ホールでのスタジオセッションらしい、奥行感のある豊な残響成分を聴くことのできる雄大な音像表現である。木管や金管の自然な実存感も好感が持てる内容であり、シンフォニックなサウンドトラックとして充分鑑賞に耐えられる。ただ、各楽器の音像処理などは大雑把に処理されている面もあり、弦セクションの表現は少々荒っぽい。またダイナミックレンジもフォーマットの限界まで広げているものの、サウンドが混濁してしまった印象は否めない。オーケストラのTuttiでバランスが崩れ各セクションのステージレイアウトも曖昧になってしまう。
一方、室内楽的なpでの表現は上等な仕上がりであり、ホールトーンとステージレイアウトの良好なバランスにより、自然で生々しいオーケストライメージを描くことに成功している。またポップス的なリズムセクションが効果的に挿入されている楽曲では、ビッグバンドのステージを聴くかのようなスピード感のあるサウンドに仕上がっている。東京交響楽団のメンバーたちも、スタジオプレイヤーばりに、パンチのある荒っぽい演奏を披露している。
このCDは、同時にスタジオ録音によるサウンドトラックも収録されている。演奏は中谷勝昭の指揮による東京フィルハーモニー交響楽団である。録音時期もほぼ同じであるため、ホールセッションとスタジオセッションではどの程度の違いがあるのかを窺い知ることが出来る。エンジニアの指向はまったく違うものを求めており、交響楽団の音がどのように処理されていくのかを聴き比べてみるのも面白いだろう。
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