文化財級 交響曲
作曲家 アントニン・ドヴォルザーク
曲名 交響曲第8番ト長調
指揮 イシュトヴァン・ケルテス
演奏 ロンドン交響楽団
録音 1962.2 ロンドン・キングスウェイ・ホール
プロデューサー レイ・ミンシャル
エンジニア Arthur Lilley
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 8.2
商品番号:4757517 デッカ  ステレオ 
解説
骨太で腰のある男性的な力強さを前面に押し出した音像表現である。オーケストラの各楽器の音の一つ一つが明瞭に捉えられ、どの音にも何らかの主張が感じられる。雰囲気で曖昧に処理された音はどこにもない。全ての音像が生き生きと表現されている。
当時のデッカレーベルの一貫した音像傾向である、少々近接的なオーケストライメージになっていて、現在のオーディオ環境であれば過剰な演出として違和感を抱くかもしれないが、当時の環境を考えれば、多少の強調・デフォルメはむしろ必要悪であったと理解できる。しかし、この録音はほどよい強調感にとどまっていて、大きな違和感はないだろう。
ホールトーンは会場のありのままの残響を素直に捉えたもので、過不足なく豊かな響きをオーケストラに与えている。ステージレイアウトも明瞭で粒立ち良く各楽器が配置されている。ただ、左右へのステレオイメージはさほど狙われておらず、音像は中央に凝縮されて、密度の濃い肉厚な響きとなっている。そうしたまとまりの良さに拠って、オーケストラの演奏者がどこにいるのかがリアルに伝わってくる。マイク1本1本から導き出された、各音像の生々しいリアリティなのである。
音質面は、時代相応のノイズやテープ傷があるのは否めないが、まろやかで耳障りの少ない豊かなオーケストラ音像を聴かせてくれる。
ダイナミックレンジも平均的で問題はないだろう。
デッカ特有の演出掛かった音像表現ではあるが、ある種の懐かしさも感じさせながら、オーケストラの響きに安心して身をゆだねられる喜びが、この録音の最大の魅力となっている。

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