愛蔵盤級 交響曲
作曲家 セルゲイ・プロコフィエフ
曲名 交響曲第7番 嬰ヘ短調
指揮 小澤征爾
演奏 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 1989.4 ベルリン・フィルハーモニックホール
プロデューサー ウォルフガング・ステンゲル
エンジニア ウルリヒ・ヴェッテ Ulrich Vette
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ 10
ダイナミックス
平均点 8.8
商品番号:431614−2 グラモフォン ステレオ
解説
このレーベルのスタンダードな音像表現であり、マルチマイクでの明瞭で分離の良い仕上がりである。楽器の一つ一つの音を的確に捉え、曖昧さや響きの干渉を極限まで排除した、透明度の高い録音である。
この手法だと、それがオーケストラの全体像をぼやけさせてしまい、各楽器の生々しさを失わせてしまうことも多い。しかし、この録音はそうしたリスクをうまく回避するようにコントロールされていて、明瞭さとリアリティを両立したマルチマイクの成功例として評価できる。
ホールトーンは、会場の自然な空気感を伝えることはないが、それでもフィルハーモニックホールの空間的な残響を巧みに取り込み、よく抜ける音場を作り上げている。
ステージレイアウトは、オーケストラの配置よりもむしろ、マイクとミキサーが描き出したイメージが先行している。人工的にパートを積み上げた音像ではあるが、各楽器はあるべきところに適正にレイアウトされているために違和感はない。少々デフォルトされた遠近感ではあるが、アンサンブルの中に身を置くことのでき、音の粒一つ一つにも目が行き届くような音像である。
リアリティは、各楽器をつなぐ気配などは感じ取れないが、奏者の息遣いが伝わる良いまとめ方ができている。反面、エンジニアのコントロール下に置かれたリアリティであるために、コンサートのステージをイメージさせるような再現性はない。それでも、見通しの良いリアリティには好感が持て、オーディオ鑑賞のための音像として割り切ることで受け入れられるだろう。またこうした実存感は、音質的なクオリティに比例して増加するものであり、鮮明で瑞々しいオーケストラサウンドが楽しめる。
音質的なクオリティは最高レベルの内容である。デジタルによるマルチ録音が極めた、高純度のサウンドと言える。
同様に、ダイナミックレンジも弱音からTuttiっでのffまで、オーケストラ音像がブレることなく一つの巨大な構造物となって眼前に迫り来る。

このアルバムは、プロコフィエフの交響曲全集であるが、第1番と7番がヴェッテによるもので、それ以外はH.P.シュバイクマンが手がけている。全体の統一感は保たれて入るものの、セッション会場の違いからか受ける印象はずいぶん違う。
今回の評価は、フィルハーモニックでのこの7番をもっとも高く評価している。
愛蔵盤級