世界遺産級 | 管弦楽曲 | ||||||||||||||||||||||||||||
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商品番号:JMCXR-0008 | ビクター(RCA) ステレオ XRCD2 | ||||||||||||||||||||||||||||
解説 | |||||||||||||||||||||||||||||
オーケストラの奏者一人一人の息遣いまでも感じられる、リアリティのある録音である。楽器の実存感も素晴らしく、全ての音が生々しく響き渡る。「ローマの松」冒頭、オーケストレーションの最も華やかな「ボルゲーゼ庭園の松」は一点の濁りもなく、トランペットのファンファーレや打楽器群の金属音などは、目の覚めるようなリアリティで迫ってくる。トライアングル・ハープ・鉄琴・チェレスタ・ピアノなど、様々な打楽器がffで連打されるが、楽譜を見なくともその一音一音が目に見えるほどに鮮明に捉えられている。 2曲目となる「カタコンベの傍らの松」では、一転、ppによるゆったりとした静寂な世界が広がる。フルオーケストラの巨大な響きから変わり、楽器の数も一気に減るのだが、音量でその差を捉えるのではなく、オーケストラの演奏そのものの変化を克明に記録しているため、楽器の音像が小さくなることもなく、またオーケストラのステージレイアウトにも変化はない。ミュートを付けた弦楽器の静謐な、そして少し乾いた感触を支えにして、ホルンとフルートが悲哀感のあるメロディを奏でる。そして現れるトランペットのテーマ(聖歌)は、奏者渾身の美しさといっていい。このテーマは、曲の盛り上がりに合わせ、トロンボーンによってffで高らかに歌われる。この、オーケストラの力強いクレシェンドも、最後まで音が混濁したり圧縮されることはなく、ホールでの生演奏そのものの高揚感を味わうことができる。この録音の評価を決める圧巻の聴き所である。 終曲の「アッピア街道の松」は、pppからfffへとオーケストラが変貌していく様をたっぷりと楽しむことができる。一方、ブラスセクションの別働隊(バンダ)やオルガンまでも加わるこの曲は、録音技術と再生芸術の限界を思い知らされる場所でもある。サラウンドの時代なら効果も上がるだろうが、ステレオでの録音ではバンダの存在はほとんど捉えられない。この部分に関してのみ、生演奏には遠く及ばない録音技術の限界であるといえる。 モノラルリリースも行なわれていた当時、演奏は3チャンネルテープに記録された。ジャケットに記載されているレコーディング風景の写真を見ると、指揮者を挟んで4本のマイクが3メートルほどの高さに設置され、オーケストラの左右の端にもマイクらしいものが立っている。この写真から何チャンネルでの録音かを断定することはできないが、いずれにしても部分録り、重ね録りのできない当時の技術では、録音は一発録りで行なわれている。 ライナー・ノーツを担当したロジャー・デットマーによると、ライナーは、録音レベルの調整のために第4曲「アッピア街道の松」を演奏した後、プレイバックを確認し、すぐに全曲の通し録音を行なった。その後、プロデューサー、リチャード・モーアからの指示で、第2曲を録りなおしているが、朝9時半から始まった「ローマの松」のレコーディングは、テストテイクからわずか3時間ほどで終えてしまっている。一方の「ローマの噴水」は、同日の夜7時からレコーディングが行なわれ2時間後の9時には終了している。まったくミスのないオーケストラの完成度に驚かされるし、ライナーのゆるぎない演奏姿勢にも敬服する。そしてなによりも、限られた時間と限られた機材で、これほどまでのオーケストラ再生を可能にしたエンジニアたちに敬意を表さずにはいられない。 XRCDによるリマスターであるこのディスクは、時代相応のノイズは残っているものの、音の生命力、瞬発力、輝かしさはまったく失われていない。むしろ見事に蘇ったといってよい。現代のレコーディングエンジニアたちのバイブルとして、欠かすことのできない逸品となった。 |
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世界遺産級 |