世界遺産級 交響曲
作曲家 ディミートリー・ショスタコーヴィチ
曲名 交響曲第11番 ト短調「1905年」
指揮 ベルナルト・ハイティンク
演奏 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音 1983年 アムステルダム・コンセルトヘボウ
プロデューサー アンドリュウ・コーナル Andrew Cornall
エンジニア コリン・モーフォート  Collin Moorfoot
評価項目 評価内容
ホールトーン 10
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 9.2
商品番号:425072−2 デッカ  ステレオ
解説
雄大で見通しの良いホールトーンが印象的な録音である。オーケストラはその豊なホールトーンの中で実物大のサイズで明瞭に定位している。ステージレイアウトも、充分なステレオ感が確保され、曖昧なところの一切ない見事な音像で各楽器が配置されている。その楽器の音の一つ一つに、ホールの空気感と空間の大きさを聴き取ることができる。
曲は静謐で淡々とした響きの中でゆっくりと展開していく。冒頭、トランペットのソロも、曲の悲劇性を暗示させる死のファンファーレを奏でている。こうした薄くて消えてしまいそうな曲想を、この録音は広がりと深みのある音像で量感を持って捉えている。一方、戦争音楽と評されるこの曲のダイナミズムも余すところなく捉えている。オーケストラのTuttiが殺戮の音楽を鳴り響かせても、音像が濁ったりぶれたりすることはない。余りの迫力に打楽器の音がひずんでいる所もあるが、曲の熱気に覆われて大して気になることはない。
デジタル初期の録音ではあるが、客のいないホールの利点を充分に生かした、完成度の高い仕上がりとなっている。ハイティンクが70年代後半から取り組んだジョスタコーヴィチ全集の一つで、どれも一級の仕上がりではあるが、特に聴き応えのある録音がこの11番であった。デジタル録音への乗り換えにすばやく対応し、オーディオソース向けに更に磨きをかけたデッカサウンドを楽しむことができる。
あまりメジャーでない指揮者を登用し、最高品質の録音でセールスを挙げるデッカの戦略は、50年代後半のショルティによる「指輪」からの伝統である。ハイティンクと平行して登場したデュトワなどは、アンセルメの焼き直しを担って、見事なセールスを成し遂げている。
世界遺産級