レーベル紹介

レーベル名 レーベルプロフィール 推薦盤
アーゴ(Argo) デッカグループの一角を担う、現代音楽を中心とした新興レーベル。
現代に息づく最新の音楽を捉え、それを記録として伝えようというコンセプトがある。サウンドの指向はデッカに通じるものがあり、明瞭でマイルドな音像が構築されている。

カーニス
交響曲第2番
指揮:ヒュッフ・ウォルフ
バーミンガム市立交響楽団
アルヒーフ(Archiv) ドイツ・グラモフォンの社内に置かれた音楽史研究部門としてのレーベルである。1947年に誕生し、古楽器の音楽を専門に扱っている。
録音、演奏とも高水準を維持してきたわけではないが、その歴史的音楽資料としての価値は計り知れないものがある。また、デジタル録音の開始により、サウンドは安定期に入っており、いわゆるメジャーレーベルとしての責任は果たされている。
EMI 世界最古のレコード会社であり、EMIの歴史はレコード界の歴史そのものといえる。1898年にエジソン直系のグラモフォン・カンパニーとしてロンドンに設立されている。
EMIのサウンドを作り上げてきたのが、1931年にオープンしたアビーロード・スタジオである。当時、すでに築100年を超えていたというマンションを買い取って、ここを世界有数の録音スタジオにリフォームしてしまったのだ。移動式のレコーディングシステムも早期に構築し、どんな場所でも一貫した品質の録音を可能にしている。
EMIのサウンドは、飾り気のないナチュラル指向。良質ではあるがシステムによっては物足りないと感じるのは否めない。しかし、このサウンドこそが、録音芸術の100年を知る基本となるのである。

ベートーヴェン
交響曲第9番「合唱つき」
指揮:サイモン・ラトル
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ヴァージン・クラシックス
(Virgin Classics)
放送・出版・CDショップなど、豊富な資金力を持つ国際企業のヴァージンが、クラシック界で新しいビジネスを展開しようと生み出したレーベルである。1988年に設立し、若者向けの新しいイメージと超優秀な録音で評判を呼んだ。
もともとEMIからの引抜による技術スタッフが中心だったため、サウンドはデフォルメされた大味指向ではなく、バランスと実存感を狙ったナチュラル指向である。

バーンスタイン
管弦楽曲集
指揮:パーボ・ヤルヴィ
バーミンガム市立交響楽団
ヴェルゴ(Vergo) 20世紀の音楽を録音・リリースしているドイツのレーベルである。放送局の録音や他社の録音したものが含まれるなど、そのサウンド指向は一口にはいえない。
しかし、レーベルとしての音作りにこだわることのない姿勢が、むしろ音のあるがままを伝える結果を得ているとも評価できる。

アイヴス
ピアノ・ソナタ第1番
ピアノ:ヘルベルト・ヘンク
エラート(Erato) 1952年に他社の音源をフランスに紹介するレーベルとしてスタートしたエラートだが、やがて自社録音を行なうようになり、その主なレパートリーは、17世紀から18世紀の古典音楽に加え、現代のフランス音楽となっている。
1970年代に入り、RCAとの関係を構築すると、小沢やロストロポーヴィッチなどを登用し、ワーグナーやR.シュトラウスなどのドイツロマン派の作品がカタログに載るようになった。
サウンドは潤いのあるホールトーンを基調に、ナチュラル指向のステージレイアウトを描いている。
刺激感のほとんどない上品な音作りである。

サティ
管弦楽曲集
指揮:佐渡 裕
コンセール・ラムルー管弦楽団
オルフェオ(Orfeo) 1979年の創立。ミュンヘンを中心に活躍する演奏家を擁したレーベル。紺のジャケットがスタジオでの自主録音で、赤のレーベルが放送用などのライブレコーディングである。リートから現代音楽のオーケストラ作品までと広範なレパートリーを持つ。
アナログ時代の活動はは短いが、デジタル初期から完成度の高い上質な録音を成し遂げている。他のメジャーレーベルがデジタルに乗り切れなかった80年代初期の時代に、最高級の録音が残されている。
サウンドは、金管の強奏でも決して耳障りにならず弦も潤いと透明感を失わない。
これほどの完成度を聴かせるレーベルでありながら、新譜がお目見えするのは稀有と言ってよく、特に最近は赤いレーベルの「歴史的実況録音」ばかりの登場である。

