愛蔵盤級 管弦楽曲
作曲家 伊福部 昭
曲名 交響譚詩・タプカーラ・サロメ・日本狂詩曲 他
指揮 広上淳一
演奏 日本フィルハーモニー交響楽団
録音 1995.8.22−9.1  セシオン杉並ホール
プロデューサー 福田 稔
エンジニア 高浪初郎
その他 Neumann U87  Schoeps CMC56U
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ 10
ダイナミックス
平均点
商品番号:KICC 175 キングレコード  ステレオ
解説
アナログフォーマットにこだわった凝りに凝った録音である。しかし、結果的には仕上がりに問題のあるオーケストラ音像となった。細部の一つ一つは高品質で目を見張るものであるが、全体像が掴みきれない実態のない録音である。
伊福部昭のオーケストラ作品は、ほとんどが実況録音によるリリースのため、演奏の充実度(アマチュアによるものも多い)に比べて音質面でリスクを伴っていた。にわかに伊福部人気が高まってきた市場に対し、主要な作品をまとめて録音し、一気にリリースしようとした企画である。
この時代にあえてアナログ録音を試み、ハイサンプリングでデジタル処理されている。アナログに執着し、その利点を最大限引き出そうとこだわり抜いた録音であるが、その成果は必ずしも高い音像表現を得るには至っていない。各楽器の音を部品として扱い、一つ一つの内容は最高品質のクオリティを成し得ている。アナログの持つ情報量、質感、温かみなど、透明感と迫り来る瞬発力が見事に両立されたものとなっている。そして伸びやかなダイナミックレンジもアナログならではと言える。しかし、オーケストラは本来こういう鳴り方はしないはずである。客席で得られるオーケストライメージでもなく、オーディオソースとして楽しむオーケストライメージでもない。随分異質なオーケストラサウンドと言わざるを得ない。細かな部品の処理に気をとられ過ぎて、トータルバランスを見失ってしまったのではないだろうか。
室内楽的なpやmfでの表現は問題なく、むしろそのリアリティには驚きを感じる。しかし、フルオーケストラのTuttiでは音が団子状態で垂れ流されているような嫌悪感を抱くことになる。
企画とこだわりは高く評価できるが、それが空回りしていると残念に思えてならない。

愛蔵盤級