愛蔵盤級 サウンドトラック
作曲家 レナード・バーンスタイン
曲名 交響組曲「波止場」
指揮 レナード・バーンスタイン
演奏 ニューヨーク・フィルハーモニック
録音 1960.5.16  マンハッタン・センター
プロデューサー ハワード・H・スコット
エンジニア
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ
ダイナミックス
平均点
商品番号:SK 92728 ソニー(CBS) ステレオ DSD
解説
1954年に公開されたモノクロ映画、エリア・カザン監督の「波止場」にバーンスタインが作曲した、唯一の映画音楽である。マーロン・ブランドが主演し、アカデミー賞を受賞した歴史に残る名作である。音楽がバーンスタインであることは余り知られておらず、ミュージカル「ウェスト・サイド・ストーリー」の作曲者であるということを強調したとしても、その事実が語られることは少ないといえる。
ミュージカル「オン・ザ・タウン」(1944)の成功により華やかなブロードウェイやハリウッドへ活動が広がりつつあったバーンスタインではあるが、「オン・ザ・タウン」の映画化(1949「踊る大紐育」邦題 出演:ジーン・ケリー フランク・シナトラ)に際し、楽曲をいじくりまわされた事がサウンドトラックへの抵抗となっていたらしい。サガンからの楽曲要請に対しても当初は乗り気ではなかった。案の定、スクリーンのなかで自身の曲が思うように生かされないことに、バーンスタインは歯がゆい思いをし、その反動から交響組曲への改編を行なったのだ。
曲は、映画の暴力性に呼応したドラムとブラスの金属的で挑発的な音楽が展開する。後の「ウェスト・サイド・ストーリー」の様な「歌」を前提とした音楽ではないため、人物の心情や映像の物語性を表現しようとしたダイナミックな楽曲である。映画の世界では、マーロン・ブランドやエリア・カザンの栄光に隠れてしまい際立つことのない音楽ではあるが、クラシックとサウンドトラックの架け橋となる貴重なスコアであることは間違いない。
録音は、冒頭、ホルン・フルート・トランペットへと主題がつながるソロの定位感、そして空間の中に浮かぶ実存感が素晴らしい。オーケストラの全体像も見通しが良く、各楽器のステージレイアウトも曖昧な配置ではない。激しさを増すオーケストレーションの中で、ドラムセクションや金管セクションの暴力的な表現も、力量感のある音でダイナミックに鳴り渡る。ただ、フルオーケストラでのffにあと一歩の伸びやかさが欲しく、音の圧縮を感じるのは否めない。
愛蔵盤級