ブルックナー
交響曲第6番
指揮:ウォルフガング・サヴァリッシュ
バイエルン国立管弦楽団
オンディーヌ(Ondine) フィンランドを拠点とするオンディーヌは1985年の創立。当初はクフモ音楽祭の記録が主な仕事だったが、当初は多くのレパートリーを旺盛に録音している。
数ある北欧レーベルの中でも、こだわりの見られるオンディーヌは、ジャケットの仕上がりにも気を使っている。サウンドは、ナチュラルなステージレイアウトと、豊なホールトーンを楽しむことができる。

シベリウス
カレリア・ミュージック
指揮:トーマス・オリラ
テンペレ・フィルハーモニー管弦楽団
カプリッテョ(Capriccio) ドイツ人、あるいはドイツで活躍するアーティストを登用し、ルネッサンスから20世紀の現代音楽まで広範なレパートリーを誇る。
しかし、そのコンセプトは一貫性がなく、放送局との共同制作などが多くみられる。
サウンドは、良いものにはエンジニアの新しい指向も感じられるが、おおむねオーソドックスな音像表現にとどまっている。
キャニオン(Canyon)
シベリウス
交響曲第2番
指揮:小林研一郎
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
コッホ・インターナショナル
(Koch)
オーストリアに本拠を置く巨大レコード会社。当初は民族音楽やジャズ、ポップスなどを中心にリリースしていたが、1988年にドイツのクラシックレーベルを買収し、この部門に進出した。
マーラーの「葬礼」やシューマンの「謝肉祭」管弦楽版など、通好みのプルミエ的な録音が多くみられる。
サウンドは特筆すべきものはないが、後悔するような強烈なマイナス面もない。

アイヴス
管弦楽曲集
指揮:ジェイムス・シンクレア
ニュー・イングランド管弦楽団
シャンドス(Chandos) シャンドスの事実上の立ち上げは1978年。発売されたばかりのソニー製PCMを使っての自主制作を行なった。デジタル黎明期に成功を収めた新興レーベルの雄である。
サウンドにおいては、同時期に立ち上がったテラークと比較されることの多いシャンドスだが、ワンポイントではなくデッカ譲りのマイクアレンジを駆使し、豊なホールトーンと繊細なオーケストラ
イメージを描いている。
社長でありプロデューサーのブライアン・カズンズがカタログラインナップから音作りまで一貫してシャンドスのレーベルイメージを作り上げてきた。
特に、日本人作曲家「吉松隆」の全作品を出版するというプロジェクトは、わが国における録音芸術の誇りとなった。

吉松 隆
交響曲第1番(カムイチカプ)
指揮:藤岡幸夫
BBCフィルハーモニック
スプラフォン(Supraphon) 第2次世界大戦後の1946年、チェコスロヴァキア共和国の成立によって国営のスプラフォンがプラハを拠点に活動を開始する。その後、パントンレーベル、オーパスレーベルが加わり、同社による3つのレーベルが共存することになる。
東欧の優れた音楽家と上質なコンサートホールのおかげで、そのラインナップは膨大なものを持つ。
日本コロンビアの献身的な啓蒙により、西側では唯一、スプラフォンの全貌を知ることができる。

ワーグナー
「神々の黄昏」組曲
ロヴロ・フォン・マタチッチ
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
ソニー・クラシカル(Sony) CBSとしての出発は1938年で、メジャーレーベルでは最も若いといってよい。
しかし、そのルーツは1890年までさかのぼることができ、コロムビア・フォノグラフ・カンパニーとしてワルツやマーチなどをグラモフォンに吹き込んで販売していた。
1925年には初の電気吹込みを実現させ、1931年にイギリスにコロムビア・インターナショナルを設立した。CBSとしての最大の功績はLPレコードの開発である。長時間録音と高音質を実現させたこのLPは、モノラルからステレオ全盛期を飾り、現在までも愛好家を楽しませている。
1988年にCBSはソニーに買収され、翌年、社名をソニー・クラシカルとして再発足する。社長にはドイツ・グラモフォンのギュンター・ブレーストが招かれ、サウンドも、マルチチャンネルの直接音的指向からホールトーン豊な雰囲気指向へと大きく転換した。
推薦版のバーンスタイン「火の鳥」はステレオ初期の名盤であり、優秀な録音と相まって超刺激的な演奏を聴かせる。

