文化財級 交響曲
作曲家 デビッド・オット
曲名 交響曲第2番
指揮 キャスリーン・コメット
演奏 グランド・レイピッズ交響楽団
録音 1992.10.11 ミシガン・デヴォスホール
プロデューサー Vic Muenzer
エンジニア Larry Rock
エグゼクティブ Michael J.koss
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点
商品番号:KC−3301 コス・クラシックス ステレオ 
解説
アメリカの老舗ヘッドホンメーカー「KOSS」が立ち上げた自主レーベルである。録音コンセプトは、ヘッドホンで体感するコンサートホールである。通常、スピーカーでの再生とヘッドホンでの再生では、音の聴こえ方がまったく違っている。前方から空気を伝って聴こえて来るスピーカーの音像と、頭の左右から直接音が伝わるヘッドホンでは、その定位感が違うというのは周知のことでもある。ヘッドホンでは、オーケストラなどの曲が満足いく聴こえ方にならないのは、こうした理由が大きいのである。
ヘッドホンメーカー「KOSS」は、このストレスを解消するためには、ヘッドホンで聴くことを前提としたレコーディングを行なわなくてはならないと考えたのだ。そのために自主レーベルを立ち上げたのである。KOSSは1958年に最初のヘッドホンを世に送り出してから、特にスタジオでのプロ用モニターとして評価を高めていた。現在でも商品ラインナップは健在だが、よほどの専門店でない限り実際に聴くことはできないだろう。コス・クラシックは、創設者コスの息子にあたるミヒャエルがエグゼクティブ・プロデューサー(お金を出す人)としてレーベルを率いている。
さて、そうした事情を鑑みると、この録音評価もヘッドホンで行なうべきである。しかし、まずは通常の評価ステージに上げて分析してみた。
音像は、自然で偏りのないオーソドックスな仕上がりである。強調感がないことに好感をもてるが、反面きらりと光る個性を感じない平凡さが見えてくる。ダイナミックレンジも平均的で、デジタルフォーマットのスペックの中において、可もなく不可もなく、と言ったところである。各項目の数値評価は、この平凡さを示したものである。
一方、ヘッドホンでの試聴では、上述した平凡さが数段上質のサウンドへと雰囲気を変えてしまう。スピーカーではオーケストラが少し遠くに感じた物足りなさが、ヘッドホンでは、まさに理想的な前方定位となるのである。リスニングルームの環境に左右されることもなく、耳の中に直接的に音像が創られるこの仕組みは、他にはないまったく新しいリスニング体験となる。
ホールトーンは確かな空気感となってオーケストラを支えている。そしてステージレイアウトも手に取るように各楽器の定位が伝わってくる。ダイナミックレンジもストレスなく低域にも高域にも広々と伸びていて、鼓膜に心地よい刺激を与えてくれる。音質面もまったく問題なく、スピーカーに比べて数段反応の良いヘッドホンの振動板からもノイズや音の変質を聴き取ることはない。まさしくヘッドホン向けの音作りなのである。
仮に各項目の評価をヘッドホンに限って分析すると、それぞれは1ポイントずつ加点できることになる。
ヘッドホンの頭内定位に不満を持ちつつも、深夜に好きな音量で音楽を聴くことを諦められなかった人には、ぜひこのレーベルを選択肢に入れてみて欲しい。なかなか見かけることのないレーベルだが、手に入れる方法はいくらでもあると思う。
文化財級