文化財級 オペラ/合唱曲
作曲家 ジュゼッペ・ヴェルディ
曲名 レクイエム
指揮 レナード・バーンスタイン
演奏 ロンドン交響楽団
独唱 ソプラノ:マルチナ・アローヨ
テノール:プラシド・ドミンゴ
録音 1970.2.26 ロンドン・アルバートホール
プロデューサー トマス・Z・シェパード
エンジニア ロバート・オーガー/ジョン・グリエール
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 8.6
商品番号:SM2K 47639 ソニー  ステレオ 
解説
アルバートホールの巨大な空間を効果的に活かし、合唱とオーケストラの雄大なサウンドを見事にまとめあげている。
ホールトーンは、自然な空間的広がりを十分に捉え、オーケストラに豊かな残響を与えている。pでの室内楽的な響きも巨大なffも、洪水のように押し寄せる音の広がりを包み込むことができるゆとりがある。この自然なホールトーンのおかげで、オーケストラのステージレイアウトも相乗的に良くなっている。
ステージレイアウトは、マイクアレンジのセンスの良さによって、安定した定位を得ることができている。オーケストラと客席の距離感も適正であり、オーケストラの各セクションの音像イメージも生々しくリアリティがある。ステージの奥行きまでよく伝わってくる見事な安定感であると評価できる。
独唱には各ソリストにピックアップしたマイクをセッティングしてあると思われるが、一人一人の音像が明瞭になり過ぎないよう配慮してある。オーケストラのアンサンブルの中でバランス良くミックスされているのである。またffでのtuttiで独唱が埋没しないようフォローもされているし、mpでの静寂の中では、背景のオーケストラ音像に溶け込んで雰囲気を壊すようなことはない。マイクの特性を知りつくした、エンジニアの腕前に拍手を贈りたい。
音質面は時代相応の質感であるが、ダイナミックレンジは伸びやかでストレスのないレベルである。音像がつぶれたり圧縮されたような違和感はなく、アナログならではの粘りと腰の強さが魅力的である。
若き日のドミンゴのテナーが聴けるのも、この録音の魅力である。美しく、ダイナミックなドミンゴの歌声は、この後のカラフの成功を予感させるものである。

ホールの客席にいるような空気感と残響感は、この録音の成功要素の重要なポイントである。過度に強調されたものはどこにもなく、「ああ、こういう音が聴きたかったんだよなあ」とつぶやきたくなる録音に仕上がっている。
文化財級