世界遺産級 | 交響曲 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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商品番号:SMK 47617 | ソニー(CBS) ステレオ | ||||||||||||||||||||||||||||||
解説 | |||||||||||||||||||||||||||||||
弦楽合奏と打楽器、それに二人の独唱という風変わりな編成による室内楽的な交響曲である。オーケストラは極めて近接的に捉えられ、ソリストは眼前に立ちはだかるかのようなリアリティである。時折クラシック録音ではなくポップス録音のようなバランスに感じることもある。 ステージレイアウトは、指揮者がオーケストラの弦セクションを見渡す様な距離感で配置され、下手に高弦、中央に独唱、上手に低弦といった具合に、はっきりとグループ分けされて定位している。この定位は、録音時の楽器配置をマイクがそのまま捉えたものだと推測され、ワンポイント的な手法であるがままを自然なバランスで拾っている。 マンハッタンセンターでの録音は、床面を使って自由な配置が可能であり、オーケストラの配置もマイクのセッティングもエンジニアの狙いにあわせて対応できる。この曲は編成が小さいため、指揮者を基点としたマイクアレンジで、リアリティを追求したような、生々しい音像表現を描いている。手を伸ばせば奏者に触れるのではないかと感じるほどの実存感である。 この「死者の歌」はショスタコーヴィチの晩年の曲であり、マーラーが死を意識しながら「大地の歌」を書き上げたように、ショスタコーヴィチも同じような境遇で、この男女二人の独唱を用いた交響曲を書き上げたのである。大小11の楽章からなる交響曲だが、いずれも死にまつわる詩に基いて作曲されている。 バーンスタインは、ショスタコーヴィチの、1番・5番・6番・7番・9番・14番をニューヨーク・フィルハーモニックと、再録音で1番・5番・6番・7番・9番を複数のオーケストラで扱っている。中でも評価の高いものが5番と7番であるが、76年というバーンスタインにとってヨーロッパでの活動が中心となった時期に、なぜ14番を録音したのか。なぜこの時期に、そしてなぜこのオーケストラで、と疑問を抱かずにはいられない。妻のフェリシアが癌に侵されていた時期でもあり、そうしたことがこの録音のきっかけになったのかもしれない。 演奏は、録音の生々しさが際立っていることで、奏者の息遣いまでも伝わる、緊張感と悲哀に満ちた世界を描いている。ニューヨークPoも、時間をかけてアンサンブルを仕上げた、この頃には珍しい完成度で応えている。 76年という時代のリスクはまったく感じない録音であり、一本のマイクがどれほどの情報量を捉えることができるのかを、改めて考えさせてくれる名録音となっている。 |
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世界遺産級 |