世界遺産級 管弦楽曲
作曲家 R.シュトラウス
曲名 交響詩「ドン・キホーテ」
指揮 ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
独奏 Viola:ウルリヒ・コッホ
Cello:ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ
録音 1975.1.8 ベルリン・フィルハーモニー
プロデューサー ミヒャエル・グローツ Michel Glotz
エンジニア ウォルフガング・グーリッヒ Wolfgang Gulich
評価項目 評価内容
ホールトーン 10
ステージレイアウト 10
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 9.4
商品番号:5 66965 2 EMI ステレオ 
解説
ホールトーンがこれほど的確に表現された録音は他に例がない。響きが多すぎず、少なすぎず、そして人工的に加えられたものではないリアリティ。客席部分を含めホール全体の雰囲気を伝えることに成功した極めて稀な録音である。
高品質なホールトーンを得たことでステージレイアウトが明瞭になり、それに乗じて各楽器のリアリティも高くなった。EMIはオーケストラを距離感のある音像で表現する傾向にあるが、それによってリアリティやダイナミックスを弱めている録音が多い。しかしこの録音では、距離感とリアリティが絶妙のバランスで保たれていて、オーケストライメージからステージレイアウトまで申し分のない仕上がりとなっている。各楽器は適正の位置に定位し、まさに目に見えるほどの実存感である。
曲は交響詩と表記しているが、正しくは幻想的変奏曲である。最初の序奏部にこの曲に使われるほとんどの楽器が登場するため、この部分を聴けば、録音の大半の評価ができてしまう。最高品質のオーケストラサウンドに浸りながらこの序奏部を聴きおえると、チェロのソロでドン・キホーテの主題が現れる。このソロがどのような音のバランスで登場するのか、新しい録音を聴く場合に必ず緊張する瞬間である。予想以上に大きな音像であるもの、オーケストラの一員であるがごとく小さな音像で存在感のないものなど、様々であるが、いずれにしても期待を裏切られたと感じるのは避けられない。そうしたものがほとんどの中で、この録音は見事な音像表現でチェロが登場するのである。加えて定位感も素晴らしく、ソリストが指揮者の少し下手に座っているのだろう、ということまでも感じることができる。
実物大のオーケストラが目の前に現れるのである。この感動はめったに味わうことのできない貴重な体験となる。
世界遺産級