世界遺産級 管弦楽曲
作曲家 リヒャルト・シュトラウス
曲名 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」
指揮 フリッツ・ライナー
演奏 シカゴ交響楽団
録音 1962.5.1
 シカゴ・オーケストラ・ホール
プロデューサー リチャード・モア Richard Mohr
エンジニア ルイス・レイトン Lewis Layton
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ 10
クオリティ
ダイナミックス
平均点 9.2
商品番号:JMCXR-0011 ビクター(RCA) ステレオ XRCD2
解説
原音再生という言葉そのものの、あるがままのリアリティを堪能することができる。XRCDシリーズの中では録音の新しい音源であり、クオリティは一段と高い内容となっている。
ステージ上のオーケストラが紡ぎ出す音絵巻を、エンジニアが必要最小限のマイクアレンジで完璧に捉えている。ライナー・ノーツによると、この時のセッションでは6本のマイクを使用し、それを3chでテープに落としている。人工的にイメージングされたオーケストラサウンドはここには無い。このディスクには、そうしたエンジニアの耳が創り上げた自然な音像を余すところなく再現している。
目の前で奏でられる各楽器の音の一つ一つ、そしてアンサンブル、オーケストラが積み上げるハーモニーの広がりが見事に捉えられているのである。
1962年は、ライナー・シカゴSoにとって、その黄金時代の終焉を迎えようとする末期的状態であった。ライナーが、RCAとのステレオ録音の最初に選んだ曲がこの「ツァラ」であった(同時に「英雄の生涯」を録音。実際はモノラル録音がメインであったが、実験的にステレオ録音が行なわれていた。その時のエンジニアがレイトンであった)。そして、ステレオ録音も技術的に円熟してきた8年後、再度この曲を録音したのである。ライナーは、R.シュトラウスとは30年来の親交を持ち、作曲者自身から多くのことを学んでいる。ライナーにとってシュトラウスは最も重要なレパートリーであり、「ツァラ」は最も得意とする楽曲であったのである。
録音の具体的な仕上がりは、この時代のRCAのサウンドが貫かれた、明瞭でリアリティに溢れた生々しい音像表現である。ホールトーンはさほど積極的に捉えようとはせず、残響などの雰囲気よりも各楽器の実存感を追求し、ピンポイントで音像が浮き立ってくるような写実的なマイクアレンジである。極限までマイクの本数を抑え、メインマイクと補助マイクのバランスのみでオーケストラの広さと奥行、そしてダイナミックなフルスペックレンジを捉えているのである。エフェクト効果の無かった時代では、ホールトーンとリアリティは両立しにくい要素であった。しかし、評価上のホールトーンは充分であるとは言えないものの、音楽鑑賞上、あるいはオーディオ鑑賞上、そのリスクはまったく感じないと言って良い。満足度は100%のレベルにあると評価できる。
世界遺産級