文化財級 | 交響曲 | ||||||||||||||||||||||||||||
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商品番号:SMK 64462 | ソニー(CBS) ステレオ | ||||||||||||||||||||||||||||
解説 | |||||||||||||||||||||||||||||
コンサートから退いたワルターのために、レコーディングによる現役活動をサポートした、プロデューサー・ジョン・マックルーアによる一連の録音は、ステレオによるワルターの演奏を伝える貴重な記録資産となっている。レコーディング技術においても、ステレオ録音がようやく軌道に乗り始めた頃であり、エンジニアたちのひたむきな努力と、この巨匠の残された命をテープに刻み込もうとする執念が、途方もないエネルギーを消費しながら、一曲一曲を積み重ねていった。ベートーヴェンの交響曲全集は、短期間で集中的に録音されており、音像表現上の違いは殆どないと言える。 ホールトーンは、オーケストラの広がりと奥行を支える豊な残響成分を見事に捉え、編集の手を加えない一期一会の生々しいオーケストラサウンドを懐深く支えている。このホールの詳細は判らないが、マイクセッティングはオーケストラから距離を取り、各楽器の分離よりもTuttiでの一体感を捉えようとしていると思われる。しかし、雰囲気に流されているわけではなく、各楽器が曖昧になることなく、一音一音が生々しく浮かび上がってくる。 ステージレイアウトは、ステレオ感のある広々とした空間を描いており、各楽器を過剰に主張するような定位ではなく、自然体のオーケストライメージにまとめられている。弦セクションと管セクションの捉え方も良好なバランスであり、オーケストラ本来の音像を的確に表現していると評価できる。このような実物大のオーケストライメージを狙うことで、音像は生々しく闊達に捉えることができるのである。 一方、音質面やダイナミックレンジは時代相応の内容で、耳障りではないにせよ、全体にノイズが意識されるのは否定できず、ダイナミックレンジも広いとは言えない。 このアルバムはソニーのハイビット処理システムSBMによってリマスタリングさたものである。その後、DSDによる1ビット処理でのリマスタリングで再発売されているが、比較した場合、圧倒的にこのアルバムの仕上がりがオリジナルに近いと思われる。もちろんオリジナルテープは聴くすべもないが、DSD盤は、余りにも手を加えすぎているのである。一聴すると広がりもあり音の余韻が伸びやかで透明度も高いが、それは厚化粧で覆われた「女優」の様な仕上がりで、その内にあるものの実態がつかめなくなってしまっている。旧盤は、音質では劣るものの、むしろそれ自体がオリジナルの時代を伝えるものであり、また、そこから聴こえる生々しい「空気」こそ、記録され伝えられるべき歴史の意味なのである。ワルターやバーンスタインのアルバムは、何度も形を変えて再販されている。そのつど最新のテクノロジーを投入して購買欲を煽ってきたが、オリジナルへ近づくのではなく、聴きやすさという「雰囲気」を志向してしまっては、当時のエンジニアの「執念」を歪めてしまうことになるのではないだろうか。 |
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文化財級 |