文化財級 協奏曲
作曲家 エドワード・グリーグ
曲名 ピアノ協奏曲
指揮 ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Pf.クリスチャン・ツィマーマン
録音 1981年ごろ 
プロデューサー ミヒャエル・グローツ Michel Glotz
エンジニア ギュンター・ヘルマンス
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 8.8
商品番号:410021−2 グラモフォン  ステレオ 
解説
オーケストラに対してピアノの音像がクローズアップされていることの若干の違和感を除けば、この録音の仕上がりは、コンチェルト録音の中でも秀逸の出来と言ってよい内容である。
カラヤン・ベルリンPoが残した無数の録音を振り返ってみても、グラモフォンレーベルの音作りを振り返ってみても、そして、デジタル録音黎明期の手探りの音像表現を振り返ってみても、この録音は群を抜いた完成度に達していると言える。この録音には、エンジニアの手腕が発揮されたときのオーケストラサウンドの醍醐味を感じることができる。ただ、デジタル録音であることと、マルチマイクによる重ね録りにより、音と音をつなぐ空気感といった生々しさは期待できない。ただ、これはオーケストラ側のセクションの特徴であり、ソロ・ピアノは明瞭で実物大の存在感がある。
先に述べたように、ピアノの音像に比べるとオーケストラはやや後退した、距離のある音像表現になっているが、客席の前列で聴くことを好む人にとっては、まさにベストポジションのバランスであると言える。ピアノの捉え方は、力量、質感、クオリティのどれを取っても素晴らしい仕上がりである。ピアノ独奏のソナタを録音するかのような生々しく迫力のある音像表現である。pでの繊細なタッチや微細なニュアンスはもちろんのこと、ffでのダイナミズムでは、空間一杯に放射されるハーモニーが心地よく響き渡る。ベルリンPoの圧倒的なtuttiが唸りを上げても、ピアノは決して引けを取らない。デジタル録音の優位性をまざまざと見せ付けるダイナミックレンジに支えられ、濁りやブレのないオーケストラサウンドは、カラヤンの追及する華々しいヴィルトゥオーゾを見事に表現したものであると評価できる。
ソリストのクリスチャン・ツィマーマンも、コンクール後の輝かしい活動を飾るに相応しい、アグレッシブで骨太な演奏を披露している。同時に録音されたシューマンでは、カラヤンの指定したテンポを無視してオーケストラを引っ張って行ったとも言われている。彼を一気にメジャーへと駆け上らせた歴史的な録音でもあるのである。
文化財級