文化財級 管弦楽曲
作曲家 モデスト・ペトロヴィッチ・ムソルグスキー
曲名 組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編曲)
指揮 ユージン・オーマンディ
演奏 フィラデルフィア管弦楽団
録音 1966.4.21 フィラデルフィア・タウンホール
プロデューサー トーマス・フロスト
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 8.4
商品番号:88697−27987−2 ソニー(CBS)
解説
オーケストラの総ての音要素が有機的に結びつき、ハーモニーと豊かな音像を作り上げている。Tuttiでのffに幾分音の硬質感が散見されるが、時代相応のリスクとして受け入れられるレベルである。
一方、室内楽的なmpでの楽曲では、その生々しく繊細な響きと瑞々しさ、そして何よりも深々と伸びる奥行き感に心を奪われる。
弦セクションと管セクションのアンサンブルは、ホールにレイアウトされたオーケストラのあるがままの姿を映し出していて、強調したり拡大したバランスではない。fはfとしてpはpとして、またTuttiはTuttiとしてソロはソロとして、そこで演奏されているシンフォニー・オーケストラの忠実な記録であると言える。
ホールトーンは会場の広さと程よい残響をマイクが拾った自然な空間表現で、オーケストラに迫力と十分な艶やかさを与えている。
ステージレイアウトは、よく考えられたマイクアレンジによって見事な定位にまとめられている。
それを支えにリアリティは生々しく捉えられていて、各楽器の実存感や奏者の息遣い、弦の指遣いなどが伝わってくる。
音質も時代を感じさせない十分すぎるクオリティを保っていて、ノイズなどのリスクは全くない。

およそ40年前の録音であるが、この時代、ステレオ録音のおおよその技術は確立され、エンジニアの経験値も十分な蓄積ができていた。機械に頼る時代がやってくる前の、エンジニアの腕とセンスが大きく成果を左右していた、良き時代の録音である。フィラデルフィア管弦楽団の録音はこれまで聴く機会がほとんどなかったが、こうした優秀録音との出会いがあったことで、少しずつ触手を伸ばしていこうと考えている。
文化財級