ストラヴィンスキー
バレエ組曲「火の鳥」
指揮:レナード・バーンスタイン
ニューヨーク・フィルハーモニック
デッカ(Decca) オーディオ愛好家にとって、デッカは音の良いレーベルとして欠かすことのできない存在である。
モノラル時代から高品位録音を売りにし、中堅レーベルとしての物理的弱点を克服してきた。
ショルティ・ウィーンPOによる世界初の「指輪」全曲録音を成し遂げたプロデューサー、ジョン・カルショウの存在はレコーディングの歴史においてあまりにも大きく、神格化すらされている。デッカ・サウンドと呼ばれるクリアで明瞭なオーケストライメージは、「デッカ・ツリー」という独自のマイクアレンジによって生み出された。
ステレオ初期にアンセルメ・スイスロマンドOによりカタログを充実させ、デジタル初期にはデュトワ・モントリオールOによってその焼き直しを行なった。
マルチチャンネルの時代になっても、あくまでステレオ録音によるマスターにこだわってきたと言われるレーベルである。

マーラー
交響曲第3番
指揮:リッカルド・シャイー
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
テラーク(Telarc) テラークは1976年にエンジニアのジャック・レナーとプロデューサーのロバート・ウッズの二人によって設立されたレーベルである。クリーヴランドを本拠地とし、当初はオーディオ愛好家に挑戦するかのような、生々しい原音(雷・大砲)を取り入れたレコードを売り出していた。
「この音が再生できなければ、あなたのプレイヤーは調整不足です」などと謳われていた。
レコードでは再生できかったものが、CDによっていともあっさり再生できてしまうと、こうしたゲテモノ指向の録音はすぐに飽きられてしまった。
しかし、ワンポイント的指向の録音アプローチは、確固たる信念によってもたらされた物であり、やがてはウィーンPOとの契約にまで発展するのである。
サウンドは広いダイナミックレンジと腹に響く低音の伸びやかさなどが特徴である。

R.シュトラウス
交響詩「ドン・キホーテ」
指揮:アンドレ・プレヴィン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
テルデック(Teldec) テルデックの歴史は1928年にまでさかのぼることができる。当初はテレフンケンという名前でメンゲルベルクなどの巨匠とのレコーディングを行なっていた。戦後はデッカとの業務提携を結び、DeccaとTelefunkenをあわせてTeldecとして再出発している。
レコード末期には、CDの登場がなければ革命的な技術とされたDMM(ダイレクト・メタル・マザー)というプレス手法を考案し主要なレーベルのデジタルレコードに採用された。
バレンボイム・マズア・メータ・アーノンクールといったメジャーアーティストを抱え、多様なカタログレパートリーを構築している。

ブルックナー
交響曲第4番「ロマンティック」
指揮:クルト・マズア
ニューヨーク・フィルハーモニック
デロス(Delos) デロスは、1972年にハリウッドを拠点として設立されたインディーズ・レーベル。
ハイクオリティ・サウンドを売り物にしていて、ジャケットには、こだわりのレコーディングシステムが、ケーブルにいたるまで詳細に明記されている。
レコーディング・エンジニアが一度は読んだことがあると言われる「ハンドブック・オブ・レコーディング・エンジニアリング」の著者、ジョン・アーグルがメインエンジニアを務めていることでも知られている。
ジョン・アーグルは、RCAでの勤務の後、マーキュリー・レコードでチーフエンジニアを務めた。その後はJBLでスピーカーの開発に携わっている。
ある意味、氏の趣味として行なわれているデロスでのレコーディングであるが、そのサウンドはまさにエンジニアの手本となる、誇張のない最高品質の仕上がりである。
モニタースピーカーは当然JBLを使っているので、他のメジャーレーベルとは一味違った音作りに聴こえるが、高品質レコーディングの一端を担う重要なレーベルであることは間違いない。

ダイヤモンド
交響曲第3番
指揮:ジェラルド・シュヴァルツ
シアトル交響楽団
デンオン(Denon) 日本で最初のレコード会社であるが、「コロンビア」が海外では使用できないため、同社のオーディオブランドをレコード名に転用した。
1970年代にNHKと共同でPCM録音機をいち早く開発し、デジタルレコーディングの先駆け的な存在となった。当初はPCMレコードとして、アナログレコードと音質面での優位性を主張していた程度だが、フォーマットがレコードからCDへ変わった時点で、デンオンの録りためていたデジタル音源が
一気に市場へ流れ出た。デンオン・レコーディングは、測定用として使われていたB&Kマイクでワンポイント録音するもので、サウンドは、ホールの雰囲気をとてもよく伝えてくれる自然派指向の表現である。ワンポイントは雰囲気重視で個々のリアリティが弱いと評されるが、むしろ、その大雑把さがこのレーベルの美徳であると言える。

