世界遺産級 協奏曲
作曲家 ジャン・シベリウス
曲名 ヴァイオリン協奏曲
指揮 オスモ・ヴァンスカ
演奏 ラハティ交響楽団
Vin.レオニダス・カヴァコス
録音 1990.11.21 フィンランド・クロス教会
プロデューサー ロヴェルト・フォン・バール
エンジニア ロヴェルト・フォン・バール
その他 Neumann U89 TLM170
評価項目 評価内容
ホールトーン 10
ステージレイアウト 10
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 9.4
商品番号:CD−500 BIS ステレオ 
解説
2本のノイマンU89を中心にステレオイメージを作り、2本のTML170を左右の補助として使用して録音された、ワンポイント指向の、自然であるがままのオーケストラサウンドが特徴である。録音データには、ソロヴァイオリンに対してスポットマイクを使用していないと記載されている。ソロもオーケストラと同質の音像空間の中で定位している。
常にオーケストラ録音の新しい表現手法を追及しているBISならではのこだわりであると言えるが、それが制作側の自己満足に終わるのではなく、狙い通りのサウンドが、リスナーの耳まで確実に届けられているということが、この録音の何よりも素晴らしい成果である。このレーベル特有の、小振りな音像による距離感は否めないが、録音モニターにスタックスのヘッドフォンを使用していることを考えると、スピーカー再生とは幾分異なる音像表現にまとまるのは致し方ないのかもしれない。
この批評ではヘッドフォンは使用していないため、エンジニアの意図した再生音が必ずしも評価の対象になっていないのかもしれないが、それでもこれだけ高い評価になったのは、この録音が奇跡とも言える類稀な仕上がりになっている証であろう。
セッション時の写真を見ると、メインのマイクは指揮者の後方で4メートルほどの高さにセットされている。こうした全体を俯瞰する音像を狙うことで、オーケストラの見通しのよさや奥行の深みを描くことに成功しているのである。ソロヴァイオリンの音像は、写真で見るとおり、指揮者の下手で演奏しているように定位している。
教会という響きの豊な場所の特性も生かし、残響成分をたっぷりと含んだ音像により、ステージレイアウトは、各楽器が程よくブレンドされて繋がりよく定位している。また、空間全体を捉えた空気感により、明瞭で透明度の高いリアリティが確保され、オーケストラ音像を限りなく美しいものに仕上げている。
このCDには、同時にオリジナル版も録音されている。当初は楽曲の希少価値を売りにしたリリースであったが、録音の優秀さは、この後、ヴァンスカによるシベリウス全集へと発展していくきっかけにもなった。
世界遺産級