文化財級 オペラ/合唱曲
作曲家 ジョルジュ・ビゼー
曲名 歌劇「カルメン」
指揮 レナード・バーンスタイン
演奏 メトロポリタン歌劇場管弦楽団
カルメン:マリリン・ホーン
ドン・ホセ:ジェイムス・マックラッケン
録音 1973.10  マンハッタン・センター
プロデューサー トマス・モーレイ
エンジニア ギュンター・ヘルマンス
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点 8.8
商品番号:427440−2 グラモフォン ステレオ 
解説
マルチ録音の利点を生かした明瞭で分離の良い音像表現に仕上がっている。マンハッタン・センターでのスタジオセッションであり、丁寧に一つ一つの音を捉え、リアリティと定位を追及している。
マンハッタン・センターの広い空間を効果的に使い、そこに生まれる残響成分を充分に捉えた音像は、一部にドラマ仕立ての人工的な質感があるのは否めないにしても、豊なオーケストラサウンドが自然に描かれる結果となった。一方、独唱は各人に与えられたピックアップマイクによって克明に捉えられている。
全体のバランスとしては歌劇場で聴く音像とはかけ離れているかもしれないが、オーディオソースとしては極めて的を得た音像表現であると言え、時代的な技術面を考慮しても充分すぎるほどの出来栄えであると評価できる。ホールトーンの評価は、独唱がオンマイクで捉えられているために判断が難しいが、組曲として親しまれている間奏曲やアリアなどを優先して聴いてみると、この録音の類稀なリアリティとクオリティが浮き彫りになってくる。
アナログ黄金期に行なわれた最高に贅沢なセッションであり、グラモフォンにとっても他のセッションを圧倒する仕上がりとなっている。メトの公演に合わせて、その合間合間に組まれたセッションであり、演奏は歌劇場の熱気をそのまま持ち込んだかのような勢いが充満している。
バーンスタインによるこの「カルメン」は、メトの支配人ルドルフ・ビングが1972年に勇退し、その後任となるヨーラン・ゲンテーレが新しいメトの幕開けとして選んだプログラムである。ゲンテーレがメトの再生を、活動の場をヨーロッパに移行し始めたバーンスタインに託したということに、当時のメトの事情を窺い知ることができる。残念ながら、ゲンテーレはシーズンの開幕前に自動車事故で急逝してしまったが、舞台はそのまま上演された。
レコードのセールスも、グラモフォンの歴代の記録を塗り替えたといわれるゴールドディスクとなり、オペラ録音の少ないバーンスタインにとっても、ウィーンPoとの「ファルスタッフ」「バラの騎士」と合わせて3大オペラ録音となっている。
文化財級