モーツァルト
序曲集
指揮:エマニュエル・クリヴィヌ
シンフォニア・ヴァルソヴィア
ドリアン(Dorian) ドリアンは、1988年にニューヨーク州のトロイに設立された。元AT&Tの研究員だったというエンジニアのクレイグ・ドリーと、相方のブライアン・レヴァインの二人で立ち上げたことから、レーベル名は「ドリアン」となった。
オリジナルに開発された20ビットデジタル機器に、ジッターなどの外的要因を排除するハイ・パフォーマンス技術を構築してきた。
音響特性の優れた会場で、最小限のマイクアレンジによってリアルな音場表現を志向している。

南米作曲家選集
指揮:エドゥアルド・マータ
ベネズエラ・S・ボリヴァール交響楽団
ドイツ・グラモフォン
(Grammophon)
ドイツ・グラモフォンの起源は、円盤レコードの発明者エミール・ベルリーナが1898年にロンドンに設立したグラモフォン社(HMV)であると言われる。そのグラモフォン社のプレス工場であったドイツ支社が、第1次世界大戦後に独立したのである。
後の1917年には楽器製造会社のポリフォンが買い取り、ドイツ国外に向けてはポリドールというレーベルで販売していた。そして第2次大戦後に現在DGに統一されたのである。
EMIと並んで世界最古のレーベルとして、クラシック音楽の膨大な記録を行なってきた。LP時代の1950年代以降は、まさにDGの世界制覇の輝かしい黄金期で、カラヤン・ベーム・バーンスタインなど、ドル箱アーティストを抱え込んでいた。ドイツでありながら、経営権をユダヤ人に握られていたということもあり、バーンスタインやバレンボイム、イスラエルPOなどが突然変異的にカタログを埋めた時代もあった。
DGは、デッカとならんで高音質レコーディングで注目されてきたが、デジタル時代にはその技術力が裏目に出た感は否めない。4Dという究極のクオリティも、音楽を伝えるための何かを失ってしまった。
90年代以降は語るべき成果は見られず、アナログ時代の熱くほとばしるリアリティは聴くことができなくなった。
推薦版に挙げたディスクはヴィヴァルディの「四季」である。アイザックスターンを特別ゲストに、楽章ごとに4人のソリストが順番に登場するのだが、素性はいずれもユダヤ人である。そしてメータ指揮によるイスラエルPOがサポートするという、まさにドイツレーベルによるイスラエル賛歌である。もちろん会場はティル・アヴィブである。
当時のDGがどういう状況に置かれていたのかが垣間見られる珍品である。

ヴィヴァルディ
協奏曲集「四季」
指揮:ズビン・メータ
イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
イツァーク・パールマン
シェロモ・ミンツ
ピンカス・ズーカーマン
アイザック・スターン

ナクソス(Naxos) 1980年代、ジャケットにメイドイン・ホンコンを掲げ、クラシックマニアもがあっと驚く楽曲を紹介していたのが、マルコ・ポーロというナクソスの兄弟レーベルである。
現在もマルコ・ポーロは存在しているようだが、実質はナクソスにその志を譲ったといえる。当初は、日本でも980円程度で買うことができるデジタル録音の新譜レーベルとして注目されていた。オーソドックスな楽曲はほとんど網羅され、それに加えて世界中の国々からマイナーな楽曲を拾い出し、それを圧倒的な購買力で世界に広めている。
録音技術も、ハイサンプリングを標榜したり、HDCDでのディスクがあったりと、その姿勢は好感が持てるが、言うほどの効果を挙げているとは言いがたい。
演奏もシビアな鑑賞に堪えられるものとは言えないのが残念である。

日本作曲家選集
指揮:沼尻竜典
東京都交響楽団
ニンバス(Nimbus) ニンバス・レコードは、1971年にイギリス・バーミンガムに設立された。録音システムを独自に開発し、LP/CDのプレス工場を持つ。
レコーディング・コンセプトは自然派指向で、ワンポイント録音に拘ったり、無編集を前提としたレコーディングを行なったりしている。
現在はウェールズのモンマスに本社・工場を稼動させ、ここに自社のコンサートホールも建設している。カタログラインナップも広範囲に網羅されていて、尾高忠明もこのレーベルでラフマニノフをリリースしている。

ラフマニノフ
交響曲第3番
指揮:尾高忠明
BBCウェールズ交響楽団
ノンサッチ(Nonesuch) ノンサッツは、1964年からフランスを中心にヨーロッパでバロック音楽をリリースしていた。70年代以降は、ヨーロッパの伝統的なクラシック音楽を避け、クロノス・カルテットやグレツキといった前衛的なアーティストを世に広めることに貢献した。
またスティーブン・ライヒや、ジョン・アダムス、フィリップ・グラスといったミニマル音楽の旗手たちとの専属契約は、新しい芸術が生まれるためにとても重要な役割を担っていると評価できる。

