世界遺産級 協奏曲
作曲家 アントニオ・ヴィヴァルディ
曲名 ヴァイオリン協奏曲「四季」
指揮 ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
Vin.アンネ・ゾフィ=ムター
録音 1984.6.19  Zeremoiensaal Wien
プロデューサー Peter Alward
エンジニア Wolfgang Gulich
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト 10
リアリティ
クオリティ 10
ダイナミックス
平均点 9.4
商品番号:7 47043 2 EMI  ステレオ 
解説
ホールトーンはそれほど豊ではないが、小編成のこの曲にとっては充分な空気感と残響成分を確保しており、オーケストラ・サウンドがダイナミックに鳴り響いている。協奏曲ではあるがソロ・ヴァイオリンがことさらに強調されることは無く、オーケストラの中で自然なバランスとポジショニングを与えられている。
マイクアレンジによって積極的に奏者に近づけられたのか、一人一人がそこに居るかのような気配と共に、生々しい存在感が捉えられている。ステージレイアウトは、各セクションのあるがままを実物大に定位させており、小編成ならではの明瞭で粒立ちの良い音像が見事に表現されている。
音質面でも申し分なく、ソロ・ヴァイオリンはもちろん、ウィーンPoの芳醇な弦セクションが高音域まで艶やかに伸びていく美しい響きが捉えられている。又、ダイナミックレンジも素晴らしい内容で、少々音像が近いこともあり、デジタル・フォーマットのワイドレンジを充分に生かした仕上がりである。重心の低い、よく広がっていく音像表現であると言える。
一方、ソロであるムターの扱いは微妙な処理である。もちろん明瞭に捉えられてはいるものの、協奏曲としてのキャラクターというよりは合奏の一部としてのソロといった雰囲気で、ウィーンPoの弦楽合奏との調和に重きを置いたバランスである。このアルバムの製作意図までは知り得ないが、カラヤン・ウィーンPoという世界最高の合奏団の中で、若手女流ヴァイオリニストのムターが、その至高のアンサンブルを体当たりで身に付けて行くプロセスのように聴き取れるのである。カラヤン自身がハープシコードを演奏し、ムターの奔放な演奏スタイルに柔軟に対応している。この演奏は、指揮を通して得られる呼吸ではなく、アンサンブルに身を投じたものの中から生まれた一体感であるように思えるのである。
世界遺産級