文化財級 オペラ/合唱曲
作曲家 リヒャルト・シュトラウス
曲名 歌劇「サロメ」
指揮 ゲオルグ・ショルティ
演奏 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
サロメ:ビルギット・ニルソン
録音 1961.10.25  ウィーン・ゾフィエンザール
プロデューサー ジョン・カルショー John Culshaw
エンジニア ゴードン・パリー Gordon Parry
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト 10
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 8.8
商品番号:475 7528 デッカ ステレオ 
解説
舞台で演じられる実際の様子を感じることのできる、克明で生々しい音像表現である。歌手たちが舞台上を移動しながら演じている雰囲気が見事に再現されている。独唱は幾分近接気味に捉えられ、強調された音像で処理はされているが、伴奏となるオーケストラとのバランスを大きく崩すことはなく、調和と分離を程よく融合した仕上がりとなっている。
オーケストラの音像は、左右に均等に広がった伸び伸びとしたステレオイメージで、その広がりの中で各楽器が明瞭に定位している。どの音も見通しよく聴き取ることができる。Tuttiでの響きが飽和状態になったり濁ったりすることのない、分離の良い音像表現はさすがである。
音質面でも時代を感じさせる古さは全くなく、重心の低い野太いサウンドが雄大に響き渡る。もちろんダイナミックレンジも申し分ない。
プロデューサーであるジョン・カルショーが、自伝でこの録音について述べている。ジャケットに謳われた「ソニックステージ」というロゴは、デッカが新しく開発したオペラの新録音を意味しているのだが、それはまったくの「偽り」であり、実は、従来の録音となんら変わりないものだったのである。カルショー自身も悔いているが、これは評論家や無知なリスナーに対してのアンチテーゼであり、こうした宣伝に乗せられる愚か者たちを嘲笑したかったと言うのである。しかし、そうした「新技術」を謳うレーベルの営業戦略は今でも日常的に行なわれており、カルショーが責められるほどのものではないだろう。
この録音にはそうした逸話も残されているが、ここに聴かれる音の鮮烈さは、まぎれもなくカルショーとパリーが生み出した歴史に残る録音芸術であり、40年以上の時を経てもなお、これ程の感動を与えられるということを高く評価したい。
文化財級