アダムス
「輪廻について」
(アメリカ同時多発テロ追悼)
指揮:ロリン・マゼール
ニューヨーク・フィルハーモニック
ハイペリオン(Hyperion) ハイペリオンは、1980年にイギリスに創設したレーベルで、20年足らずの間にカタログは1000点を超えた。時代やジャンルにとらわれず、知られざる名曲を発掘し、イギリスを代表するインディーズとして成長した。
イギリスの代表的作曲家、パーセルとヘンデルを意図的に避けた古典音楽シリーズなどが好評だという。
特定のエンジニアを擁さないこのレーベルのサウンドは、セッションによって様々であるが、良い意味で中庸をいく内容であり、オリジナル古楽器のみずみずしい響きをクリアに捉えている。

バーンスタイン
交響曲第2番「不安の時代」
指揮:ディミトリー・シトコフスキー
ウルスター管弦楽団
ビス(Bis) BISは1973年にフィンランドに設立しシベリウスを初めとする北欧のカタログを充実させてきた。戦前より日本と友好関係にあったフィンランドということもあり、BISのアーティストには邦人の名前も多く上がっている。創設者のロベルト・フォン・バールの明確なポリシーと監督の下、カタログラインナップを増やしている。
ブックレットには録音に関わる機器の説明が載っているのはもちろん、アーティストが使っている楽器(マウスピースの品番も載っている!)の説明まで載せてある。
サウンドは、高品質をジャケットにも謳っているように、透明感のあるナチュラル指向の落ち着いたものである。ワンポイントレコーディングを基本にしていて、オーケストライメージは小ぶりな印象だが、ホール後方からステージを見るような距離感はゆったりと椅子に身を任せて聴くには程よいものだといえる。
特に2000年以降はそのサウンドの透明度が深まり一段とクオリティが上がっている。音の一つ一つが繊細に描かれ、消え入るようなホールトーンを捉えている。

シベリウス
クレルヴォ交響曲
指揮:オスモ・ヴァンスカ
ラハティ交響楽団
RCA(BMG) RCAの歴史は1901年のビクター・トーキング・マシーンにまでさかのぼることができるという。
1903年にはレッド・シール・レーベルが誕生し、大きく飛躍した。RCAはRadio Corporation of Americaの略で、1919年に設立している。このRCAにレッド・シール・レーベルが買収されたのが1929年である。
電波メディア王であったデビット・サーノフにより発展を続け、トスカニーニとNBC交響楽団の設立にも貢献し、カラヤン・ウィーンPOの録音をデッカを使って実現させてもいる。CBSとのライヴァル関係のなか、若くスター性のあるバーンスタインで垂れ流し的にカタログを充実させたCBSに対し、ライナーやミュンシュというヨーロッパの巨匠との質の高い録音を着実に行なった。
そんなRCAも1985年にはドイツの総合メディア企業ベルテルスマン(BMG)に買収された。
サウンドはディスク(エンジニア)によって様々で、一口には語れない。これは、アメリカとヨーロッパで製作スタイルがちがっていたり、フリーのエンジニアなどを積極的に登用していることによる。
しかし、1950年代のRCAが手がけた録音はどれも世界遺産級であり、最新録音の中にも極限のクオリティを実現しているものもある。

レスピーギ
交響詩「ローマの松」
指揮:フリッツ・ライナー
シカゴ交響楽団
フィリップス(Philips) フィリップスは、1950年にオランダの電子機器メーカー「フィリップス」のレコード部門として設立した。現在あるメジャーレーベルの一群の中では最も若いレーベルといえる。
ドイツ・グラモフォンと同じポリグラムの傘下にいるということもあり、ヨーロッパを代表する二大レーベルとして位置づけられている。フィリップスの本格的な活躍は1960年近くになったステレオ時代に入ってからである。
サウンドは耳障りの良い上品なものが多く、時に物足りないと感じることもあるが、刺激的なものを排した一貫した音作りを聴くことができる。フィリップスではプロデューサーがエンジニアを兼ねている場合が多く、マイクセッティングにまでその責任が及んでいるという。こうした個人主義的な製作環境が、フィリップスサウンドを構築して
きたのである。

ウォルフ
カルミナ・ブラーナ
指揮:小沢征爾
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

参考文献「クラシックの名録音」 田中成和 船木文宏 著  立風書房