文化財級 交響曲
作曲家 グスタフ・マーラー
曲名 交響曲第2番ハ短調「復活」
指揮 レナード・バーンスタイン
演奏 ニューヨーク・フィルハーモニック
Sp.バーバラ・ヘンドリックス
MSp.クリスタ・ルードヴィッヒ
録音 1987.4  エイブリー・フィッシャー・ホール
プロデューサー ハンス・ウェーバー
エンジニア クラウス・シャイベ
その他 Live
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 8.8
商品番号:459081−2 グラモフォン ステレオ  
解説
程よくホールトーンを含んだ、ステージレイアウトの優れたオーケストライメージである。過剰なステレオ感を狙わずに、各楽器は音像の中心に定位し、実物大のオーケストラを感じられる仕上がりである。
ライヴセッションであるが、そこに生じる空気感の損失やピックアップマイクによる各楽器の不均衡もなく、良好なバランスの中で充分なリアリティとクオリティを確保している。
オーケストラが怪物的なダイナミックレンジを発揮する曲であるが、そうしたTuttiでのffにおいても音像が曖昧になったり混濁したりすることもなく、整然としたまとまりを維持している。メゾ・ソプラノの入る4楽章での、声とオーケストラの音像定位も絶妙であり、ブラスセクションのppの処理の上手さが光っている。一転、5楽章への怒涛のなだれ込みは大音響の異次元空間へ、リスナーを一気に到達させる。
マーラーのこの「復活」はオーケストラ作品の中で最も規模が大きく、そして曲想も壮大な感動的な曲である。人間の死後への信仰を表現したものと言われている。
マーラー自身の解説によると、「第1楽章、我々は愛する人の死棺の前にいる。生とは、そして死とは何か? 第2楽章、死者の味わった生前の幸福なとき。第3楽章、彼は苦悩によって神への信頼を失った。自暴自棄。第4楽章、神に対する素朴な呼び声。第5楽章、恐ろしい最後の審判の通告。天の合唱が復活を伝える。」という内容を持っている。
その内、3部構成で進められる第5楽章は、1部で行進曲や復活の主題がコラールなどで描かれた後、2部の展開部でさまざまな主要主題が多彩なオーケストレーションによって再現される。ここでの音像表現では、ステージ裏で演奏される金管セクションの距離感や陰影の処理が問われるが、エンジニアは見事な手腕で宇宙的な広がりを演出している。続く3部は神秘的な静謐のなかで、フルートとピッコロが命のさえずりを奏でた後、無伴奏の合唱が「復活」の賛歌を語り始める。この虚無の世界は、マーラーの神への信仰が純粋に音楽化されたものであるが、言葉や信仰など分からなくても、この音響の中に身を沈めていることが悦びと言える。
クライマックスはオルガンも加わり地鳴りのような重低音が体を震わせる。この優秀な録音によって、オーディオとリスニングルームが悲鳴を上げながら聴き手を昇天させるであろう。
文化財級