も鋭くスピード感のある音像で捉えられており、こうした雰囲気の違いは確認できるだろう。
40年以上の時の経過はまったくリスクにはなっておらず、音質の劣化や時代の古さから来る荒さや硬さはほとんど意識されることはない。オーディオソースとして、充分なクオリティを現在も保っている。ppは、はっと息を呑む静寂さと緊張感が空間を支配し、引き締まったオーケストラサウンドが持続している。一方、ffはロシアブラスの華やかで突き抜けるような響きが炸裂する。弦セクションを左右一杯に広げたステレオ感は、当時の常套手段であったことは確かだが、音像が平面的になることは無く、各楽器や各セクションが有機的に結びつき、アンサンブルのつながりがしなやかに流れていく。ステージ上の空気感と共に、奏者の息遣いまでも明瞭に捉えた高品質のリアリティに仕上がっている。
ステージレイアウトも各楽器が曖昧にならず、見通しよく分離しながら適性に配置されている。また、音質こそ時代を感じさせはするものの、ダイナミックレンジはアナログフォーマットを目一杯生かした伸びやかで重心の低い安定した音像を保っている。
グラモフォンレーベルにとっても、時代を超えた優秀録音として、記念碑的な完成度を成し得ている。
文化財級