教会に響き渡る豊なホールトーンを支えにして、余裕のある伸びやかなオーケストラサウンドを展開している。マルチマイクによる録音は、オーケストラの自然な空間表現を描くまでには至っていないが、過度に強調された所がないため、バランス感覚の良い仕上がりとなっている。各楽器の実存感もまずまずで、ホールの残響成分を巧みに利用して、見通しの良い明瞭な音像表現を成し得ている。
幾分、金管楽器の音像が小振りに処理されており、それがオーケストラの重量感を弱めてしまう原因となっている。一方、ステージレイアウトは、マルチマイクでのミキシングが効いており、各楽器は分離の良い明瞭な音像で適正に定位している。ダイナミックレンジも申し分なく、迫力こそいま一歩ではあるが、空間規模を感じさせるたっぷりとしたTuttiを聴かせてくれる。総合的にはとても上質なオーケストラ表現であると評価できる。
このアニメは一世を風靡した社会現象的な人気を得た作品である。サウンドトラックを交響楽団に演奏させることは、当時はもう日常的になってはいたが、海外のオーケストラを起用したのはこの録音が最初であったと言われている(ゲーム音楽では「ドラクエ」が既にロンドン・フィルと録音していた)。教会というヨーロッパの象徴とも言える音響空間でこの様な楽曲が録音されたことは、日本のアニメ文化の世界的な評価を窺い知ることが出来る貴重な記録となっている。
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