世界遺産級 協奏曲
作曲家 ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
曲名 ピアノ協奏曲第1番
指揮 キリル・コンドラシン
演奏 交響楽団
独奏 ヴァン・クライバーン
録音 1958.5.30  カーネギー・ホール
プロデューサー ジョン・ファイファー
エンジニア ジョン・クロフォード
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 8.4
商品番号:JM−XR24004 ビクター(RCA) ステレオ XRCD24
解説
このアルバムは、録音の良し悪しを問う以前に、クラシックアルバムの膨大なリリースの中において、50年間名盤として語り継がれてきた不朽の名演であることも忘れてはならない。ヴァン・クライバーンの実質的なデビューアルバムであるということ、第1回チャイコフスキー・コンクールの優勝記念アルバムだということがまず挙げられるが、それだけで半世紀も名盤として評価を受けて来られたわけではない。
クライバーンは、1958年4月13日、ソビエトの威信をかけて開催された第1回チャイコフスキー・コンクールにおいて、
本家の演奏者を差し置いて見事優勝を手にしたのである(この時期の米ソ関係を考えれば、ここでの審査は極めてフェアーなものであったということになる。審査員はショスタコーヴィチ、リヒテル、ギレリスなど)。身長190センチでとても大きな手をしているクライヴァーンは、ラフマニノフに傾倒し、難曲「第3番」を事も無げに弾ききってしまったそうである。アメリカ人による初の国際コンクール優勝という記念碑的な出来事と、彼の紛れも無い高度な演奏テクニック、そして、その輝かしい演奏を余す所なく捉えたエンジニアたちの結晶によって、このアルバムが歴史に残ることになったのである。
録音は、凱旋帰国のコンサートの最中に行なわれた。当初マンハッタンセンターにてセッションが組まれていたが、クライヴァーン自身が音響に納得せず、急遽カーネギー・ホールでのセッションに切り替えられた。しかし、物理的な問題により、録音は5月29日の深夜から30日の早朝に掛けてという、まさに徹夜での作業となったのである。指揮者のコンドラシンは、コンクールでの伴奏を務めており、クライヴァーンからの要請でアメリカに渡ったと言われている。
録音内容は、ロシアの原始的なテイストが見事に表現されており、その土臭さの中で、クライヴァーンのピアノは美しく華やかな音像で捉えられている。録音の時代相応のリスクとして、オーケストラのTuttiで、ffに音の濁りや圧迫感が散見されるが、ピアノの音色は徹底的に美しく瑞々しいクオリティを保っている。また、ピアノの実存感は、オーケストラのステレオイメージとも合致しており、左右の広がりを強調せずに自然な実物大の音像に仕上がっている。
評価項目の一つ一つを見ると、必ずしも高い評価を与えてはいないが、トータルバランスに秀でた優秀録音であることには間違いは無い。また、時代を超えたハイクオリティを保っている音質などは音楽鑑賞上もっとも重要なファクターでもあり、ここでの評価が全体の評価を高める決め手となっているのである。
世界遺産級