文化財級 管弦楽曲
作曲家 エドワード・エルガー
曲名 変奏曲「エニグマ」
指揮 エイドリアン・ボールト
演奏 ロンドン交響楽団
録音 1970.8.6 キングスウェイ・ホール
プロデューサー クリストファー・ビショップ
エンジニア クリストファー・パーカー
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 8.4
商品番号:5 67749 2 EMI  ステレオ 
解説
丁寧に歌い上げられた、エルガーの繊細で透明感のあるハーモニーが美しく響く。冒頭、弦で奏される主題の雰囲気は、オーケストラの息遣いと共にこの曲の謎めいた始まりを印象付けている。
ホールトーンは、オーケストラを実物大で包み込み、過剰に付加された響きではない。会場に広がる自然な響きを捉えている。こうした実体感のあるホールトーンを支えにすることで、オーケストラは気負いのないゆったりしたサウンドを構築できるのである。
ステージレイアウトはステレオ的な広がりを見事に描いており、広がりのある伸びやかな定位感が好ましい。リアリティも十分で、各楽器は均等にバランスを保って捉えられている。弦や管の距離感や音量バランスも的確で、エンジニアの高い良識が伺える。
一方、ダイナミックレンジにおいては時代相応の内容で、決して不足感はないが、最新のデジタル録音と比較すると幾分見劣りするのは否めない。それでも、アナログ時代の優秀録音として十分に評価できる仕上がりであり、見事な内容である。
なお、このアルバムのメインである「惑星」は1978年の録音で、アナログ終末期のハイ・クオリティとして評価も高い。しかし、エニグマの生々しい実存感を先に聴いてしまうと、惑星は小じんまりとした普通の録音でしかない。演奏はダイナミックで聴き応え十分なのであるが、他にライバルの多い惑星ということを考えると、評価としてここに上げることはできなかった。
文化財級