デッカとCBSが交換条件でバーンスタインとウィーンPoを初共演させた一連のレコーディングの一つである。ウィーン国立歌劇場にセンセーショナルにデビューしたバーンスタインによる、同じ独唱陣を従えての再現録音である。録音スタッフはデッカのエンジニアを使い、ホームグラウンドのゾフィエンザールでの得意のセッションである。66年という時代的な古さは全くなく、音質もダイナミックレンジも申し分のない最高品位な仕上がりである。
音像表現の指向は、まさにデッカサウンドであると言え、曖昧なところのない明瞭で分離の良いオーケストライメージである。また各楽器のつながりも良く、粒立ちの良い定位によってオーケストラの全体像が見通しよく描かれている。独唱の扱いも巧みで、オーケストラとの位置関係や物語の中で振舞うキャラクターが克明に表現されている。しかし、こうした定位感はマイクにより機械的に配置されたものでもあり、オーケストラの自然なステージレイアウトからは幾分外れてしまうことは否めない。
だが、これはスタジオセッションが到達したオペラ録音の完成された世界観でもあり、オーディオソースとしては最高の録音であると評価できる。
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