愛蔵盤級 交響曲
作曲家 ディミトリー・ショスタコーヴィチ
曲名 交響曲第5番 ニ短調「革命」
指揮 レナード・バーンスタイン
演奏 ニューヨーク・フィルハーモニック
録音 1959.10.20 ボストン・シンフォニーホール
プロデューサー ジョン・マックルーア
エンジニア
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 7.6
商品番号:SMK 47615 ソニー(CBS) ステレオ  
解説
ステージ上のオーケストラを克明に捉えた、極めて近接的なマイクセッティングである。ホールトーンはほとんど感じることはなく、その分各楽器のリアリティが強調された音像表現である。生々しいまでのオーケストラサウンドが描かれている。
1楽章、第2主題で高弦と木管による繊細で危ういハーモニーが聴かれるが、こうした最弱音の音像処理にエンジニアの苦心と配慮が伺える。時に消え入るような薄いオーケストレーションが展開し、時に低弦による重量感のある動機が挿入される。こうした曲想の変化を余すところなく捉えた、息を呑む緊張感が伝わってくる。
展開部でピアノ、打楽器、金管によりオーケストレーションが厚みを増し、テンポの煽りとクレッシェンドによる音圧の拡大が始まると、近接したマイクアレンジにより、音像もリアルに迫力を増していく。多種多様な響きが交錯する中、オーケストラは最強音に達する。
一方、ステレオイメージは、少々左右に広げすぎた感は否めず、特にヴァイオリンの音像が強調して聴こえてくるのが残念である。また、4楽章のみオーケストラの全体像が薄くなり、腰が弱くなってしまうのも一貫性がない。1楽章から3楽章までの評価と比べると一段下げざるを得ない。
時代相応のクオリティではあるが、ダイナミックで赤裸々なオーケストラサウンドを指向した、聴き応えのある録音である。
なお、この録音は、バーンスタインがソビエト演奏旅行を成功させ、その凱旋帰国の折に無理を言ってボストンで行なわれたセッションである。伝え聞くところによると、バーンスタインにとっての故郷であるボストンは、指揮者として彼を招くことがほとんどなく、その悔しさもあって、ニューヨークへの帰国途中にわざわざボストンでセッションを行なったというのである。ニューヨーク・フィルハーモニックにとっても、当時のコロンビアレコードにとっても、ボストンのシンフォニーホールはテリトリー外であったということで、相当な無理をして実現させたと言われている。エンジニアにとっても不慣れな場所であったと思われるが、音響に優れたシンフォニーホールの空間表現には目もくれず、ひたすら音のリアリティを追求したこの録音は、当時のアメリカの音作りを垣間見ることのできる、貴重な記録でもある。
ソビエトでショスタコーヴィチ自身に評価をされたという「革命」は、バーンスタインにとっても重要なレパートリーとなった。
愛蔵盤級