文化財級 オペラ/合唱曲
作曲家 レナード・バーンスタイン
曲名 ミュージカル「キャンディード」全曲
指揮 レナード・バーンスタイン
演奏 ロンドン交響楽団
独唱 ジェリー・ハンドリー
クリスタ・ルードヴィッヒ
録音 1988.12 ロンドン・アビーロード・スタジオ
プロデューサー ハンス・ウェーバー
エンジニア グレゴール・ツィーリンスキー
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ 10
ダイナミックス 10
平均点
商品番号:429 734−2 グラモフォン ステレオ 
解説
録音スタジオとして世界的に有名な、イギリスのアビーロード・スタジオを使用してのセッション録音である。オーケストラ録音をする上で、これ以上の条件は無いだろうという、最高の環境での最高品質の演奏と録音が行われている。
原作はミュージカルだが、30年をかけてオペラ級の芸術性とステイタスを勝ち得た作品である。序曲ばかりが取り上げられてはいるが、全曲を通して、作曲家バーンスタインの才気が満ち溢れた作品である。
このアルバムは、そうしたキャンディードの芸術性を一級の演奏家で再現したもので、ミュージカルではあるがダンス的な要素はまったく盛り込まれていない。同時期に演奏会形式でのライブが録画されたが、当然ながら音源は別物である。
さて、録音内容であるが、スタジオセッションとあって、音像はリアルで生々しい。大規模なスタジオの中で、オーケストラは余裕のある残響と考え抜かれたマイクアレンジによって、明瞭で有機的なハーモニーを聴かせてくれる。
オーケストラ、合唱、独唱など、さまざまな音像が一体感を伴って見事に捉えられている。
ホールトーンは、過不足なく、会場の自然な残響をマイクが拾ったものと言って良い。
ステージレイアウトは、大掛かりなマイクアレンジを施していると推察されるが、各セクションのミキシングが巧みに構築され、自然体のオーケストラ配置を感じ取ることができる。
リアリティの面では目を見張るほどの鮮烈な印象は無いが、それでもマルチマイクのリスクをあからさまに感じるようなリスクも無く、納得のできる内容である。
一方、音質面やダイナミックレンジは、時代の先端を行く申し分のない内容であり、迫力満点のオーケストラ・サウンドが楽しめるだろう。
最後に、この録音に足りないものとしては、やはりスタジオであることの「空気感」の物足りなさである。録音が鮮明になればなるほど、その会場の響きや空気感が音になって伝わってくる。
そうした音の中に、スタジオの匂いがするのである。この匂いがコンサートホールの匂いになることができれば、この録音を世界遺産級の評価へと上げることができるのである。

文化財級