文化財級 | 交響曲 | ||||||||||||||||||||||||||||
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商品番号:425 100-2 | デッカ ステレオ | ||||||||||||||||||||||||||||
解説 | |||||||||||||||||||||||||||||
ホールトーンは過不足なく捉えられ、オーケストラを広がりのある響きで包み込んでいる。意図的に加えられたような不自然さもなく、マイクが拾った現場の自然な残響成分だと思われる。あるがままの会場の雰囲気が伝わってくる。 一方、ステージレイアウトは各楽器が近接的に狙われており、左右への広がりよりも生々しい音像のリアリティが特徴的である。客席から聴くオーケストライメージではなく、指揮者が目の前でアンサンブルを創り上げるようなイメージである。各楽器の気配が、過剰とも思えるほどの近距離から伝わってくる。そのため、それぞれの定位感は見事に決まっている。しかし、それが音楽を聴く心地よさから掛け離れたものかというとそうではなく、各楽器が持つ残響成分が絶妙にブレンドされ音像は散漫にはなっていない。また、豊に響くホールトーンを支えにして、心地よくそしてダイナミックに鳴り響く。 セクション間のつながりも流れるような美しさで、会場の空気が音像を有機的に結びつけ見事な一体感を構築している。カルショウとウィルキンソンが追求した録音芸術の成果を、ここでも聴き取ることができる。 各楽器の多様なアレンジが色彩豊に手に取るように捉えられているが、奥行への広がりが犠牲になっていることが惜しまれる。 音質面では時代相応のノイズやカサツキがあるが、それでもオーディオ鑑賞としてストレスを感じることは無い。また、ダイナミックレンジも音像全体がデフォルメされているため、帯域はさほど広くは無いものの迫力に不満を感じることは無いだろう。 ブリテンは、生涯に交響曲を5曲残しているが、いずれも伝統的な交響曲の手法を採っていない。このアルバムに収められたチェロ交響曲や鎮魂交響曲、声楽を主体とした春の交響曲などである。 鎮魂交響曲の作曲経緯は我々に縁がある。というのも、1940年に日本の紀元2600年を祝うために、その2年前に匿名で作曲が委嘱されたものなのである。当時ファシズムの台頭からアメリカに移住し、コープランドとの親交を深めていた26歳のブリテンに、イギリス領事館から「ある外国の君主に敬意を表するための交響曲の作曲が委嘱されている。しかし、当分はその国名は明かせない」という打診があった。ブリテンは国粋高揚に利用されなければ受諾すると答え、その後、依頼者が日本であると知ったのである。同様に当時76歳だったR.シュトラウスもこの祝典のためにドイツを代表して「建国祝典曲」を献上している。シュトラウスにとっては最晩年の作品であるが、わが国を含め演奏されることは滅多にない(14分程度の曲であるが何度試みても最後まで聴き通せたことがない)。 一方のブリテンの鎮魂交響曲は、作品の知名度に対し、日本からの委嘱作品であるということは余り知られていない。実は、一旦は受け取った作品であったが、内容がキリスト教の典礼から着想されたものだということが原因となり、天皇に対する意図的な侮辱であると判断され、却下されてしまったのである。 結局、この曲は1941年にバルビローリ指揮のニューヨーク・フィルハーモニックによって初演された。一方日本での初演は1956年にブリテン指揮のNHK交響楽団によって行なわれた。 |
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