文化財級 交響曲
作曲家 レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ
曲名 交響曲第4番 へ短調
指揮 エイドリアン・ボールト
演奏 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
録音 1968.2  アビーロード・スタジオ
プロデューサー クリストファー・ビショップ
エンジニア クリストファー・パーカー
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 8.4
商品番号:5739242 EMI ステレオ
解説
アビーロード・スタジオを使用した明瞭でまとまりのよい録音である。各楽器は曖昧にならず粒立ちよく捉えられ、スタジオセッションの優位性を感じさせてくれる。
ステージレイアウトはスタジオのゆとりのある空間を生かした、左右の広がりと奥行を狙った見通しの良い配置となっており、各楽器の定位も申し分ない。
ホールトーンは、客席にまで広がるような残響は望めないものの、巨大なアビーロードの空間規模を生かした雄大な音像表現に仕上がっている。若干ドライな印象も受けるが、各楽器の響きは伸びやかなに放射状に広がっている。反面、金管楽器の定位が少々広がりすぎていると感じるが、音像が過剰に大きくなることも無く、適度なオーケストラ・イメージを聴き取ることができる。
スタジオセッションらしく、自由なマイクアレンジに拠って、各楽器を的確にそして明瞭に捉えることに成功している。マルチマイクの良さも生かされていて、音像の分離も良く、粒立ちの良いアンサンブルが聴こえてくる。
曖昧にならずにスピード感のある音像は、生々しく迫り来る手ごたえがある。
リアリティも充分であり、実物大のオーケストラが生き生きと再現されている。
それにしても、この曲の現代的で暴力的な響きは何なのだろうか。20世紀の前半が戦争による暴力の時代であったとするならば、この曲はまさにそうした時代を反映したものであると言える。VWは知名度こそあれ、楽曲が頻度よく演奏されることは無い。特に交響曲は9曲もの大作が揃っているにもかかわらず、CDで入手するにも選択肢が極めて少ない。
このボールトの全集は、録音に関しても演奏に関しても、VWの魅力を楽しむに充分な内容であり、その後の幾つかの録音と比べても、まず第一に挙げられる名盤であると評価できる。
文化財級